奥の手は最後まで見せぬもの、味方にすら秘匿すべし・・・・・・
『ああ、ザキエルも堕ちましたね。そろそろ、行きましょう』
『お待ちください、ご主人様はここで。私が行って奴らを葬って来ます!』
『アン、お前死ぬ気なの?』
魔人アンドロマリウスは、にっこり笑うと駆け去って行った。
(ソローン様、少しでも奴らを削って見せます。ソローン様の悲願達成のときまでお側におれませぬことをお許しください)
岩陰から必殺の気合のもと撃ち込まれた一撃が大地を削った。
『もういい加減、雑魚の相手も飽きたのだが。
親玉を呼んで来い、三下!』
魔人アモンの怒号に吹き飛ばされるアンドロマリウスは、決死の思いで大蛇を振り回しながら突進した。 魔人アモンの右手が微かにぶれたように感じた瞬間、アンドロマリウスの両手が鮮血を撒き散らせながら肩から千切れ飛んで行った。
『くぅ、まだ。まだ、死んではおらぬ』
よろけながらも魔人アモンに一矢報いんと牙を首筋にと狙いを定め、一瞬の跳躍の後顎を閉じた瞬間、天地が逆転し両足を握られ中吊りにされるアンドロマリウスの瞳が悔しさに細められ、やがて頬が羞恥に染まる。
『ほう、そうまで誘い込まれては。親玉が諦めて来るまでの暇つぶしに三下の蜜の味でも確かめてやろうか』
『このぉ、離せ!お前など隙を見て噛み殺してやるわ』
(この恥辱、だが・・・・・・ こいつの油断、時間稼ぎがもしやソローン様を優位に導くやも知れぬか?)
『ふふ、三下の味もなかなかよのう。それ、泣きたければ泣け。うぬが選んだ主人がカスだったことを恨みながら一時の快楽に溺れるがよい』
『だ、誰が・・・・・・ ああっん。うう』
周囲が汗、血と淫気の匂いに染まる。
魔人アモンによって辱められたアンドロマリウスは、今ズタボロの状態でアモンの部下十数名に嬲られていた。
既にアンドロマリウスの意識は苦痛を通り越して快楽の夢幻郷を彷徨っていた。 魔人バアルが、アモンの部下とアンドロマリウスが繰り広げる痴態を満足げに見下ろしていた。
『ようやく、姿を現したなバアル!』
『どこだ?』
魔人アモンが自らの探知に掛からなかったソローンの声に驚きながら周りを見回すと魔人バアルの後方、宙に浮かんだホムンクルスが笑っていた。
『ようやく、親玉が現れたか。あんまりお出ましが遅いからお前の部下はほれ、このとおりだ!』
あられもない姿のアンドロマリウスが犯される姿が中空に投影された。
『ふっ、一体それがどうしたと言うの?
魔人の癖に、いちいち負けた部下が殺されたの、嬲られたのが・・・・・・
どう戦局に影響すると、あなた本当にわかっているの?』
『ええい、少しは歯ごたえがあるのだろうな、ホムンクルス!』
怒涛の勢いで、ソローンに迫る魔人アモンの二振りの魔剣がただ闇雲に宙を切る。あまりの剣を振る速度に大気が焼け、砂塵が舞い散る。
『いくら威力があっても、当たらなければどうということも無い』
『くっ、おのれ!』