「今朝のステーキはどう?お口に合いましたかしら?」
『ええ、焼き加減もレアだけどしっかり中まで火が通っていて蝙蝠の滋味深さが残っていて、それにソースも変な主張をせずしっかり味を支えているわ』
朝食の感想を述べるとソローンは満足げに紅茶を啜った。
「いやあ、昨日はすっかり世話になったなあ。下僕1号」
『うむ、苦しゅうない。当船を借りるためアルドに出された条件だからな』
リュラーン皇子(地球名:乱導 竜)が礼を言うとホムンクルスはこともなげに応えた。
「ご主人様、ご帰還おめでとうございます。お食事の用意が出来ております。ところで、彼の地で目的は果たせましたのでしょうか?」
「うん、まあ・・・
なんだかんだで、流れに乗せられた感じで気が付いたら過去のごたごたが目の前に有って。
最初は軽く、下僕一号を助けに行ったはずだったのになあ」
下僕一号とは、領主の館に乱導竜が滞在していた頃ホムンクルスが彼に名乗った名前、まあ偽名である。
『うん?一時ヴァサゴにほんの一瞬だけ隙を突かれて操られた時にお節介にも茶々を入れに来た時のあれのことか、お客様?』
「え、まあそうだ(どこをどう脚色したら、あれがほんの一瞬になるのかはおいといて。つ、突っ込んだら負けだ?)。あのあと下僕一号、お前がとんでもない極大魔法を使ったものだから俺たちは巻き込まれて宇宙を彷徨って・・・・・・
あの袋小路に捕らわれていたという訳だ」
『まあ、なんだ。お互い助け合いもしたことだし、船を借りる件もあることだから特別に我が名を呼ぶことを許して遣わす。ソローンだ、よろしくな船主殿よ』
「おお、初めてだなお前が名乗ったのは。船の力を貸すのは構わない、よろしくなソローン。俺はまあリュラーン皇子じゃ堅苦しいしな、最近じゃ乱導竜と名乗っている竜とでも呼んでくれ」
乱導竜は、コーヒーを一口飲むと笑った。
『じゃあ、折角だから竜マスターの居所について何か知ってるかしら?』
「うん?マスターってジョージさんのことだよな、それならお前にやったスマフォで探せるだろう?」
『スマフォで探すとは、どういうことなのだ竜?』
竜は肩を竦めると、身振りでスマフォを寄こせと催促した。
「大事な物なんだから、投げんなよ。えーと、そうだな最近の着信履歴を見て。おお、これか。そんでもって、例のサイトにアクセスして発信者の特定からウォレットアドレスを確認すると・・・・・・
おっと、出て来たな。
おい、アルド霊子《レイス》のアクセスログからこのアドレスを検索してノードの位置をスクリーンに表示してくれ」
「仰せのままにご主人様、投影しました」
「ほう、これでジョージさんの足取りが掴めたな。流石に大魔導師といえども生きていくうえで金、いや霊子の流れを止める訳にはいかなかったようだな」
『つまり、どういうことなの竜?』
「ああ、ジョージさんが最後に金としてか魔導としてかはわからないが霊子をこの位置で使っている。つまり、ジョージさんはここに居るはずだ!」
『そう・・・・・・、アルド最大船速でその座標に向け発進!』
「了解、凡そ三十分後に指定座標に到着します」
「ふう、相変わらず滅茶苦茶な船だな」
「ご主人様、お褒めに預かり光栄です」