そろそろ問題の惑星が見えるころだな。天の川銀河の中心を目指す旅の途中に知的生命体の存在する惑星が発見されたため、暇つぶしに探検することになった。
異なる文明が出会ったとき、後に災害と呼ばれるようになるのか、お互いがより良き発展を喜び合う記念日となるかは相手の出方次第だな。
そんなことを考えていたのは出発数時間前のことだった。とある惑星に知的生命体の兆候をキャッチして上陸した俺たちが見たのは、町はずれで野犬に襲われる人たちだった。
俺の命令を受けたネコが女性に襲い掛かる大型犬を軽いフットワークで翻弄し、猫パンチや尻尾払いで吹き飛ばしていく。
度重なる攻撃を全て撃退された五、六頭の大型犬は闇に紛れて逃げていった。
「ふう、口ほどにもない奴らにゃ」
「特に何もしゃべっていなかったみたいだがネコ?」
「ご主人、こういう時のセリフはカッコよく決めさせてくれるものにゃ」
襲われていた女性がこちらに礼を言って来た。多分他の二名の男性よりも地位が高いのだろう、服装もより高級そうな感じがしている。
「先ほどは助けて頂いてありがとうございました」
「お怪我はありませんか?」
「はい、大丈夫です。ところであなた方は?あまりこのあたりでは見かけない方のようですが」
「ええ、旅の商人です。私は竜という者です。こっちは供のアンドロマリウス、それにペットのネコです」
「はあ、ペットですか?ああ、すみません私はペネロぺ、この二人は部下のアランとスコットです」
まあ、磁器人形に見えるアスタロトと俺の右肩に不可視状態で乗っているムガットについては話がややこしくなるので割愛だ。
「なるほど、美味しいお茶ですね。土産に欲しいくらいだ。差し支えなければ交易の対象にできませんか?」
「ええ、かまいませんよ。しかし、金をそれほど大量に用意していただけるなんてありがたい限りです」
俺たちは、惑星の代表であるペネロペの執務室で交易について話し合っていた。無論、仮想通貨で取引する方が良いのだが。最初は現物の交換から始めてその間に時間を稼ぎつつ霊子《レイス》をソフトフォークして恒星間宇宙での取引を可能にするのだ。そのためには、やはりここでネコさんの力を存分に発揮してもらうしかないだろう。
「今日は皆さんの歓迎会を行いますので、出席してくださいね」
「それはどうも。楽しみにしています」
翌朝、ペネロペに呼ばれた俺たちはアランとスコットが亡くなったことを知った。なんでも二人共内臓を食い千切られて死んでいたそうだ。
「竜さん、アランとスコットの悲劇だけでは終わらない予感がします。私に力を、犯人の探索に力を貸してください」
俺はペネロペの悲痛な願いに、面倒なことになったと思いながらも頷くしかなかった。