2022年の第一四半期におけるアメリカ経済の成長率はマイナスを記録し、今月28日に第二四半期の成長率が開示されます。定義上、二四半期連続でマイナス成長を記録した場合、景気後退という位置づけになり、仮に今年アメリカが景気後退になった場合、コロナウイルス蔓延時以来のリセッションとなります。
今回は、米国の利上げ局面と同時に景気後退に入ってしまうことになるため、いわゆるスタグフレーションとなる可能性が高く、投資家の間ではドル指数や10年物の債券などを検討する動きが出ています。現に、今の時点でのアメリカ10年国債は歴史的にみても安い水準にあり、買い時であることを示唆するような指摘もあります。
中国経済は、今年に入ってから一層の冷え込みを記録しており、広大集団の破綻やテック銘柄の停滞などが続出し、一層の相場下落が見込まれています。また、ロシア情勢においては、イギリスをはじめ、北欧諸国や東欧、アメリカなどが中心となり「100兆円規模のウクライナ復興計画」について議論されつつありますが、ドイツなどロシアに依存していた国の経済状況の悪化なども確実とされており、世界情勢の不安定化が見込まれています。
日本としては、アメリカや欧州に寄り添った形で西側としての立ち振る舞いを変えない模様であり、一方で中国やロシアといった東側諸国の立ち位置がウクライナ侵攻事件によって明白になったことで、冷戦の構造が再燃しつつあります。日本が過去に経済成長をしていた歴史を振り返ると、まさに朝鮮戦争からベルリンの壁崩壊までの期間がそれにあたり、冷戦のさなかに起こっていたことがうかがえます。現在の状況は、米露中の新冷戦を予見することもあり、日本経済にとっては楽観的なシナリオもあるのではないかという見方も聞きます。
経済的には、ロシアの制裁の影響で、中国などもグローバル路線からは外れるとされており、よりブロック経済的な様相を見せてくると考えられています。
市民生活で警戒されているのは食料価格の高騰であり、インフレーションです。可能性としてはロシアやウクライナといった穀物産出国の情勢不安定化に伴い、食料品の価格が高騰することによって様々な問題が噴出することが見込まれています。そのほか、エネルギー問題についてもノルドストリーム2の停止によって、それまで恩恵を受けていたドイツをはじめとするロシア依存国家が一気に経済的に苦しくなることが予測されており、こちらも食料同様に情勢不安定化の一因になるとみられています。
欧州情勢の不安定化に伴い、西側諸国の中でカギとなってくる国としては、インドや日本、東南アジア諸国などが挙げられます。しかし、インドは現状において西側のトップとなるほどの実力を持っているわけではなく、アメリカの存在を考えると率先する役割にいるとは考えられません。アメリカは現在スタグフレーションが迫っており、米国議事堂襲撃事件なども兼ねて考えれば、政治的にも国際的リーダーではないと言えます。では、残りの選択肢は日本や東南アジアとなりますが、現実的に考えればそれらの選択肢が重要になっていくというのはある程度自然であると考えます。
また、欧州ではトルコによるボスポラス海峡およびダーダネルス海峡を手玉に取った両陣営に対するアプローチにより、ウクライナ情勢が歪曲して見える現象が起こっています。トルコは復興事案でもハリコフを担当するなど積極的な姿勢で事態に臨んでおり、今後トルコを中心としたイベントが展開される可能性も否定できません。
日本は過去30年の間、ずっとデフレでしたが、トルコではインフレが続いていました。デフレの場合、貯蓄を重視する傾向がありますが、インフレでは金融資産を早くほかの何かに変えることを重視するようになります。それは、もともとのお金の価値が目減りしていくのがインフレでもあるからです。将来的には日本はインフレ寄りになるとみていますが、そのころには手にしたお金をすぐに他の金融資産に変えまくっている人々の姿が思い浮かびます。
飽くまでも、ここ数年という単位での世界情勢を予測するという形になりますが、可能であればやっていきたいと考えています。