教育・子育て

心を先に開くということ アルティメット・ゲーム

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  • あび(abhisheka)
  • 2019/12/28 20:14

(承前)

4日目のプログラムもなにせ30年以上前のことゆえ、

ほとんど覚えていない。

なんとなく記憶しているのは、ランダムに室内を歩きながら、行き当たった人と見つめ合い、その人への自分の評価をマジックで書いた紙を背中に貼るというゲームがあった気がする。

よいところだけを書くという肯定的ストロークと呼ばれるゲームも

マイナスだと思うところを書くゲームも

ニュートラルに自分の本音を書くゲームもあった気がする。

充分な肯定的ストロークを多くの人からもらった後なら、マイナス面の指摘も受け入れやすい。

またそれを小グループに持ち帰って、なぜそう指摘されたのだろうかと仲間に相談に乗ってもらうような場面との組み合わせが巧みになされていたように記憶している。

曖昧な記憶をたどれば、

僕がもらった肯定的ストロークの中心を成すものは、

「あるがままの自分でいられる」

「あるがままの自分を表現できる」

「自由自在に言動できる」

などと言ったものだったように思う。

逆にマイナスの指摘としては

「自分自身から自由ではない」

という意味合いのものがあった気がする。

いや、何かもっとうまく言い当てているものがあった。

初めは意味がわからなかったが、小グループで相談に乗ってもらうと、そうか、そういうことかと思うような言葉もあった。

あっ、思い出した。

「冒険していない」だ。

僕は、えっ?と思った。

一番派手に何でも表現している僕が冒険していないだって?

それを小グループに持ち帰り、意見を聞いた。

小グループにはすでにこのセミナーの上級コースまで修了したアシスタントがいて、その人が言ってくれたんだと記憶する。

「自分自身を離れない。自分から自由になって、人のことを優先するとか、今まで自分がしてこなかったことに新たに挑戦することなどをしないという意味ではないですか。多くの日本人とは逆だけど、自分になれないのではなく、自分から自由にならないということではないかな」

それらの言葉を僕の背中に貼ってくれた人々は、別に瞑想をしているわけでも、世界を旅してきたわけでも、このようなグループワークを重ねてきたわけでもない。

けれども、4日間の付き合いでのその直感的な言葉は、深いところに入ってきた気がする。

しかし、いつもプラス面とマイナス面は裏表で、「それがあなたのいいところ」と誰かが受容するような仕組みが、ゲームの構造自体の中にあったと思う。

主にカリフォルニアで発達してきた人間性心理学の知見と、心理的技法を組み合わせた構成なのだが、非常によくできたプログラムであることは確かなのだ。

 

そして、4日目の終わりの最後のゲーム。

いよいよ4日間のほぼ缶詰状態のセミナーも終了する最後のゲーム。

全参加者は、二重に輪をつくり、フォークダンスのように向き合う。

といっても、別に男女が向き合うセッティングではなく、男女まぜこぜ全参加者が向き合う。

詳細は曖昧な記憶だが、途中で「チェンジ」というと、偶数か奇数の番号をもらっている人が、外側の輪から内側の輪へ(その逆だったかも)チェンジするので、

参加者の半分ではなく、すべての参加者に向かい合う機会があったと思う。

この4日間を共に過ごした全員と一対一で向かい合うのである。

向き合って、ひとりずつ目を合わせ、「スイッチ」と言われたら、ひとつ蟹歩きでずれて、次の人と向き合う。

アイコンタクトはそれだけでも様々な感情を呼び起こす、グループセラピーの基本技法のひとつだ。

互いの瞳に映る互いを見つめていると、この4日間でふたりの間に起こったことだけではなく、その人が連想を引き出す、人生の中で出会ったすべての人のことすら想い出してしまうのだ。

アイコンタクトにはそういう強い力がある。

このアイコンタクトを現代日本人のほとんどはあまり行わない習慣となっている。

僕は最初に述べたように、インドやアメリカで、セラピーグループセッションは既に20代にして百戦錬磨だったので、最初からアイコンタクトにほとんど抵抗がなかった。

しかし、このセミナーの1日目には多くの参加者がただ二人ペアになってアイコンタクトするだけのことに大きな抵抗を感じ、戸惑っていたものだ。

でもこの最終日にはもうアイコンタクトに対する抵抗はほとんどの人からなくなっている。

だからしっかりと目が合う。

さて、ここでのトレーナーの語りも、かなりの熟練の感情移入を必要とするものだと思う。

そのトレーナーの台詞は具体的にはほとんど覚えていないが、一期一会の今を実感させるような巧みな語りを続けていたと思う。

もう二度と会わないかもしれない人と今、目と目を見つめ合っている。

そして、スイッチと言われた瞬間、それは過去へと流れていく。

また次の人と目を合わせている。

しばらくは、ただアイコンタクトだけで、出会いが流れていくシチュエーションを続ける。

ただただ見つめ合ってすれ違っていくことで、出会いと別れについての感情が相当高まってきたところで、いよいよ「自分をオープンにして気持ちを示す場面」が始まる。

今、目の前にいる人としっかりアイコンタクトして。

トレーナーの指示に従う。

背中に隠した指の形を決めて。

トレーナーの指示に従う。

出して!

合図と同時に背中に隠した指を出して相手に見せる。

合図の言葉は忘れた。

本当にただ「出して」だったかもしれない。

もうちょっと気の利いた言葉だったような気もする。

意味合い的には「今の気持ちを示して」という合図である。

 

(1)グーなら、そのままアイコンタクトだけで、

   次の人にスイッチしていくという意志。

(2)人差し指一本なら握手してから次に進むという意志。

(3)指二本のピースなら、しっかりとハグするという意志だ。

 

両者が、示したうちのグーに近い方が、ふたりの実際に行う行為となる。

つまり、ひとりが、ハグだと示しても、もうひとりがアイコンタクトだけと示せば、ふたりはアイコンタクトだけして、すれ違っていく。

ハグだと示した方は振られたのだろうか?

恥をかいたのだろうか?

いや、そんなことはないという気持ちが、グーを出した側にこみあげていく。

自分が心を閉じていた。

あの人が指を二本示してくれたのに。

 

この輪舞はすべての人と一度だけ出会うのではなく、

同じ人と何度か出会うまで、内側と外側をチェンジしながら続けられる。

 

そしていよいよ最後の一周がやってくる。

もう後はない。

最後のチャンスなのですよと刻み込んでくるようなトレーナーの語りが入る。

 

僕はインドやアメリカでヒッピーのような瞑想者のような怪しい?人々と過ごしてきた過去があり、ハグにほとんど抵抗はない。

けれども、相手が普通の巷の日本人だと思うと、二の足を踏む。

ましてや、この4日間で感情的な行き違いを感じた人や、

逆にとても惹かれた異性などには、そう簡単に素直な気持ちを示せないことは僕にもあった。

 

僕が一番印象に残っているのはその二つ(アンチであり、魅力的な女性である)が重なっていた相手とのシーンだ。

この女性にはなんだかとても惹かれるところがあった。

ところが彼女は僕のアンチだ。

僕もけっこうムカついた場面もあった。

そのような経過のあった、少し年下の女性がいた。

(赤黒ゲームの最後に手を握ってきたのとは別の女性。けっこうアンチ多かったの。(;゚ロ゚)

僕はその人と向かい合いアイコンタクトした。

背中に回した手の指の合図を「決めて」とトレーナーが言う。

気持ちはピース=ハグだ。

だが、出せない。

出す勇気がない。

ムカついたあのシーンもこのシーンも、もう全部いいんだ。

今ハグしてすべてを受容し合わなければ、僕らは二度とハグすることはない。

(実際、その後連絡先も交換しなかったし、今、どこでどうしているのかも知らない。)

でも、できない。

彼女は僕を嫌っているんだ。

僕のような「自分自身から自由になれない」タイプが嫌いなんだ。

僕は指を一本にして用意した。

あなたとは握手だけして、あなたは過去に流れ去っていいという合図だ。

「出して」

僕の目にみるみる涙があふれた。

彼女はピースサインを出してにっこり笑った。

負けたと思った。

負けたという言葉は違うかもしれない。

僕がまだ疑ったり閉じたり躊躇しているというのに

彼女は心を開いた。

この子、インドやアメリカで瞑想して、いつもハグすることに慣れている子じゃないよ。

ハグなんて恋人ぐらいとしかしない、普通の日本人の女の子だよ。

なんで、ピースなんだよー。

あんなに僕を嫌ってたじゃないかよー。

僕は泣きながら慌てて人差し指に中指を加えた。

そして彼女の背中に手を回し、強く抱擁しあいながら号泣した。

 

僕が「負けた」のはその子だけだったと思う。

もともとぶっとんでる方だから、誰とハグするのも抵抗はないんだ。

はげ頭のオヤジにも、

若い男の子にも、

おばちゃんにも、

おばあちゃんにも、

若くてきれいな女の子にも、

ほとんど躊躇なくピースサインを出して、相手を泣かしていたように思う。

会場は熱気に包まれ、ほとんど全員が全員とハグしていた。

 

僕の方を向こうから泣かしたのは、

僕が最大のアンチだと感じていたその女の子だけだ。

僕はその子の名前も覚えていない。

顔もとてもおぼろげにしか思い出せない。

それはそれでいいのだ。

これが

「セミナーで初めて会った異性には最低3ヶ月間は個人的に会わないこと」

という最後のグランドルールの意味するところだ。

彼女は

心をすべてに向かって開くことのレッスンのために宇宙が遣わした存在であって

その関係は恋愛でもなんでもない。

勘違いしない方がいいのだ・・・・・。

 

こうしてすべてのゲームが終了すると

僕らは今度は大きな一重の輪をつくるように指示された。

目を閉じて。

トレーナーの指示に従う。

開けてというまで絶対に目を開けないで。

え、何が起こるの?

さささっというような、静かに動く人々の気配がする。

何かが準備されている。

目を開けて。

トレーナーの指示に従う。

各参加者の目の前には、

このセミナーにその参加者をエンロール(招待)した紹介者が花束を持って

待っていたのだった。

 

このシリーズの過去記事読んだ人には、わかるでしょ。

僕をエンロールしたのは、大学時代に同棲していた、

昨夜、セミナーの一番の夜明け前の暗闇のときに、泊めてくれた

元彼女だった。

彼女が花束を僕に手渡した。

僕らは泣きながら、ハグしあった。

 

 

以上が、ライフスペースの自己啓発セミナーのベーシックコースの思い出の、

記憶に残る範囲での再現である。

読者の皆さんはどう思われただろうか?

 

けっこういいじゃんと思った人もいるだろうか?

僕も全否定は今でもしていない。

しかし、そこに潜む「洗脳」という、もうひとつの課題については、

少し間を置いてから考究したいと思う。

もしかしたら、アルティメット紅白大運動会が終わってから、

考究するかもしれない。(;゚ロ゚)

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10代より世界放浪。様々なグルと瞑想体験を重ねる。53歳で臨死体験。31年の教員生活を経て現在は専業作家。https://note.mu/abhisheka

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