人々の悲鳴、阿鼻叫喚が絶え間なく続く。
ここはソローンが本拠にしていた街から更に海を隔てた南東に位置する大陸、ヴァサゴに支配されたソローンはその魔導の力を闇雲に破壊に費やしていた。
町が、街が崩れていく。そこに住む人々が死に絶えていく。
『ほっほっほ。愉快、痛快、おまけに懐が暖まるとは正に至福の時が訪れたのう。 どうしたのだ?猫頭よ』
『・・・・・・ 簡単過ぎる、あの伝説のホムンクルスがこうも簡単にヴァサゴの手に堕ちるなど』
『そうは言てもなあ、猫頭よ。
それならば我らがヴァサゴの後塵を拝したことこそ信じられない不運、悪運、悲運極まりないことぞ、そう思わぬか人頭よ』
『そうよな、我らに運が無かっただけよ。何も不思議がることはない、武運拙くは武人の定めよ。
次の機会を逃さぬよう、居眠りなどしてくれるなよ猫頭!』
『くっ、何かがおかしい。何かが気に喰わぬ。
ええい、腹立たしい。むざむざとヴァサゴごときの軍門に下りおって見掛け倒しのホムンクルスめぇ!』
『・・・・・・』
勇敢な兵士の集団が果敢にホムンクルスに向けて攻撃を仕掛けたが全て翻弄され、撃ち返され、あるいはより強力な魔道の洗礼を受けて打倒されていった。
人々の悲嘆、無念、恐怖、怒りが全て変換されて地獄の軍団の宝物庫にうず高く積まれていった。
(ま、マスターは狡いです。ずっと一緒だと仰っていたのに、それなのに突然いなくなってしまって・・・・・・ )
『ええい、鬱陶しい、轟雷! 業火! 極寒風!』
(こんな国など、滅んでしまえ。燃えてしまえ、いや、焦げ臭いから凍ってしまえ!)
平和に暮らしていた人々の安寧は、突如現れた災害によってあっけなく崩壊していった。
(ええい、いっそこの国ごと切り刻んで沈めてしまおうか?
とりあえず、山よ在れ、真っ赤に燃えて溶けた岩クズを撒き散らせてみるか)
『地獄の焦土と化せ、溶岩を振り撒け!』
逃げまどう住民に燃える岩や灰が降り注ぎ、避難しようにも溶岩に道は分断されパニックに陥った者たちが川に飛び込んでいった。
それはほんの一時焦土の熱さを忘れさせてくれたが、容赦なく川に流れ込む溶岩によって蒸し焼きにされ、その苦痛に満ちた生涯を閉じていくのだった。
「おいおい、何をそんなに拗ねているんだ。
まるで、癇癪持ちの子供みたいだな。はっはは」