「ごめんなさいよ、主様《ぬしさま》があんまり寝かせてくれないもんだから朝食は有り合わせの物になるけど食べてってくださいな」
ふむ、香辛料《スパイス》の良い香りがしているな。
「そうか、済まぬな。遠慮なく頂こう。この香りは?南方の香辛料が、使われているようだが?」
「ええ、たまにですけど商人が置いていくんですよ。ちょっと多めに可愛がってあげるとね。昨日は主様にはあまりしてあげられなくて、ねぇ今夜も寄っておくれでないかい?」 ふむ、他の店を探すよりはなじみの店を作るのもよいか。
「そうだな、あとで寄るとしよう。飯も美味かったぞ、今夜も頼む」
「わかりました、大したものは出せませんけどね」
「そうだな、これで足りないものがあれば買い足してくれぬか?たぶん、この街をいろいろ回るので腹を空かして戻ってくるつもりだ」
旅の男は、革袋から金貨を小分けにして入れた小袋を出してマリアに差し出した。
「そうですか、でもこんなには要りませんよ。お返しは、主様。お手を出してくださいまし。そして、私の言うとおりに呪文を唱えてくださいね。
アカウントオープン!」
「ふむ、何やら難しそうだな。こうか?アカウントオープン、うん数字が、0000が頭に浮かぶな。これは?」
「じゃ、お釣りをお渡ししますよ。主様は南方のお方ゆえ、黄金と等価交換できる通貨にしましょうね。えーと、あれはたしか、あった。では、行きますよ主様」
ぬ?数字が光って増えたのか。
「マリア、この頭に浮かぶ数字がそうなのか?
九0SNG?この金をなんと呼ぶのだ?
え?分るぞこんな見知らぬ通貨のことが、センゴールドというのか。なるほど金の小袋と一SNGが等価かなるほど解り易いな、それにこれなら落とすことも、盗まれる心配もないのか。
ふーむ、これは良い物を知ったな」
なにやら、さっきから力が漲るような。特に股間が熱い、血がたぎるようだ。
「ところで、先ほどの朝食に昨夜の精の付く魔物の肉が入っていたようだが。まあ、よい時間はある。すこし可愛がってやるぞ、マリア。この悪戯っ子が!」
「ふふ、今度はそんな簡単に我を忘れたりしませんよ」
しなやかな手が、男の胸の中心を優しくなでて愛情を高めていく。その後流れるような動きで艶めかしい足が首元に絡みつき、首の付け根、肩を絶妙の力加減で押していく。
激しく鼓動を高め、楽しい二人だけの時間が過ぎていった。
三時間くらい、娼館を艶めかしい嬌声が蹂躙した。
「では、行って来る。少し遅くなるかも知れぬが、他の客は取らずに待っておれ」
「はい、主様玄関までお見送りできませぬ不調法をお許しください。ああ、身体に力が入らなくて」
ふむ、朝から散策するつもりのはずが、昼前からの散策になるとは。