(ふう、余裕の表情を保つのも辛いがここが主演男優賞を取れるか端役の一人で終わるかの境目だ。気張って演じ続けるぜ・・・・・・)
富の女神エンドロ・ペニーが惑星サイズのサイコロたちの前で膝を着く。その打ち拉《ひし》がれた巨大な姿は哀れをも誘うものだった。
「こ、こんなことって。はじめは、他愛の無い暇つぶしの玩具を見つけて弄んでいただけ。偶に力を貸したのもすぐに壊れてしまっては興ざめなだけ。
う、うう・・・・・・」
「勝ったわね、リュラーンの発想の勝利」
「ふふ、臆面もなく如何様《いかさま》を有効だと押し通すメンタルの強さが勝敗を分けたわね」
「竜さんにしては、よくやった方ね。(ふふ、すばらしいわ。銀河をも従える力、いずれは私のものになる力、先行投資は成功だったわね)」
「ご主人の悪逆非道には定評があるにゃ」
「まあ、よくやった(そう、上手くいくかな?我が君が付き従ううちは、我が好き勝手させるものか)
キリュウ《姉さん》、下僕一号、ネコさん、手下《ペット》とネコに跨ったアスタロトが勝利の余韻に浸っていた。
そのとき、俺の乗った巨大な鎧、黄金の矛盾《スィラーフ・ディルア》を中心に虹色の光が覆った。
光が収まった後、俺の手には一枚のタロットカードがあった。
その虹色に輝くカードには、気ままな一人旅らしき男の図柄が描かれていた。タロットカードのゼロ番<愚者>、まあ何物にも囚われない俺に相応しいカードだ。
いつの間にか、富の女神エンドロ・ペニーは姿を消していた。まあ、敗者をいつまでも嬲る趣味は俺にないから問題無いが・・・・・・
宇宙船太陽系《マンズーマ・シャムセイヤ》の制御室で俺は命ずる。
「ようし、アルド。針路アンドロメダ銀河の中心、光速の四,二九四,九六七,二九六倍、発進!」
「かしこまりました、到着予定は約五時間後です。ご主人様」
さて、口座の残高は少なくなったがエンドロ・ペニーとの勝負の後は、また増え始めている。サイコロ惑星の買い手でも見つけるか?新たな取引を求めて俺は宇宙を行く。
ふっ、兆利人に成るとはこういうことだ。
= 完 =