「分散投資」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか。
これは後にノーベル経済学賞を受賞した米国の経済学者ハリー・マーコウィッツ(Harry Max Markowitz)が1952年に提唱した「ポートフォリオ選択論 (Portfolio Selection)」からきた考え方だとされています。ポートフォリオとは、本来は大きい薄型鞄を意味する英語ですが、資産運用の世界では「分散投資」とほぼ同じ意味でつかわれています。
これは"タマゴをひとつの籠にいれるな(Don't put all your eggs in one basket)"という言葉に象徴されるもので、分散することによってリスクを減らし、リターンを得ることができる、という理論です。
実は日本にも古くから「財産三分法」というという考え方がありました。これは財産を「預貯金、株式、不動産」の3つの資産クラスに分けて保有するというものです。預貯金は換金性にすぐれていますが、収益性は劣り、インフレによって価値が目減りしてしまう可能性があります。株式は、価格変動が激しいものの、高い収益性が期待できます。不動産は長期運用に適しインフレにも有利ですが、換金性は劣ります。預貯金、株式、不動産にはそれぞれ一長一短がありますが、この3つの資産クラスをバランスよく保有すれば、財産全体としてはリスクを抑えて、より効率的な資産運用ができるようになるという考え方です。これの考え方もまぎれもない「分散投資」の考え方です。
このコラムは「金融リテラシーのお話」と題しているので、金融資産に投資する場合の分散投資について考えてみます。
これについては大和証券が面白いデータをウェブサイトで公開しています。資産を「日本株式」,「外国株式」,「日本債券」,「外国債券」,そしてそれらを25%ずつ「分散投資」した場合の5つについて、長期にわたってそのパフォーマンス(どれだけ収益があったか)をグラフとともに分析しています。
グラフは1969年を100としてその動きを示しているのですが、これを見ると明らかなとおり、「日本株式」などに単独で投資した場合に比べて、「分散投資」は上下の変動が小さく、経済環境が悪い年でも比較的高いパフォーマンスを維持していることがわかります。
「分散投資」は長期投資の王道と言われ、今も多くの投資家や投資アドバイザーが導入しているといわれるゆえんです。