(うーん、少し涼しいわね。結構運動したからかダイエット効果があったみたいね。身体が凄く軽いわね?!)
『Z-RIDERシステム、ここはいったい何処なの?』
「太陽系第三惑星の衛星さ、君たちはたしか月と呼んでいたよね」
『道理で誰も見当たらない訳ね。で、まさかマスターがここに居ると言うんじゃないわよね?』
「違うよ、さっきも言ったように遥か銀河を旅する必要があるって言ったよね。だから旅するための船を借りに来たのさ」
「ご主じーん! 何処にゃあ?!」
得体の知れない力、いや見知らぬ魔導の流れが大切な何かを探すようにあるゆる方向に向けて彷徨い、探しあぐねあらゆる場所で悲し気に渦を巻き漂う。
『ふむ、我らの知らぬ魔導の使い手がいるようだな、この衛星?月には』
ホムンクルスは、魔導の発生点を目指して歩いていく軽やかに。宙を月面を飛び跳ね、高く跳び過ぎた高度を魔導により捻じ曲げて速度に変え数舜の後には出現した場所の裏側にたどり着いていた。
『しかし、またか!?』
黒いシャム猫が月面で吼えていた。
「ご主じーん!」
ホムンクルスはうんざりしたような顔で、黒いシャム猫の前に降り立った。 『魔導の力を弄んでいるだけでは決して何も手に入らぬぞ』
「これは、珍しい月面に客人か。うん?おやあ、ホムンクルスとはにゃあ。
この俺に何か用かにゃ?」
『腑抜けた猫になど用は無いが、必要な物があってここに来た。
おい、船は持っているか?』
「あはは、あっはっは。これは愉快だ、月面に来て久しぶりに笑い話を聞いたにゃ」 『ふふ、今すぐ笑えないようにしてあげるけど?
それとも、質問に答える?』
ホムンクルスは、極大のフレアを右手に翳しながら黒い猫を脅し始めた。
「ふひゃ、ひゃ。ふぅ、噂に違わず気が短いホムンクルスらしいな。
まあ、遠路はるばるここまで来た客人を無下にするのもご主人の主義じゃ無いのかにゃあ?
わかった、船は持ってるよ。それも飛び切りのカワイ子ちゃんだ、あんたもきっと気に入るよ!ちょっと薹《とう》が立ち過ぎてるけどにゃ」
『別に船の年なんか気にしちゃいないわ。ちゃんと役に立つならね、お前も役立たずならすぐに永遠の眠りに着かせるわよ』
黒いシャム猫は、器用に肩を竦めた。
「まあ、いいか。じゃあ先に船の名前だけ教えといてやるよ。マンズーマ・シャムセイヤ、それがこの船の名前さ」
『この船って?どこに船があるの、地下に隠しているとか?』
「ふふ、もう。あんたは船に乗ってるんだよ。この月を含めてマンズーマ・シャムセイヤさ。宇宙一の船、そして俺が船長のネコにゃ」
「補足すると彼が伝説の船長キャプテン・ネコですよ、ソローン」
Z-RIDERシステムがいきなり口を挟んできた。