青空文庫。
元々「〇〇文庫の100冊」みたいなのは極力避けて読むものを決めるようにしていたが、たまたま目にした読書尚友有償版の内蔵推薦図書本棚の中から、一つくらい読んでみるかと選んだのが、棚の一番上にあり(作者別五十音順)、未読でサクッと読める文量のこれ。
いざ宿願叶う段になって食欲が失せるヘタレぶりに、「鼻」同様現代人の不幸を古典に仮託して描き出す手腕の見事さは今更言うまでもないが、狐をも使役する超人利仁が主人公だった原典から、陰キャ五位を見出してかような傑作を物する芥川の着眼にはひれ伏すばかり。