*この記事は「トイストーリー4」のネタバレを含む。
ロボット工学、AI技術がある今日、これらは、性的アイデンティティの多様化とともに発展し、その時代に私たちは生きている。
ゲイ、トランスセクシャル(性同一性障害)、バイセクシャルを受け入れる動きが世界的に見られ、日本もマツコデラックスやゲイバーの流行、「全裸監督」などから、国民の考え方、受け入れる兆候が見えてきた。
性的アイデンティティの種類は増えている。
現代では、合意の上で複数の人と同時に恋愛関係を築く「ポリアモリー」、精神的に親密な関係にある相手にしか性的魅力を感じない「デミセクシャル」
また、他人に対して、恋愛感情を持たない「アロマンティック」や無性や中性、両性に惹かれる「スコリオセクシャル」と呼ばれる人もいる。
(courrier japon,2019,Sept.)
その中でも現実の世界で、ロボットと恋愛をする“パイオニア”たちのことを『デジセクシャル』という。
一般に「デジセクシャル」などの感性を持つ人間は「セクシャル・マイノリティ(性的少数者)」と自分をみなし、自己肯定する。
彼らにとって、異性の人間を相手にして恋愛をすることは、同性愛者に異性と付き合うこと、くらい難しいことだという。
では、今回の「トイストーリー4」と「デジセクシャル」がどのような関係があるのか、考えていく。
これまでの「トイストーリーシリーズ」と「トイストーリー4」との相違
これまでの「トイストーリー」が表現するおもちゃは、「ゴミ」や「所有者のモノ」という考え方の上で、ストーリーが作られており、ディストピアSF映画(アイロボット)などに似ている。
また通常ディストピアSF映画は、「人間サイド」から作られ、ロボットやAIに支配される人間たちを表現するが、「トイストーリー」は、「ディズニー・ピクサー」の独特のリアル感とかわいさから「キャラクター」が生まれ、「おもちゃ」という子供の夢を背負いながら、見つかってはいけないという「原理」に基づいて、「おもちゃサイド」から物語が作られていた。
しかし今回、「トイストーリー4」は物語の中で、おもちゃの元々の「原理」にはない新しい価値、人間の本能である「恋愛」を意識している。
さらに、人間とロボット間の恋愛「デジセクシャル」を超えて、ロボット同士の恋愛を表現している。
私はトイストーリー全作を知っている中で、「トイストーリー4を」見ていて、違和感とも思えた部分がある、それは、キャラクターの動きの「なめらかさ」である。
映像技術の進歩なのか、脚本家の意図的行動なのかはわからないが、今作では、おもちゃの動きよりも、“人間のような”動き”「なめらかさ、柔らかい表情、か細さ」を感じ取ることができた。
またこれらを使って、愛嬌のある、強くて魅力的なキャラクターを生み出すことが出来た。それが「ボー・ピープ」である。
元々のキャラクター設定は、陶器製で肌に光沢があり、動きも固さがあったのが印象的だったが、今回は、汚れや傷が入り、動きにも「なめらかさ」が表現され、映画を観ている人間を魅了してしまう新キャラクター、として登場した。
では、今作でディズニーピクサーが表現した「おもちゃの人間的行動」から、私たちが生きる現代の「デジセクシャル」はどれだけ身近な存在なのか、また、未来の「デジセクシャル」との関わり方を考える。
セクシャルとは、性的な魅力のあるさま。
要は、「恋愛対象の可能性があるか」ということだが、本来私たちは、交際する(付き合う)とき、「恋愛」をするのが一般的である。
そのツールに、メール、電話、なんらかのSNSを使い、相手と交流を深める。
ここで、現代の交際相手との接し方に変化が起きている、進化し続けていることがわかるだろうか。
側にはいない彼氏・彼女が、SNSを通じて、相手が側にいるように感じたり、行動を監視したりできること。それこそが、ネットワークの技術進歩であり、相手との個人情報の距離は圧倒的に短くなった。
「ティンダー」という出会い系アプリがある。あれはマッチングした相手と連絡を取り合い、お互いが会いたいと感じたとき始めて面会できる。
ここで、「デジセクシャル」の可能性から想像できる近未来は、
出会い系アプリ「ティンダー」を使い、マッチングして、面会した女性は、「AIを搭載されたダッチワイフ」だった、
が起こりうる世界がやってくる、という解釈になる。
また、トイストーリー4の「おもちゃの人間的行動」の考え方を、上記の世界に加えるとすれば、
出会い系アプリ「ティンダー」を使い、「AIを搭載したロボット」同士が、マッチングして、人間のように、デートをする、
という世界が実現する。
人間同士のみがすると思われている『恋愛』という行動を、人間よりも賢い人工知能を持ったロボットがしないわけがないし、「ロボット&人間」があるなら、当然「ロボット&ロボット」もある、これを人間たちは法律上、許すしかない。
今後の「デジセクシャル」は、人間の欲求による技術進歩によって、どんな男・女をも魅了してしまう「モノ」が出現する、そのために、この「デジセクシャル」の考えを持つ人間は、増えると考えられる。
このような世界が起こりうる中で、私たちは、“心も体も不完全な「人間」”を愛し、”完全な「ダッチワイフ」“とは、絶妙な距離間を保たなければならない。