何も無い月面を黒いシャム猫に着いて行く。
「ネコ、なぜ遠回りをしているのですか?まだ私たちを信用できないのですか?」 Z-RIDERシステムがシャム猫を詰るように聞いた。
「その声は、まさかネコさんなのかにゃ?これはまた随分と久しぶりにゃ、 その・・・・・・ 少し前から奴と喧嘩しててさ」
「まあ、なんとアルドと喧嘩して船を追い出されたのね。伝説のネコ船長の癖に情けないところは相変わらずねぇ」
アルドとは、宇宙戦マンズーマ・シャムセイヤの制御システムのことである。
「ご主人を探しに行くと言ってるのに、アルドはこの地で待つ、それがご主人の意思だと頑なに抵抗して困っているのにゃ」
『ふ、船に反抗される船長もこれまた珍しいものを見た。礼を言うわ、あはは』 「もう、言われ飽きたから放うっといてくれ。もう、着いたにゃ。アラク、お客さんにゃ。ゲートを開けてくれにゃ」
ホムンクルスたちは古い巨石で築かれた門の前にいた。・・・・・・しょうがないわね 女性の声がしたかと思うと、地球を映す大きなスクリーンの前に立っていた。
「お待ちしていました、ソローン様」
『私のことを知っているのか?お前は誰だ?』
「ふう、私のことも覚えておいででないのね。失礼しました、私はこの月を管理しているアラクという者です」
「アラク?確かに聞いたような気もするが覚えていないな?」
「まあ、さしたることではありますまい。船長、アルドには言って聞かせてあるからお客様をお連れして。あまり、私に手間を掛けさせないでね」
「おう、恩に着るにゃ」
黒いシャム猫の尻尾がぴんと上に伸びた。
「では、行ってらっしゃい」
ホムンクルスとネコ船長は、いつの間にか船の制御室に立っていた。
「お客様、わざわざ月経由で訪問されるとは遠路はるばるようおいで下さいました」 「私は、ソローン。この船の力を借りに来た。あなたがアルドか?」
「そうです、きっとあなたなら行方不明のリュラーン皇子を見つけることが出来るでしょう」
『リュラーン皇子?』
「ご主人のことにゃ」
「この船の正当な所有者でございます、リュラーン皇子を見つけて下さるならこの船の力を貸しましょう」
『なるほど、ギブアンドテイクというところか。まあ配下に探し物が得意な魔人がいるので何とかなるかも知れないな。その条件、飲もう』
「はい、快諾して下さるとアラクが言っていた通りですね。
いつでも出航の準備は出来ていますので、そこの黒いシャム猫にお言いつけ下さいまし」
アルドが冷たい目で、ネコ船長を睨んだ。
『船と船長の上下関係は承知した。まずは、銀河の中央を目指してくれ船長!』
「もう、出航にゃ。とりあえず銀河中央部、ゆっくり(光速の五十倍)前進!」 「目標銀河中央部、速度五十光速で前進」
『アン、探し物だ。出てこい』
ソローンの前に煙の中から現れた魔人アンドロマリウスが跪いた。