意味不明の魔法陣?
説明すらしてくれない、つい先ほどまでは殺し合いをしていた相手を信ずる理由などどこにもない。
ホムンクルスは、静かに答えた。 『Z-RIDERシステムを開放するわ、魔導の深淵を覗く者がこんなところで立ち止まってはマスターに申し訳ないもの・・・・・・』
「承認。 適応者ソローンを対象としてZ-RIDERシステムを開放します。 システム、再起動開始・・・・・・
これより適応者ソローンに説明《チュートリアル》を開始します」
ホムンクルスであるソローンは、子猫の説明を夢の中であるいは、授業を受ける学生のように聞いていた。それは真に驚くべきことであった。
説明の内容からわかったことは、はっきり言ってZ-RIDERシステムの使用方法と効果だけだった。
Z-RIDERシステムを使うと、任意の場所に移動できる。これは、魔導の空間転移とは別種のもので距離の制限とかは一切なく、それこそ多次元宇宙でも時空を超えた過去や未来にも移動することが可能な、とんでもないシステムだった。
因みに名称の由来は、Z《終極を》RIDER《探索する乗り物》と言うことらしかった。
まあ、こじつけですがR:Ray(光線)、I:Inferno(地獄)、D:Destiny(運命)、E:Eternity(永遠)、R:Reverie(幻想)という意味も込めているらしいで す・・・・・・
と、いうような説明が何億分の一秒に満たない短時間で為されたが今のソローンには特段違和感を感じなかった。
『まあ、いろいろ言いたいことは有るけれど。
今はそれどころじゃ無いわ、早く試運転を始めましょう!』
「了解、既にライダーシステムは解放済みです。先ほどのチュートリアルの要領で希望する場所を思い浮かべて下さい。
時間を置かずに所望の場所に立っているはずです・・・・・・」
(ふう、まずは。あの場所へ、あの時間、まだマスターが居られた頃へ・・・・・・)
眩い光と漆黒の闇が錯綜する、じっと見つめると精神に異常を来たすほどの不思議な光景が渦を巻き、やがてふっと消えた。
(えっ、マスターが居眠りしている。ふふっ、マスターの寝顔なんて見たこと無かったなあ。そうか保育器《インキュベータ》の中で眠るのは昔の私なのね・・・・・・)
若干の眩暈を気力で抑えながら私はマスターの寝顔を食い入るように見つめていた。そして、どれくらい時間がたったのだろうか銀色の小動物が私を睨みつけていた。
『また猫か、あなたたちには好かれないみたいね・・・・・・』
「ふむ、現状のデータから外挿するといずれ私は完成するみたいね。そしてソローン、あなたはシステムを開放したみたいね。
おめでとうを言うは、未来のわたしに・・・・・・
しかし、あなたを見るたびに嫉妬に駆られるのはいい加減やめてほしいわね。わたし・・・・・・」
銀色の造り物じみた猫は、毛を逆立てるといつの間にか普通のシャム猫に姿を変えていた。
『そう、あなたなのねネコ!』
「ようこそ、そしておめでとう。Z-RIDERシステムを開放し者、ソローン!」 にゃーん、どこかで猫の普通の鳴き声がしたかも知れない。