【史上最も長期にわたって漂流した人物】としてギネス記録に認定され、Wikipediaにも記載のある小栗重吉の実話を基にした短編。
種本と創作部分の差異が不明なので評価の難しいところだが、「海難記」等似たような実録ものも書いているし、細かいことは気にせず事の顛末を只管見守るのも読み方の一つではある。
途中、疫病に罹りバタバタ死んでいく描写の、淡泊さ故の恐ろしさ。
本文中に見事な要約があったので抜粋→"思いもかけぬ仮船頭をうけたまわることになったが、わずか五日ほどで舵を折ってしまった。それから七百余日、話にも聞いたことのないような難船をつづけ、それで死にでもするどころか、最後まで生残り、辛苦のありたけを舐めつくした末、頼母しいかぎりの大船に救われ、やれやれと思う間もなく、頼みに思うその大船がまたぞろ舵を折って流れだすという"