「一般社団法人」と聞いて、あなたはどんなイメージを抱くだろうか。
多くの人が、社会貢献を目的とする、クリーンな組織だと思うのではないだろうか。
以前の私も、そう思っていた。
しかし、今ははっきり言える。
それは無知だったと。
一般社団法人だというだけでは、まともな団体かどうかは分からない。
その姿は、まさに「玉石混淆」の一言に尽きる。
しっかりやっているところもあれば、かなり怪しい組織もある。
その有様は、過去にNHKの「クローズアップ現代」で取り上げられた。
ひどい例では、個人の資産隠しや、投資詐欺を行う法人もあるという。
NHK クローズアップ現代 「検証 公益法人改革」(2014年5月27日放送)
そもそも、一般社団法人とはなんなのか。
それは企業ではないし、公益団体でもない。
実態として、中身はなんだっていい組織なのである。
別の組織形態と比較してみよう。
たとえば、NPO法人というものがある。
これを設立するには、特定の非営利活動を目的として、行政庁の認証を受けなければならない。
これに対して、一般社団法人は、認証など不要で、登記のみで設立できる。
NPO法人に比べれば、実に簡単な手続きで設立できてしまう。
しかも、一般社団法人の事業内容には、NPO法人と違って、なんの制限もない。
株式会社と同じように収益事業も行える。
また、NPO法人の場合、「監事」という役職を置かなければならない。
監事というのは、株式会社で言う監査役だ。つまりきちんと運営されているか、経営をチェックするのが役割だ。
監事を置かなければならないのは、社会福祉法人、学校法人、医療法人など、そのほかの非営利団体も同じだ。
しかし一般社団法人は、監事を置かなくても良い。それは絶対の義務ではない。
加えて、一般社団法人には、事業計画や予算を作成する義務すらない(法律上は)。
もうおわかりだろう。
要するに、非常にゆるい組織形態なのだ。
「NPO法人」「社会福祉法人」・・・などと名乗れるということは、組織にとっては、ある種の品質保証である。
ある程度、組織としてしっかりしていて、まともな運営をしているということだ。
しかし、一般社団法人は違う。
それは、なんの品質も保証しないし、なんらかのお墨付きでも全くない。
もし監事がおらず、予算書もないとなると、財務状況やその執行はどうなっているのか。
それは、理事ら経営者の頭の中にしかない。
そんな杜撰きわまりない運営状況だとしても、違法でもなんでもないのである。
こうした「ゆるさ」は、よく言えば、組織の主体性が尊重されているということだ。
つまり、組織のやる気次第で、きちんとした組織にもなるし、いい加減な組織にもなるのである。
実際に、きびしいガバナンスを自ら敷いている法人もある。
ただ、いずれにしてもそれは法人の裁量であり、やりたくなけらばやらなくてよい。
念のため言っておけば、一般社団法人だからすべてダメだと言っているのではない。
ピンからキリまであり、一概に良し悪しは決められない。
ただやはり、一般社団法人の場合、組織としてクリアしなければならない法令上のハードルが、非常に低いことは間違いない。
だから、“一般社団法人”という看板だけで、全面的に信頼するのは禁物だ。
NPO法人の場合、設立趣旨や活動目的に賛同する個人・法人等が入会を望んだとき、それを妨げることはできない。
しかし、一般社団法人の場合はそのような規定がないため、いろいろと理由をつけて入会を制限することができる。
つまり、一般社団法人は、経営者の恣意のままに統制しやすいのだ。
公益に携わるように見せて、本当は組織そのものが経営者の私物であるというような場合も、珍しくはない。
そうなると、ほとんど個人商店のようなものだ。
そんな組織でも、“一般社団法人”という看板があると、本当の姿が見えにくくなる。
以上のことを踏まえて、結論に入る。
もしなにかの一般社団法人と関わりを持つ時は、その実態を確かめるのが妥当だと思う。
学童クラブ(放課後児童クラブ)だとか、高齢者施設だとかを利用しようとしたときに、運営主体が一般社団法人だったらーー。
あるいは、就職しようと考えている職場が、一般社団法人だったらーー。
そのような場合、お粗末な運営が行われていないか、よくよく確かめることをお勧めする。
もちろん、そこで健全な運営が行われていることが分かれば、それに越したことはない。
(2019年6月30日)