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「子育て情報」はガセネタだらけ?! 専門家のハッタリにパパママが翻弄されている

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  • トモヒデ
  • 2019/07/14 00:12

≪この記事の要旨≫

医者たちももっと主張をすりあわせればいいのに。モンテッソーリとシュタイナーの議論を求む。エビデンスは何処だ。 狼少女の伝説を鵜呑みかよ。ルソーの罪。パパママは情報産業の餌食。身近な先生がたも素人同然。情報の質の向上に期待する。

◆食い違う情報

子供ができて父親になったころから、御多分に洩れず、子育ての不安に取り憑かれた。

本の虫である私は、その不安を解消するために、とにかく育児や子育て関係の本を読みまくった。

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そんな中で、ふと気付いた。

専門家によって、言っていることが違うことに。

 

たとえば、卒乳だ。

乳幼児の授乳をいつやめるかという問題について、ある歯科医は、「虫歯の原因になるので、なるべく早く卒乳せよ」という。

一方、別の小児科医は、「卒乳を急ぐ必要なし。求めるだけ与えるべし」と言う。

いったいどっちが正しいのだろう?

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こんな例は珍しくない。

文字教育について見てみよう。

モンテッソーリ教育では、3歳ごろが文字を学び始めるいい時期だとしている。

一方、シュタイナー教育では、7歳までは文字を学ばせてはいけないという方針なのだそうだ。

 

今3〜6歳の子供を抱えている人は、どうすればいいのか?

モンテッソーリに従って、字を教えればいいのか。それとも、シュタイナーに従って、文字に触れる機会を制限すればいいのか。

 

いっそのこと、この両先生に、直接議論して欲しかった。

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◆「エビデンス」のエの字もない

いろいろな説を見聞きして、最初のうちは、「どっちが正しいのだろう?」と思っていたのだが、だんだん別の考えが起こってきた。

 

それは、「どの専門家も、たいした根拠もなく、主観的な意見を言っているだけなのではないか?」ということだ。

つまり、相反する意見のうち、いずれか一方が正しいのではなく、どちらもただの私見なのではないか。

 

もちろん、どんな分野であれ、専門家の意見が割れることがある。

つまり、まだ定説がない場合だ。

ところが、子育ての専門家たちは、たんなる個人的な見解を、客観的な事実であるかのように語りたがるのだ。

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別の言い方をすれば、エビデンスに欠けた情報が多いということだ。

エビデンスというのは、ざっくり言えば「科学的根拠」のことだ。

客観的な信頼度のことを「エビデンス・レベル」と表現したりもする。

 

しかし、子育て情報の世界には、このエビデンスのエの字も出てこないことがほとんどなのだ。

 

専門家は、自分の主張に裏付けがあることを示さなければならない。

それが、思い込みや、勘違いや、妄想ではないと、きちんと説明できなければならない。

しかし、概して子育ての専門家は、それを怠っている。

 

それは「諸説あり」ということで済まされるレベルではない。

 

ーー子育ての専門家の多くが、「根拠はないが、俺の言う通りに決まってる」という、そんないい加減な言説を撒き散らしているーー。

私はそう疑っている。

 

 

◆「権威」と呼ばれる人の思考レベル

子育ての専門家の言う内容は、意外に粗雑で、適当だ。

つくづくそう思ったのは、日本の幼児教育の世界では非常に有名な、ある専門家の本を読んだ時だ。

小さな子供を持つ家庭や、幼稚園・保育所のスタッフ向けに書かれたその本は、優しい語り口と読みやすさで、ロングセラーとなっている。

 

その本を読むと、言っていることに一貫性がないと思われる場所が散見された。

それは多すぎるので割愛する。

 

何よりいぶかしく思ったのは、狼少女の物語(アマラとカマラ)を、まるで事実であるかのように引用していたことだ。

 

ご存知の方も多いかと思うが、狼少女というのは、ある種の都市伝説である。創作だという指摘もある。

それを事実であるかのように引用するのでは、資料を解釈する力を疑われても仕方がないだろう。

 

日本の幼児教育の権威ともあろう人が、こういうレベルだったのだ。

 

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◆始まりからして適当

こうした根拠なき言説は、今に始まった事ではない。

近代教育学の祖であるジャン・ジャック・ルソーの言動からして、相当にいい加減だ。

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ルソーが自ら子育てをせず、次々と生まれた子供を孤児院に入れたというのは有名な話だ。

そのルソーが、著書「エミール」の中でこう言っている。

父としての義務をはたすことができない人は父になる権利はない。

ーーーエミール(上)岩波文庫より抜粋

 

言行不一致とは、まさにこのことだろう。

 

ちなみに、この「エミール」を読んで感動したフレーベルが、「キンダーガルテン」すなわち幼稚園を創設したというのも、有名な話だ。

そもそも「エミール」は創作であって、事実とは異なる。

ただの虚妄と言っても過言ではない「エミール」は、フレーベルのキンダーガルテンを経て、日本の幼児教育にも影響を与えている。

 

◆カモになるパパママ

専門家たちが、いい加減な子育て情報をばらまくとして、なぜそれがまかり通るのか。

その理由は二つある。

 

まず第一に、やはり子育て情報を求める人たちが、素人だからだ。

それは、子供が出来たばかりのお父さん、お母さんである。

 

少子化の時代、子供を4人や5人も持つ人は稀である。

合計特殊出生率が1.5を下回る現場では、新生児のうち、相当の数が第一子であろう。

そうなると、その親もまた、ほどんどが「初めての子育て」なのである。

ベテランのお母さんなど、いないのだ。

 

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子育てに慣れていない人たちは、かつての私も含めて、情報の真偽を判断できない。

医師や教授といった肩書きを頼りにしたり、テレビの情報を鵜呑みにするしかない。

新米パパママは、いい加減な子育て情報であっても、素直に受け取ってしまう。

 

情報を発信する側は、それにつけ込む。

正しい情報ではなく、注目される情報を発信する。

本の売れ行きや、視聴率の獲得が基準になる。

 

子育ての不安に駆られるお父さんお母さんは、情報産業にとって、いいカモなのだ。

(私もそうだった。)

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◆先生と呼ばれるほどの◯◯でなし

そしてもう一つ。

いい加減な情報がまかり通るのは、保育士や幼稚園教諭など、子育て業界のスタッフたちが不勉強だからだ。

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彼ら・彼女らの相当数が、根拠のない情報を信じている。

 

そもそも、育児のプロを自称しながら、非常に重要なエビデンスという概念を、まったく知らない人たちが多い。

そういう意味では、素人と変わらない

ひどい例では、保護者を敢えて不安にさせて、専門家として優位に立とうとする人もいる。

 

 

現状は、なんとも嘆かわしい。

はっきり言わせて貰えば、いい加減な主張をする専門家も、それを垂れ流す出版界やマスメディアも、あまりに不誠実だ。

 

そんな中で、最近、エビデンスを示す専門家が登場してきているのは、大きな希望だ。

中でも有名なのは中室牧子さんだ。

こうした科学的根拠のある言説が少しでも広まって、子育て情報全体の質が上がっていくことを、心から願っている。

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理屈っぽい男ですが、お付き合いくだされば幸いです。ドラッカリアンです。社会ネタの記事の執筆を目指すつもりですが、あちこち寄り道するとおもいます。

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