書評です。
ネタバレ注意。
舞台は美流間市という架空の?町。
おそらく著者がかつて住んでいた静岡県磐田市をモチーフにしているのではないかと想像する。
主要人物は4名。
主人公のフトミこと仁美。
食通のムリョこと無量。いつもカバンにお菓子をたくさん持っている。
同じ社宅に住む、よく寝るチーホこと千穂。
そして大人顔負けの寛大な心を持つリーダー的存在テンちゃんこと心太の4人組。
小学2年生の頃、この子たちと同じで「性」のことは全くわからなかったなぁ。
自宅にある性にまつわる本、これらのアイテムとの出会いが少年少女をまた一つ成長させるのは間違いない。そういったものに出会う時期というのはやはり環境の要因で差はあると思うけど、小学4年生だと10歳?
この先、自分の子どもたちにどう教えていくべきか考えさせられます。
国語の先生のいやらしい授業に憤慨する素子は、理解の追いつかないフトミに説明するため生徒会長のテンちゃんに会いに行く。
そこで本筋とは関係ないが、非常に考えさせられる文章がありましたのでピックアップします。
ムリョくんを利用する人を退治するには、まずそういう人の気持ちになってみなくてはならないと。だから、訓練に励んでいる、と胸を張るのです。手当たり次第に本を読むのも、その一環なのだそうです。自分の守りたいもののために技術を磨いているつもりなのだとか。彼女のその話を聞いた心太は、おれは違う、と呟きました。彼は、高見先生の導きで、すっかり本に親しむようになりました。彼は、いったい、何を思って、書物を繙いているのでしょう。
眠れる千穂の名言も響きました。
だって、あのとろけて行くみたいな感じ、たまんないじゃん。体の上の空気が、あったかい毛布みたいになって、千穂のことくるんでくれるの
人は眠ることに焦がれるのでしょうか。
そして突如訪れた先生の死。
テンちゃんの言う、ちゃんと死ぬということ。
「生」について考えさせられます。
高校生ともなると、性に対してそこまで抵抗はない。抵抗はないが、性にまつわる人間関係は別だ。体験的に行いたい衝動、好きという感情から生まれる欲、快楽を求める欲とさまざまな理由がある。
ただ、そういった性のことを男女問わず相談できる友達を持てているこの四人組を見てると、大人になった今、貴重な関係なんだろうなと俯瞰して思える。
心太と仁美。テンちゃんとフトミ。
この二人のような関係を、どのように思うだろう。男女間の友情なんてもので片付けたくないというフトミの思いがよく伝わる、見えない何かで繋がっている二人の関係に読んでいてなんだか憧れのようなものを覚えました。