パッと見で、あ、これ面白いわと判る、絶妙な漢字の密集具合。
古代スキタイに材を取った、早すぎた〈詩人〉の登場とその末路。
詩人になれなかった男は虎に変じたが(山月記)、詩人となった男は一体どうなるのか。
深読みするまでもなく、あらゆる創作者、創作物、世間一般のメタファーが顕著な寓話であり、「山月記」や「文字禍」を差し置いてこれが第一短編集の劈頭を飾ったのは、作者による宣誓的な意味合いが込められているかのよう。