押し込み隊に背中を押され
今日も発車する通勤電車
見知らぬ老若男女が体を密着し
揺れるたびに激しい圧迫に耐え
時には勃起したペニスに嘔吐しそうになり
毎朝毎夕運ばれていく奴隷船の船底
covid-19に感染して隔離されたら
もう二度とおまえを抱きしめることはできず
お父ちゃんは死んでいく
真実を聞かせられ泣き叫ぶ子ども
それでも家のローンは払い続けなければならない
それだけではない
「おまえだけ抜けるとはどういうことだ?」
仲間の同調圧力は肉体も魂も縛り付けたまま
この国は経済戦争を一時停止するための補償を出ししぶり
私たちから吸い集めた税金を
軍産複合体を肥やすためにまき散らし続ける植民地
この国に生まれた宿命のため
また今日も平和の仮面をかぶった戦争に駆り出される私たちは
いつでも代替可能な顔のない兵士
詩文集『生存権はどうなった』コールサック社 所収)
この島は約束の地
誰もが
雨風をしのぐ屋根のしたで
仲間とともに
豊かな実りを口にし
肌にやさしい服を着て
好きな歌をうたい
読みたい本をよみ
躍りつかれて眠る
病のときは手当をうけ
仕事をうしなえばさがしてもらえる
どうしても働けなくなったら
あなたが人らしく生きるために
必要なものすべて
皆があなたにとどけてくれる
この島は約束の地
足がなえた人は
車椅子で
目の見えないひとは
愛すべき犬と一緒に
好きな場所へ出かけ
会いたいひとに会う
一番困っている人がお先にどうぞ
力あるものは
それをささえる
きれいな水
おいしい空気
樹々は風に梢を揺らし
やさしい人たちと一緒に笑う
この約束はすべて
国があなたに誓ったもの
この島は約束の島
無謀で残虐な戦争に敗け
焦土と化した島の上で
皆でともに交わした約束