俺が操る巨大鎧の操縦席には、観測機からのデータがリアルタイムで表示されている。三か所に設置された観測機、宇宙船:太陽系《マンズーマ・シャムセイヤ》の地球、月の観測データがそれぞれアルド、アラクから送られている。最後の一つは、火星軌道上にいる異星の探索船船長の好意で送信されている。
それらのデータは一度アルド経由で三体有性生殖を取り仕切る惑星の量子コンピュータに転送され予測データとして俺の元に届いている。俺の引き分けに実は、銀河を掛ける友情パワーが働いているのは秘密だ。
三つの観測機が惑星サイズのサイコロが転がる賭場に発生する<電磁力>、<強い力>、<弱い力>、<重力>の四つの力を測定している。これらはニ一世紀の地球物理学で一応認識されている力だ。これらのデータを遠い惑星にある量子コンピュータが演算し、俺が六を出すための最適なタイミングと力加減を教えてくれているのだ。そして、細かな魔道の力の調整は俺専用の使い魔であるムガットが俺の右肩に留まった状態で補佐してくれている。
しかし、何気に富の女神エンドロ・ペニーが先行してくれて良かったよ。それが無ければサンプルが無さ過ぎて第一投目で負けた恐れすらあった。なにしろ適当に投げて引き分けるのは六分の一の確率だからな。
だが、このまま馬鹿正直に勝負を続けても俺に勝ち目は無い。ネコさんがくれたヒント、魔導の神髄とは・・・・・・
魔導は、究極は自分の力を信じること。自分が世界を牛耳るその気概が森羅万象の隙を突いて、望みを実現させる。
そして、俺のスキルは詐欺《スキャム》、仮想通貨に関することを他者に信じさせることが出来る力だ。この力で今までどんな苦難も難解な謎も乗り越えて来た。今回もこの力を信じて戦うだけだ。
(ふふ、竜さんもいい顔になってきたわね。あなたは今までも信じられないような不可能を可能にしてきたわ。自分の力を信じて振るうのよ、それこそが魔導の神髄・・・・・・ )
-ジョージタウン 領主館 -
(銀河がまた、一つ消えたか。竜も苦戦しているようだが、なにネコも下僕一号も付いていることだ。成るようになるだろう、何事もすべて魔導の理のなかにある) 館の主はコーヒーを一口啜るとまた思索にふけるのだった。
「もう、そろそろね。きっと、次の一投が恐らくこの勝負の決着となるわ。リュラーン、あなたなら必ず勝てるわ」
「そうね、あいつはいつだって私の予想をはるかに超えていたわ。きっと、今度もとんでもないことをやらかすはずだわ」
キリュウ《姉さん》と下僕一号の声援だか貶す声だかが聞こえたような気がする。
「待たせたな、富の女神エンドロ・ペニー!俺は負けない、いや俺こそが勝つ!」 俺は大きく見栄を切ると、振りかぶって惑星サイズのサイコロを頭上へ投げた。