トラベル

混迷の街カルギル ザンスカールへの旅

空猫(旧 elm13)'s icon'
  • 空猫(旧 elm13)
  • 2019/10/08 09:43

10年ほど前ザンスカールの人たちの生活を描いたこの番組を見てザンスカールに興味が湧いてきました。

ザンスカールの普通の家庭の雰囲気や人々に憧れました。

ラダックに行った時には絶対にザンスカールにも行こうとお思っていました。

 

 

ラダックからザンスカールに行くのは約二日の行程。

かなりの遠回りですが、カルギルというイスラム教の街を通るルートでしかザンスカールに行くことはできません。

初日はレーから西へ7時間ほどのカルギルの街まで行きます。

Content image

この日も雲ひとつない快晴。

強烈な太陽を眺めながら西へ向かいます。

Content image

道中以前も訪れたラマユル寺院を通過します。

 

カルギルに向かう途上のムルべクの村には巨大な弥勒菩薩像があります。

Content image

この像は7世紀に作られたもので、イスラムのカシミール文化の影響を強く受けています。

この地方の複雑な状況を大きく象徴するものです。

 

7時間ほどでカルギルの街に到着しました。

Content image

渓谷の中にある中規模の街

Content image
Content image
Content image

女性たちはみんな色とりどりのスカーフをかぶっていてとてもカラフル

Content image
Content image

子供達はフレンドリーです

Content image

女学生は白のスカーフ

 

このカルギルという街は、ラダックが位置するジャンムー・カシミール州の混沌とした状況を象徴するような街です。

 

この地域は本当に複雑な地域で、ジャンムー・カシミールもラダックも以前は独立した国家でした。

しかし19世紀にこの2つの地域がイギリスによって併合され、ジャンムー・カシミール藩王国という国になりました。

藩王国とはイギリス領ですが、自治権を認められた地域のような状態です。

1947年にインドとパキスタンがそれぞれが別々に、イギリスから独立することになりました。

そんな状況で、ラダックを含むジャンムー・カシミール藩王国はインドに編入されるか、パキスタンに編入されるかの選択を迫られました。

ジャンムー・カシミール藩王国は大多数の人がイスラム教徒でしたが、首長がヒンドゥー教徒という特殊な環境のため、インドに組み込まれる選択をしました。

それによって現在(というか7月までは)は、インドのジャンムー・カシミール自治州という扱いで、自治権が認められていました。

これまでもインドに所属していることに納得のいかないイスラム教徒によって、多くの紛争やテロが起こってきました。

1999年にはカルギルを舞台にインド軍とパキスタン軍が衝突して、多くの死者が出ました。

この地域は複雑な宗教事情、大国のエゴが入り組んだ非常に混沌とした地域です。

 

これがイスラム教が多数を占めるこの州の中に、仏教徒が中心のラダックが紛れているような変則的な地政配置になってい流理由です。

そのため予算の分配などの面でラダック地方は自治政府からかなり不当な扱いを受けてきたそうです。

 

しかし8月の上旬に状況が一変しました。

急遽インド政府がジャンムー・カシミール州の自治権を剥奪して、インド政府の直轄領とする決定をしました。

さらに今月下旬には、現在のジャンムー・カシミール州が2つに分割されて、ジャンムー・カシミール地区とラダック地区の2つに分かれる予定になっています。

ラダックの大部分の人たちはこの決定を大歓迎しています。

 

しかしカルギルの人たちはまったく逆です。

イスラム教徒がほぼ全人口を占めるカルギルは、地理的な理由でジャンムー・カシミール地区ではなくラダック地区に所属することになります。

カルギルに住む人々にとっては、自治権が剥奪されただけではなく、その上さらに仏教徒が中心のラダック地区に組み込まれるのは不本意でしょう。

イスラム教徒にとってはそんな決定が認められるはずもなく、現在たくさんの抗議デモが起こっています。

自分がカルギルの街に滞在している間も、人々が荷台に乗ったトラックが何台も、奇声をあげながら街中を移動して、インド政府の決定に抗議をしていました。

中には全身黒づくめのローブを着てハチマキをしたグループもあり、かなりの恐ろしさを感じました。

この地域の複雑さを肌で感じながらこの日はカルギルで一泊しました。

 

翌日カルギルから南東に12時間ほど進みザンスカールの中心街パドゥムまで向かいます。

 

 

 

 

 

 

Supporter profile iconSupporter profile iconSupporter profile iconSupporter profile icon Supporters link icon
Article tip 8人がサポートしています
獲得ALIS: Article like 82.64 ALIS Article tip 18.60 ALIS
空猫(旧 elm13)'s icon'
  • 空猫(旧 elm13)
  • @elm13
いろんな場所を無為に旅するのが好きです。旅先で出会う自然や猫たちに癒されています。

投稿者の人気記事
コメントする
コメントする
こちらもおすすめ!
Eye catch
トラベル

リッツカールトン東京に泊まってみた。【絶対2泊すべき3つの理由】

Like token Tip token
70.10 ALIS
Eye catch
トラベル

なんもない!すばらしい!天塩温泉から稚内へ

Like token Tip token
11.57 ALIS
Eye catch
トラベル

京都宇治田原・正寿院の風鈴の音とともに夏が来た

Like token Tip token
132.25 ALIS
Eye catch
トラベル

Travel Work In Enoshima

Like token Tip token
2.20 ALIS
Eye catch
トラベル

大山阿夫利神社(神奈川県伊勢原市)~シカ遭遇・龍が睨む二重の瀧#202-3

Like token Tip token
5.20 ALIS
Eye catch
トラベル

【京都旅行②】雨の日も風情溢れる金閣寺

Like token Tip token
22.40 ALIS
Eye catch
トラベル

京都大原・三千院の桜からシャクナゲへ替わる季節に

Like token Tip token
138.61 ALIS
Eye catch
トラベル

四万温泉(群馬県中之条町)1~積善館本館・千と千尋の神隠しのモデルとも(83.とらべるショット)

Like token Tip token
160.25 ALIS
Eye catch
トラベル

「もののけ姫」着想の地であり魑魅魍魎の最後の砦 知られざる京都洛北・志明院へ

Like token Tip token
8.00 ALIS
Eye catch
トラベル

COVID-19が収束したら旅行に行こう!旅行が与える経済効果とおすすめの観光地!!!

Like token Tip token
62.00 ALIS
Eye catch
トラベル

小石の天然ミュージアム~前白根山~

Like token Tip token
11.30 ALIS
Eye catch
トラベル

コーヒーの飲み過ぎによる5つのデメリット

Like token Tip token
105.50 ALIS