※本稿は2016年に筆者が運営するブログメディアに初掲載した
日本では15年以上前からサーフ系のアコースティクサウンドが人気である。その火を灯したのはジャック・ジョンソンであるし、もう少しポップなところで言えばダニエル・パウターかもしれない。
夏にはドライブ中に窓を開け、心地よい音色に身を委ねるという方も多いのではないか。ここまで人気に火が付いた理由としてはこうした緩いサウンドが日本人にとって受け入れやすいものであったからだろう。例えば、ロックやパンクの定義をライブハウスの前で議論しなくても十分に楽しめる。耳にイヤホンを刺して、海岸沿いや河原を歩くだけで一日中ハッピーでいられるのだから、日常のシーンに取り入れやすい。
今回のインタビューの相手はそんな日本でも人気のジャック・ジョンソンが立ち上げたレーベル、Brushfire Recordsに所属するロックバンドA.L.O.(Animal Liberation Orchestra)だ。本稿では近年の彼らの音へのこだわりを語ってもらった。来日以降も彼らが磨き上げてきたサウンドを知る良い機会になった。
僕らは商業主義を通り越したミュージシャンシップに重きを置いている
――あなたたちは2007年に日本ツアーを行っており、多くの日本人に支持されていますね。新しい日本人リスナーに向けて、あなたたちの歴史を教えてください。
僕らは12歳ぐらいの子どもの頃から一緒に音楽をやっているんだ。この永続的な友人関係が、サウンドの中心だと信じているんだ。そして、僕らは音楽家として一緒に育って実験的なサウンドを続けている。長年に渡って色んな音を試す中で、ファンクやジャズ、ブルーグラス、テクノポップ、モダンポップロックなどのスタイルを取り入れてきた。ファンの皆は僕らのそういう音楽を評価してくれているんだと思っている。
――あなたたちは本当に精力的にライブを行っていますが、新たな試みはありますか?
精力的、っていうのは、僕たちにとっては本当に大事なことだね。ショーが始まるとそういったエネルギーが爆発するんだ。そして、クラウドから発せられるエネルギーが新たなインスピレーションを与えてくれるんだ。そして、実際に僕らはここ数年それにフォーカスし、大事にしてきた。あらゆるショーをユニークなものにしようとしているんだよ。だから、もし最新の音楽のリスナーがいても、僕らのスタイルを逆行しているとか退化しているという風に捉えてほしくないな。僕らは曲にインスピレーションを求めていて、毎晩セットリストも変えるんだ。ヴォーカルパートを増やしたり、さらにアレンジしたり、そうやってすでにある曲を新しい曲やバージョンに変化させる。これが僕らにとってもファンにとっても新鮮でいられる理由さ。
――日本では数年前からオーガニックなサウンドやアコースティックサウンドが人気です。A.L.O.もそうした心地よいサウンドを含んでいますね。そういったサウンドはどのように作られていくんですか?
僕個人の経験からしか話せないんだけれど、インスピレーションの源はあらゆるところにあるんだ。家族や愛、別れ、旅、音楽などからね。僕の心が整っているとき、生命は圧倒的に僕にインスピレーションを与えてくれるよ。けど、その状態を保つのはなかなか難しい。僕らが君の言う、オーガニックサウンドなのかどうか見極めるのは自分では難しいね。けどね、僕らは商業主義を通り越したミュージシャンシップに重きを置いているんだ。もしかするとそれがオーガニックな存在と思われている理由かもね。