ケンタウルス座で補給後に再び天の川銀河の中心を目指す船は快調に進む。まあ古代の船だが逆に言うと実績が何十億年も前から積み重ねられているのだから心配には及ばない。まあ、いざと言う時の操船はネコに任せているから安心だ。その猫は、シミュレータルームでアルドから地獄の特訓を受けているのも知っているが知らぬふり。これが所謂武士の情けという奴だ。
「もう、主様はやる時はやるお方ですから。これ以上睡眠時間を削るような特訓は百害あって一利なし。断固、スケジュール調整を要求しますわ。こんな、フラフラの状態にしても訓練効率は上がりませんわ」
シミュレータルームから出て来たネコに飛び乗るや、相当な剣幕でアルドに抗議する磁器人形が青い瞳に炎を宿す。
「まあ、小さな船で満足しているのならパイロットを辞めて貰っても結構ですよ。別に私が戦闘も航法も操船も全てやればいいだけのこと。むしろ三八億年前からずうっとやってきたことですから、ご主人様から操縦を教えろとのご命令が無ければこのような面倒なこと御免被りたいものです」
ふふ、やはりな。俺が労わなくてもネコには磁器人形の姿をした底知れぬ力を秘めた恐るべき魔人アスタロトが世話を焼いてくれるよな。
「ご主人様、針路上に知的生命体の惑星がありますが交易、その他の接触を行いますか?検知した兆候から推測すると二0世紀か二一世紀レベルの文明と思われます」
アルドがアスタロトの糾弾対処に面倒臭く思ったのか常には無い細かい報告をしてくれた。うーん、ここは未知の知的生命体に挨拶くらいするべきかもなあ。
「わかった、その惑星付近で周回軌道を取ってくれ」
「かしこまり、ご主人様」
「なんか、論点を逸らされた気がして不愉快の極まりね!」
アスタロトが、激怒しネコが宥める平常運転の日常だね。
「よし、惑星の上陸探査だ。上陸チームは俺とネコ、アスタロト、アンドロマリウスの四名だ。アルド、帰還のタイミングはシビアだからしっかり見這っていてくれよな」
「了解です、ご主人様」
上陸チームが惑星に転送された頃、不気味な気配が濃密に立ち込めていた。なんだ?この血生臭い気配は、まるで屠殺場にいるみたいだ。
数頭の大型犬が数人の男女を食い殺す現場に俺たちは出くわしたみたいだ。
「とりあえず、ネコ!そこの女性を守れ」
「な、なんて無茶ぶりな。こんなの昔のご主人みたいで、懐かしくてやるせなくてほっこりするにゃ」
ネコが狂犬の攻撃をいなす、かわす、叩きのめす。なんだかんだ言っても、ネコ最強はこの世の摂理らしいな。しかし、この二0世紀や二一世紀レベルの格闘で何をとち狂っているのだろうか。