明智どうした?
この一言に尽きる。
〈遂に彼の生涯での最大強敵に相対した〉という大袈裟な前口上の割に、美女との逢瀬に心浮かれ、「オイオイ、しっかりしろ」と己を叱責するのはまだいいとして、あっさり賊の手に落ちるわ、渾身の死んだふり作戦も空振りに終わるわ、その間もガンガン犠牲者出るわで終盤近くまでまるでいいとこなし。
冒険活劇としては楽しく読めるが、意外な犯人に拘るあまり、推理に関してはフーダニット全振りの大味なものに。
共犯者の推理だけはいつもの名探偵節を堪能できたけど。
追記:Wikipediaによると、〈前作『蜘蛛男』に続く通俗長編路線〉とのことで、つまり推理は二の次で何ら問題ないらしい。
本作に緻密な論理性を求めるほうが間違いだったようだ。
スマン、大乱歩。