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宇宙船太陽系《マンズーマ・シャムセイヤ》制御室
ふう、また面倒な仕事が降って来たのかにゃ?
「アルド、今度はどんな依頼なのかにゃ?」
『はい、船長。ご説明いたします』
依頼内容をまとめるとこんな感じにゃ。
1 依頼者:クライナ共和国警察本部長
2 依頼内容:連続失踪事件の犯人及び中《アタル》帝国の関与の有無
3 その他:中帝国の関与について匿名の情報提供《タレコミ》あり
4 補足事項:連続失踪事件の管轄は、現在軍情報部に移管済み
「ふむ、担当を外された警察本部長の憂さ晴らしかにゃ?だが、シアー共和国を飛び越えて中帝国の関与について情報提供《タレコミ》があったとは興味深いにゃ」
「お茶が入りました。今日のおやつはなんと、まるごとマスクメロンケーキです。どうしたんですかね?この前、何気に私がこれ素敵ですって言ってたらアルドさん奮発してくれたんですよ」
サマンサが興奮気味に紅茶とお茶菓子を持ってきてくれたにゃ。え?マスクメロン?
サマンサがマスクメロンのヘタの部分をパカッと開けて、中から四つにカットしたケーキを一切れ皿に盛ると渡してくれたにゃ。
マスクメロンの緑、生クリームの白、イチゴの赤、スポンジケーキのクリーム色がミルフィーユ状に層を成して綺麗だにゃ。
さっそく、吾輩も美しくカットされたケーキを食べたにゃ。
「美味いにゃ、爽やかなメロンとイチゴの甘さ、それらをしっかり支える生クリームとスポンジケーキが味の土台を作っているにゃ」
「わあ、想像の斜め上をいく上品なケーキですね」
サマンサが歓声をあげていたにゃ。
「そうね、くどくない甘さのフルーツとクリームのハーモニー。上品で私好みね」
科学主任のネコさんも絶賛のフルーツケーキにゃ。
『みなさんのお口にあってよかったです。
ところで、船長。やはり、また現場のクレイナ共和国に上陸しますか?』
「いや、今度は疑惑の中帝国に行ってみようと思うにゃ。例の参謀総長にも直接会いたいしにゃ」
「ええ?」
「まあ、それもいいかもね」
サマンサが驚き、ネコさんが同意してくれたにゃ。
『了解です、船長。目標、惑星ダンキンから距離五光年の周回軌道。三十分後に到着します』
「うむ、発進!」
阿吽の呼吸でアルドが発進準備をしてくれたので、吾輩は船長として命令したのにゃ。
アルドは食べないから、後一切れ極上のケーキが残っているはず?うにゃ、そう思ってサマンサの席の方を見るとネコさんが最後の一切れを美味しそうに口に入れていたのにゃ。ああ命令の前に、ケーキを確保すべきだったにゃ。
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惑星ダンキン首都ナツード
『上陸班のエネルギー転送、これよりモニタを開始します。』
サマンサに抱えられて、普通のシャム猫に偽装した吾輩は首都ナツードに降り立った。隣には白衣を羽織って伊達眼鏡を掛けたネコさんが興味深げに周りを観察しているにゃ。今回も上陸班はいつものメンバーにゃ。
さすがにこの辺りで一番の勢力と歴史を誇る中帝国の首都だけに、石造りの建物が整然と並んでいた。
吾輩たちは、通路に架設された屋台でナツード名物の油菓子に砂糖やクリーム、香辛料等、好みのトッピングを施したものを摘まみながら参謀総長の屋敷へ向かった。
サマンサが館の通用門で用件を告げると、簡単な確認の後に吾輩たちはかなり豪華な家具で整えられた待合室に通されたにゃ。
「ふむ、貴族で軍高官の割には簡単に通されたにゃ?」
「まあ、参謀総長は何でも内政についてもかなりの部分を任されているみたいで、商人が表敬訪問に来るのは日常茶飯事なだけよ。その代わり、忙しいでしょうから待たされるのは覚悟しておいてね」
召使いが淹れてくれたお茶を飲みながら待っていると、ようやく吾輩たちの番だと案内係が呼びに来てくれたにゃ。さて、参謀総長はどんな人物だろうかにゃ?