内モンゴル出身の中国人留学生アルスの研究発表が大阪大学であった日は、ソーイングカフェで友人と待ち合わせていた日だったから行けず、あとでPDFを送ってもらって読んだが、論旨明快な文明論でとてもよかった。
題して「モンゴル国の同胞よ 羊毛は金なり」。
概略をいうと、柔らかい羊毛だけの羊として品種改良して家畜化する方法は、遊牧生活を捨てることになる。移動しないため冬の飼料代などが単なる経費になる。
だが、考え方を変え、単純な近代化ではなく、遊牧生活で羊のすべての部分を利用しながら、外毛と中の柔らかい毛を別々に利用することで、自給自足を続けながら、羊毛産業を興すことができる。
わお。伝統的な生活を捨てずに経済社会に参与する道の提案なのだ。
写真=モンゴル博物館で初めて出会ったときのアルス
その後、僕はアルスの指導教員であるモンゴル学の今岡先生に、羊毛からつくった糸でさをり織りの産業を興す筋道を作ればいい、織機はそんなに大きなものではなく、伝統的なゲルの中でも持ち込んで使用できると話した。
今岡先生は、さをり広場に実際にまず自分がさをり織りを体験しに現れた。そして、すっかりはまってしまった。
今岡先生は、大学関係の催しでもさをり織りを広めはじめた。いろいろなモンゴル人がさをり広場に現れ、僕も一緒にさをり織りを織った。
今岡先生はモンゴル領事にもその話を通している。今後、モンゴルの町の人々、遊牧を続ける人々などをどう繋いで、羊毛→さをり織りという確かな筋道が確立されるかは未知数だが、希望は持てる。
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この日、同僚との蟹旅行の帰り、但東町のモンゴル博物館に行きたいという僕の要望で車で寄り道した。モンゴル博物館に着くと、入り口で「まもなく講演が始ります。お急ぎください」と言われたのでなんだか知らないけど、急いで着席した。
これがモンゴル学の今岡先生との出会いだった。そしてふと前を見ると、以前から北京外国語大学学生として海を越えてFacebook友達になっていたはずのアルス(赤い服)が、日本の兵庫県のモンゴル博物館で僕の目の前に座っているではないか!
えええええええ! と思ったよ。
偶然、会ったんだよ。
不思議なもんやね。
今岡先生の講演は大変素晴らしく、伝統的な生活によっても生きることができる技術を身につけている遊牧するモンゴル人たちに、学校教育を保障し、現代科学やビジネスにも有能な人材に育っていることを語る表情は輝きに満ちていた。
子どもの頃、身につけた生きる力で、いつでも遊牧生活に戻れる。
しかし、近代社会の中のビジネスに参画する力もある。
それって最強やん!
この日、僕の「モンゴルコネクション」は確立された。