「公共財」という言葉は、古代ローマやギリシャなど、古代から存在していました。しかし、公共財を定義するための明確な枠組みが確立されたのは、1950年代の経済学者ポール・サミュエルソンとリチャード・マスグレイブによってです。
彼らが公共財を定義した際に重視したのは、「非競合性」と「排除不可能性」という2つの要素でした。非競合性とは、1人がその財を利用しても、他の人がその財を利用することができることを指します。例えば、きれいな空気や公園がそれにあたります。一方、排除不可能性とは、1人がその財を利用したからといって、他の人がその財を利用することができなくなることを指します。例えば、国家の安全保障や法の支配がそれにあたります。
当時、公共財の定義は、第二次世界大戦後のグローバル環境が形成されたばかりの時期で、ナショナリズムが顕著な特徴となっていました。そのため、国家という基本的な境界を超えた「公共」の概念の理解は、幸福や存続が国家に依存していた社会にとって必ずしも明確ではなかったとされています。
今日では、公共財の定義は多様化し、環境問題やデジタル技術の進化など、新たな課題が生じています。しかし、公共財の概念は、社会全体に共有される資源やサービスを提供するための重要な考え方であり、今後もますます重要性を増していくでしょう。
公共財とは、非競合性と排除不可能性の特徴を持つ財であり、例えばきれいな空気、公園、道路、国の安全保障などが挙げられます。これらの財は一人が利用しても、その利用によって他の人が影響を受けることがなく、また他の人が利用してもそれによって利用の余地が失われることがないため、誰もが自由に利用できるようになると、全体としての社会的利益が高まるとされています。
しかし、インターネットの普及によって、グローバル公共財に対する議論が大きく発展しています。グローバル公共財は、従来の公共財よりも競合性が高く、排除可能性があるため、その管理には課題があります。例えば、特定の地域や国にのみアクセス可能な情報やサービスが存在する場合、それはグローバル公共財とは言えず、一部の人々にしか利益をもたらさない可能性があります。このような問題に対処するために、グローバル公共財の概念について議論が重ねられています。
また、公共財に対する料金の支払いについても言及しています。地下鉄のような財に対しては、利用者が料金を支払うことで、地域の繁栄に貢献し、その利益が不動産保有者や地域社会に還元されるという仕組みがあります。これにより、地下鉄システムは集団的な幸福を高めることができるとされています。しかし、このような仕組みは限界があるため、公共財をより効率的に管理する方法について、今後も議論が続けられるでしょう。
イーサリアムブロックチェーンは、取引に時間がかかることもあるが、意義のあるプラスの外部性を生み出すとされています。具体的には、人間の主体性や協調性を高め、プログラム可能なお金によって価値の移動が可能になるとされています。これらは、都市のようなデジタル空間において、多くの場合、市民たちによって建設される公共財と似たような効果をもたらします。
しかしながら、イーサリアムブロックチェーンがグローバル公共財であるという意味は、必ずしも国家が関与しているわけではないことを示唆しています。現実的には、イーサリアムブロックチェーンは「コモンズ(共有財産)」のように機能し、特に国家が関与していない場合には、慎重な管理が必要になります。コモンズは、個人的な利益に応じて乱用される可能性があるため、持続可能な管理を行うことが必要不可欠です。
このように、イーサリアムブロックチェーンは、グローバル公共財として、都市のようなデジタル空間において多くのプラスの外部性を生み出すことができますが、同時にコモンズとして慎重に管理する必要があるとされています。
オストロムのコモンズ理論を引用し、ローカルで自己管理型のシステムを設計することで、国や企業に頼らずにコモンズの避けられない枯渇を解決できることを示しています。
また、イーサリアムブロックチェーンの管理が複雑であることを指摘し、従来の中央集権型組織モデルとは異なり、多くの利害関係者間に分散化された管理が必要であることを述べています。さらに、ユーザーや開発者、リサーチャー、バリデーターなどが維持管理に注力しており、それぞれが責任を負っていることを示しています。
しかし、管理に失敗した場合、コモンズの過剰利用や衰退が起こりうるとも指摘しています。このような問題を防ぐために、イーサリアムブロックチェーンの利用者は自己組織型エコシステムを理解し、責任を負うことが必要になります。
まず、イーサリアムを二つのグループに分けますが、最初のは「Regen(リジェン)」と呼ばれ、グローバルな公共インフラを作り出し、維持するための革新的なスマートコントラクトのエコシステムを支援することを目的としています。これは、ブロックチェーン技術の持つ強みを最大限に生かし、世界中の人々が安全かつ透明な方法で取引を行うことを可能にするためです。
一方、2番目のグループは「Degen(ディジェン)」と呼ばれ、DeFiやNFTなどの分野で、革新的でパーミッションレスなプロダクトを開発し、それらを推進することを目的としています。このグループは、時にはラグプルなどの詐欺を招くこともありますが、その一方で高いリターンを期待できるハイリスク・ハイリターンな投資機会を提供することもあります。
RegenとDegenの両グループが、それぞれの目的を追求することで、イーサリアムブロックチェーンのエコシステム全体を支えていることを指摘しています。また、両グループは協力し合うことで、より効果的なブロックチェーンエコシステムを作り出すことができると主張しています。
RegenとDegenの両グループの違いを「宣教師」と「(カネ目当ての)傭兵」という比喩的な言葉で表しています。宣教師は、技術に魅せられてイーサリアムブロックチェーンを支援することを目的としており、傭兵は、よりオープンで透明性の高いブロックチェーンエコシステムを作り出すために努力することを目的としています。両者は、共通の目的を持っており、協力し合うことで、より良いイーサリアムブロックチェーンエコシステムを作り出すことができます。
イーサリアムブロックチェーンが、Regen(リジェン)とDegen(ディジェン)の2つのグループに分かれており、それぞれが異なるカルチャーや期待を持っています。そして、徹底的なパーミッションレスは重要な価値観であると同時に、公共インフラを守るためには良い期待を持つことが必要です。
また、イーサリアムブロックチェーンを共有のコモンズとして捉え、エコシステムを手入れすることで、リジェンとディジェンの間で協力しながら、より良い未来を築くことができます。
総じて、イーサリアムブロックチェーンの重要性やそのエコシステムを守るために必要なカルチャーの発展について論じており、共有のコモンズとしての意識が重要です。