さてと盛大に歓迎してやろうかね。
『さあ、着いたよ。さっさとお入りよ』
『この舐めた真似しやがって、キュルソン様から人間を預かっていた手前大人しく付いて来てやったが。
あの娘を取り返したらすぐに、てめえらを食い千切ってやるからな』
蝙蝠の化け物が教会に入った瞬間、身を強張らせて大人しくなった。
「ふーん、結構効くもんなんですね。聖杯に何とかの槍とか聖骸布とか。あ、一応聖水ってのもあたり一面に撒いときましたけどね」
『くう、眩しい。それに肌が焼けるように熱い。お前らも魔界の者だろうが、何故平気なのだ』
「別に可笑しくないですよね、僕は元々天界の者だし。アンドロマリウスの姉御はご主人様以外に神は認めて無いから、効果無いし。
逆に効果覿面な魔界序列三十三位のガープさんの方がおかしいんですよ。
まあ、僕がそれなりに調整して結界内を光の力で強化してますけどね」
『ほんと、おかしな奴だよ。なんで天界から追われたのかね。
まあ、ふざけてばかりいるからなのかね』
その辺の椅子を勝手に解体した木材で、高さ三メートルくらいの十字架を組み上げるとザキエルはガープをそれに磔にしてしまった。
『く、くそ。解け、おい、こら!次に会ったら酷い目に合わせてやるぞ!』
「なんだか、おめでたいですね。この状況で果たして次の機会が来ないことくらい分からないものですかね。ほんとに、キュルソン姉さんに洗脳されておつむがお留守のようですね」
『てっ、ホントにこいつを食べるのかい。なんだか嫌だよ私は、こんなゲテモノ食いたくないな』
「そう言わずに。そうだ、あなたのご主人様は蝙蝠が好きだそうですよ昔から」 『おい、やめろ。ワインなんか掛けるな。お、おい。その槍は何に使うんだあ!』 「とりあえず、心臓は僕がいただきますね。うん、なるほど。結構いけますね。
じゃあ、肺は姉御にどうぞ。柔らかくて美味いそうですよ、フワと言うんですって」
『ふーん、煮込んであるのか少し色が黒いけど美味いねえ』
『こ、こらー。俺様を喰ってるんじゃねえ』
「五月蠅いですねえ、仕方ない。脳味噌いきますよ。
流石に、大人しくなりましたね。では、軽く塩胡椒を振ってさっと油で炒めてと。うーん、クリーミーで蕩ける旨さですね。
姉御もどうぞ」
『なるほど、これは癖になる味だねえ。なんだか、魔導の力も上昇したような気がするし敵の戦力も減って一石二鳥だな』
「ここでもも肉のステーキをこれも塩胡椒だけでいきますよ。まあ、少し筋張ってますが美味いですね」
『そうだね、まあ牛の方がいいけど。これはこれでありと言えば有りだな。さっぱりと食えるところがいいね』
二人で喰い進めていくうちに粗方ガープの残骸が片付いたようだ。予めザキエルが火に掛けていた鍋から良い匂いが漂い出した。
「あとは、適当にぶつ切りにした肉をスープで頂きましょうか。まあ、あまり時間を掛けてないけどいい出汁が出ましたね」
『まあ、思った程脂っこくはなかったな。ところで、あの娘はどうしたんだい?』 「はい、眠らせてセーレに店まで送らせました。今日のことは、僕が言うまで思い出すことはありませんよ」
『ほんとに悪だねえ』
教会からは二人の笑い声がしばらく漏れ続けた。