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YouTubeチャンネルを急成長させる7つの分析&考察【まとめ/転載】

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  • 2020/11/25 09:44

 

(noteからの転載です/YouTubeでブロックチェーンの解説動画などをやっていきたいので界隈の方が多いALISにも掲載させていただきます)

2020年の元旦に解説系YouTuberとして始動し、仕事の合間を縫って活動し続け、先日、チャンネル登録者1万人を達成することができました。思い出すだけでもツライw

2020年11月現在、

■ 解説系『パジちゃんねる』(演者:私)
チャンネル登録者:約10,000人
開始から:約330日
投稿本数:約120本
再生数10万回超え:1本(約1%)
再生数1万回超え:18本(約15%)

途中、新型コロナの影響で通勤時間がゼロになったり、会食や食事にかける時間が1週間で10時間くらい浮いたこと、ステイホームで土日もなかば強制的に自宅にいる環境になったり、世間的にYouTube視聴が増えたことなど、いくつかの幸運に恵まれ1万人を達成できました。

この『パジちゃんねる』で得たノウハウをもとに、複数のチャンネルをサポートする機会を頂きました。中でも、初めてSNSにデビュー=完全無名状態からのスタートで、現在もYouTubeのみで急成長しているエンタメ系チャンネルなどからの知見から、YouTubeで勝つための7つの分析&考察を公開してみたいと思います。

■ 急成長中のエンタメ系YouTubeチャンネル
チャンネル登録者:約5,000人
開始から:約150日
投稿本数:10本
再生数10万回超え:5本(40%)
再生数1万回超え:10本(100%)

まともに読むと30分以上かかる長文につき、ぜひお時間のあるときにじっくりご覧ください。

目次

1. オーガニック成長をもたらす『ジュース理論』

2. 「平均再生率」を高めるには

3. 「高評価率」を高めるには

4. 最適な動画サムネイルとは

5. 曜日によって再生数は変化するか

6. 収益性を高めるには

7. おまけ:解説系YouTuberのひとりごと
 

1. オーガニック成長をもたらす『ジュース理論』

はじまりの話
2020年元旦、日本ではまだ新型コロナの影響もほとんどなく、20年代の新時代に「なにか新しいチャレンジを」と思いついたのが、前々から注目していたYouTubeでした。意気揚々、旅先で配信をスタートしました。

最初は、顔出しせず、台本を書いて、テキスト読み上げソフトで初めての動画を投稿しました。SNSなどでもお知らせし、初回から数百回の視聴だったものの、エンゲージはいまいち。数回同じパターンで試して、投稿のたびに視聴が減ってしまい、早々に暗雲が立ち込めたのです。

音声読み上げはすぐに止め、「顔出し」を決意し、アドリブで撮影にトライ。平日夜と早朝、休日を使って、色々なパターンの動画を週2〜3本程度のペースで動画を投稿していきました。実体験も目的だったので、編集も自分自身で行いました。

元旦から開始して3ヶ月ほど経過しても、チャンネル登録者数はまだ100人もいってませんでした。迷走し続けている中、段々と分かってきたのは、YouTubeには、もともと私が発信したかった情報=「テクノロジー領域(ブロックチェーンなど)」の話に興味を持つ人がとても少ない、ということでした。

やりたいジャンルに人がまだ少ないなら、いつか来るその時代までにチャンネルをどう育てていくかという発想で、もう少し初心者向けの新しいツールやソフトなどをテーマに、ITリテラシーを高めるための情報を多く出していこうと思っていくつかトライした中で、明らかにこれまでと手応えが違った動画が生まれます。

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最終的にこの動画は約20万回再生のスマッシュヒットとなり、初めて解説系YouTuberとしてトレンドをつかめた瞬間でした。そして、ラッキーだったのが、この動画が毎日着実にジワジワと視聴回数を伸ばしていったことで、「YouTubeはアルゴリズムの影響がかなり強い」という気づきを与えてくれたことです。

この毎日ジワジワと視聴者が流し込まれてくるアルゴリズムは、これまで他のSNSなどであまり体験したことがなかったため、非常に興味深かったのと同時に、YouTubeというプラットフォーム視点から考えても、とても理にかなったアルゴリズムになっていると推測しました。

そうした流れで、考えついたのが、『ジュース理論』です。


『ジュース理論』とは
『ジュース理論』をざっくり解説します。

チャンネル運営者はYouTubeから分配される大量の「ジュース(=視聴者)」を大勢の運営者同士で奪い合う、過酷な競争に毎日さらされています。「ジュース」の分け前は、「平均再生率」や「高評価率」などを中心に、YouTube独自のアルゴリズムで計算され、各動画の評価が決まります。

しかも、「満足度」の高い選りすぐりの動画だけが、そのテーマに興味がある視聴者の目に届くように、いろいろな舞台ごとに動画の「満足度」をテストされていきます。サッカー選手に例えると、ジュニアユースでデビューし、U18、U20などでの活躍を経てプロデビュー、その後日本代表、海外リーグでの大活躍のようなエリートコースに乗れるか、というようなイメージです。

具体的には、「検索」→「ブラウジング機能(おすすめ)」や「関連動画」→「急上昇」のように、徐々に視聴者が多い舞台でテストされ、そこで活躍できたらまた次の舞台へ、という流れで、より多くの「ジュース」が獲得できる仕組みになっています。

それぞれの舞台は、視聴者の興味がある「テーマ」ごとに分かれています。テーマに対して、「満足度」の高い動画が新しく生まれると、毎日少しづつ「ジュース」が増えていき、ジワジワとインプレッション(=動画サムネイルの露出)と再生回数が伸びていくのです。


無名チャンネルにも常にチャンスがある
仮にチャンネルを開始したばかりの無名なチャンネルでも、このアルゴリズムは有効です。

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上記は、『ジュース理論』をもとにした、「そのテーマの視聴者が最高に満足する動画の作成」をアドバイスした結果で、冒頭で紹介したエンタメ系チャンネルの1回目の動画投稿のトラフィック別の視聴回数の推移になります。チャンネル開始直後のため、チャンネル登録者は0人で、投稿から数日は「検索」から1日数十人くらいの視聴がある程度でした。ジワジワと1ヶ月以上かけて動画の「満足度」を測られて、「ブラウジング機能(おすすめ)」や「関連動画」といった表舞台へ露出が増えていくことで、視聴回数を増やしていったことが分かります。

YouTubeの”神”は、どんなに無名チャンネルであろうと、あなたが投稿した動画の「満足度」を必ず見ているのです。


動画がバズる仕組みを分析する
『ジュース理論』を思いついてから、いろいろな疑問が浮かび上がってきました。

「高評価数が多いと再生数やインプレッションが伸びる?」
「サムネイルのクリック率が高いと再生数やインプレッションが伸びる?」
「平均視聴時間が高いと再生数やインプレッションが伸びる?」
「平均再生率が高いと再生数やインプレッションが伸びる?」

などです。そこで過去のデータから各要素との相関を割り出してみました。まずは各動画をできるだけ横並びに比較できる状態にしました。

そして、このデータをもとに相関係数を分析したみたのがこちらです。

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この結果をざっくり書くと、動画の再生回数やインプレッションを伸ばすには、「平均再生率」と「高評価率」が大切、ということが浮き彫りになりました。

ちなみに、上記からは、一般的に大事と言われる「動画サムネイルのクリック率」は、インプレッション数や再生回数には直接的な相関がないという結果でした。ただ、動画の「満足度」が高いヒットが生まれた時、増加するインプレッション(=露出)に対して取りこぼしをいかに少なくできるかが大事になってきます。「満足度」が高い動画がコンスタントに作れるようになったあとは、動画サムネイルのクリック率がより重要になってくるのです。


再生回数がジワジワ伸びる『合格ライン』
インプレッションが増えて、再生回数がジワジワ伸びていく「満足度」のハードルを、こここでは『合格ライン』と呼びます。この『合格ライン』を超える動画をいかにコンスタントに作れるかが、オーガニック成長=YouTubeチャンネル成功のためのカギとなります。

YouTubeは、視聴者のグループがテーマごとに、「好きの度合い」でキレイに分かれています。そのグラデーションが見事で、興味ありそうなグループの視聴者へジワジワと「満足度」の高い動画がおすすめされるのです。

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上記は、テーマ別にみた、「平均再生率」の『合格ライン』のイメージです。競合が多いテーマの場合、『合格ライン』を超える平均再生率は高くなり、露出される舞台ごとにその『合格ライン』は変わってきます。

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また、「平均再生率」は動画の尺によって、有利・不利があり、例えば1分以内の短い動画の尺だと、「平均再生率」の『合格ライン』は90%以上を狙う必要があったりします。逆に、30分以上動画の場合、「平均再生率」が30%台でも『合格ライン』を超えるケースもあります。さらに、ここでも動画のテーマによって競合が多いので、競合が多いエンタメ系は、より『合格ライン』が高くなる傾向があります。

テーマや動画の尺によって合格ラインは変化しますが、仮にKPIを設定するなら、

・平均再生率:55%以上/10分動画
・高評価率(高評価数/再生回数):5%以上
・投稿数:週3回以上

というような指針を持つと、YouTubeチャンネルをオーガニック成長させるための明確な基準となります。

こうした目標を設定することで、視聴者に長く観られて、高い評価をつけたくなる動画を作ること=動画の品質アップに集中できるはずで、とても本質的だと思います。チャンネル運営者は、純粋に「視聴者に有意義な動画」を作ることに目を向けてほしいということを、YouTubeはアルゴリズムを通じて暗にメッセージングしているかのようです。

余談ですが、演者が私の解説系YouTuberであまりにも再生回数が伸びなかったときに、Google広告を回してみたこともありますが、動画の「満足度」が低い状態で、広告経由で無理に人を呼んでしまうと、健全にチャンネル成長ができないので広告利用はおすすめしません。そればかりか、エンゲージの低いチャンネル登録者が増えてしまうと、どんなにいい動画を出しても、「平均再生率」や「高評価率」が上がりづらくなり、取り返しがつかない状態に追い込まれたりもするので要注意です。


『合格ライン』の具体例
20万回再生されたこの動画の場合、

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「平均再生率」は当初45%前後(13分動画)、高評価率は2.0%でした。これは当時、私の他の動画と比べるとかなり高いスタートでしたが、いま振り返ると、よく『合格ライン』に達したなぁ、と思える数値です。おそらく、視聴者の興味が高まっている割には、同じようなテーマの競合動画が少なかったことも幸いして、比較的低い「平均再生率」「高評価率」でも『合格ライン』に達したとみなされたと思われます。

そこから日を追うごとに毎日のように「ジュース」の振り分けが増えていきます。

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上記は、トラフィックソース別に見た視聴回数のグラフです。グラフの左側が、動画公開日の2020年3月14日です。最初はチャンネルの登録者もほとんどいないこともあって、のちに20万回再生されるこの動画も、最初はほぼ視聴されていません。しかし、画像真ん中あたりの3月下旬あたりから、「ブラウジング機能(おすすめ)」や「関連動画」経由の視聴がジワジワ増えていき、日を追うごとに、各舞台で加速度的に視聴回数が増えていきました。トラフィックソース別に見ると、「検索」から「関連動画」「ブラウジング機能(おすすめ)」と、「ジュース」がより多く獲得できる表舞台へと変化していったのです。

舞台が変わると視聴者のセグメントがゆるむ(=そのテーマに興味が薄い視聴者も混ざる)ので、「満足度」は下降していきます。徐々に「平均再生率」が下がり、40%ほどとなりました。

エンタメ系チャンネルの具体例も見ていきましょう。

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開設後6回目に投稿したこの動画は、30万回再生近くのヒットとなっています。この無名チャンネルでは1回目の動画投稿から、1万回再生を超えるヒットを連発していることもあり、グラフ左側の投稿直後から「検索」や「ブラウジング機能(おすすめ)」がやや高い数値から始まっています。投稿から2週を経過したあたりから、「ブラウジング機能(おすすめ)」が右肩上がりに伸び、それにつられる形で、「関連動画」も一気にスパイクしました。約3週間かけて、ジワジワと「満足度」が評価されていって、『合格ライン』を満たしたタイミングで、インプレッションや再生回数が増えていった、わかりやすい例のひとつです。

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過去投稿してきた10本中10本が1万回再生を超えていて、チャンネル登録者と比べても、動画の再生回数は常に5-10倍ほど上回っていて、エンゲージの高いチャンネルといえます。動画の分数が少ないこともありますが、「平均再生率」はご覧の通り、約50%〜100%近くと、ほぼすべての動画が「満足度」が高いレベルに仕上がっています。まだ動画投稿数は10本ほどですが、無名からのスタートでも、いまも毎日一定量の「ジュース」が流し込まれて、オーガニック成長をし続けているチャンネルとなっています。

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上図は、このエンタメ系チャンネルで初めて投稿した動画が、どのように視聴回数を伸ばしていったかを示したグラフになります。SNS自体初投稿なので、チャンネル登録者は0人で、既存ファンもいません。また、ノイズが少ない状態なので、分析にはうってつけの条件です。グラフの左側、投稿直後はYouTube内のキーワード検索経由の割合が多い時期がしばらく続きます。その後、時間経過とともに動画が評価されて「ブラウジング機能(おすすめ)」「関連動画」からの「ジュース」が流れてきていることがわかると思います。特に、青い線の「関連動画」は、動画を投稿してから3週間後からジワジワと伸びていきました。

視聴者にとって「満足度」の高い動画を作れば、YouTubeのアルゴリズムによって、動画が評価されて、ジワジワと再生回数が伸びていくのです。


2. 「平均再生率」を高めるには

ここまで書いてきたのように、動画の再生数を伸ばすには、視聴者の満足度=「平均再生率」や「高評価率」を高めることが大事です。

「平均再生率」を高める方法のひとつは、「平均再生率」が下がる箇所を改善することが効果的です。最初から満足度の高い動画を作れる一部の天才やタレントは除いて、チャンネルを作りたての多くのYouTuberに当てはまると思います。

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具体例を示していきます。私がこれまで作ってきた動画の中で、「平均再生率」が上下しているシーンを振り返って、「動画内にこういうシーンがあると平均再生率が上がる・下がる」項目をまとめてみました。

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『パジちゃんねる』は、45 - 65歳の方に支持されている、ちょっとレアなチャンネルなので、ここでの改善ポイントがそのまま他のチャンネルに通用するかはわかりません。ただ、投稿動画がたまってきたら、何が良くて何が悪かったのかをYouTube Studioを活用して「秒単位」で振り返ることで、次からの「平均再生率」を高めることができるようになります。

【維持率が下がっていたシーン(抜粋)】
・本題と関係のない自己紹介
・英語で話す
・動画が終了する雰囲気を出す
・言い間違え、話が詰まる(1秒ほどの間)
・説明がたどたどしい

【維持率が上向き/維持できていたシーン(抜粋)】
・本題のキーワードが出てくる
・問いかけや共感を覚えそうな話
・本題のテーマに関わる自己紹介
・本題に関連した「おまけ(One more thing)」の説明
・「とっておき」など期待感を上げる言葉

動画のテーマごとに改善ポイントはかなり変わってくるかもしれませんが、共通する部分があったら活用してみてください。

「平均再生率」を高めるもうひとつの工夫は、「視聴者の興味」と「動画の外見」と「動画の本題」をできるだけそろえることです。試行錯誤を繰り返すうちに、私のチャンネルでは再生から1分後の「平均再生率」が、5%ほど改善されました。

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具体的には、

視聴者の興味:検索キーワード、関連動画、再生リスト
動画の外見:サムネイル、動画タイトル、タグ、概要欄
動画の本題:動画の内容

などのテーマをそろえると、「平均再生率」をキープしやすくなります。

また、テーマを広げすぎず、最適な範囲まで絞り込むことで、クリックしてくれた視聴者の期待と違った動画とならずに「満足度」を高めることができます。例えば、「ビデオ会議ソフト『Zoom』の解説動画」なのに、「リモートワーク」や「働き方改革」といった主語の大きいテーマにまで、サムネイルやタイトルを広げたりしないということです。

テーマごとに「ジュース」の量は決まっているので、ニッチなテーマで動画を作っていくと、より大量の「ジュース」があふれているテーマまで、「動画の外見」を広げたくなるのは人の常です。私も何度も同じ過ちを犯してきました。やっかいなのは、サムネイル画像にしても、動画タイトルにしても、タグにしても、「動画の外見」はチャンネル運営者の考えひとつで、適当に広げることができてしまうこと。とにかく欲張りすぎないことが大切です。


3. 「高評価率」を高めるには

続いて、「(1再生あたりの)高評価率」についてです。『ジュース理論』に基づくと、動画の再生に対して「高評価率」が、動画のインプレッション数や再生数に良い影響があります。

下記の表をご覧ください。

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『パジちゃんねる』の場合、「高評価率」はだいたい2.5%〜6.0%の範囲で収まっています。テーマによってはかなりバラツキがあると思われますが、同じテーマの動画の中で、「高評価率」が高いほど、競合する動画に比べてより多くの「ジュース」を流し込んでくれます。

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データからは、「高評価率」は「平均再生率」が高いほど、良い影響があることが分かります。この結果は、どのような動画を投稿すれば再生回数を伸ばせるかにひとつのシンプルな答えを与えてくれます。つまり、動画の再生回数を伸ばすには、「高評価率」にも好影響を与える「平均再生率」がとても大事ということです。


4. 最適な動画サムネイルとは

YouTubeチャンネルを始めると、気になってくるのが、「動画のサムネイル」と「クリック率/再生数」の関係です。私も気になったので、動画サムネイルを統一の背景画像にして、中身の文字だけを変更することで、どんな変化があるかを研究してみました。

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このデータから分かるのは、サムネイルのクリック率が高いからといって、必ずしも再生数が伸びるわけではないということです。また、動画のタイトルやサムネイルにはこのような傾向があるように見受けられました。

・文字だけ変えてもクリック率は3%〜6%程度幅がある(=キャッチコピーの力は強い)
・再生数が伸びると(セグメントがゆるむため)クリック率が下がる可能性あり
・トレンドのキーワードが入るとクリック率が高い
・専門的なタイトルになりすぎるとクリック率が極端に低くなる
・YouTube内検索のサジェストキーワードと一致するとクリック率が高い
・画像文字が長くても短くてもクリック率が高いことがある
・画像の文字サイズはクリック率にあまり影響していない

もうひとつのデータを紹介します。

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解説動画をメインテーマにしている『パジちゃんねる』では、平均クリック率は3.3%ほどですが、エンタメ系チャンネルでは12.7%という段違いのクリック率の差が出ています。このことから、仮に、チャンネルのクリック率が8%だから良い/悪いという判断をするのは早計であることが分かります。動画のテーマごとに、合格ラインが違う可能性があるからです。あくまで、そのテーマにおけるクリック率の合格ラインに近づくために、まずは自分のチャンネルにおいて同じテーマでも創意工夫をこらすことで、クリック率が高まるかを繰り返し改善していくことが大切です。

動画のサムネイルや動画のタイトルは、1本の動画で1つしかセットできません。ただ、動画投稿後にも編集が可能で、過去動画と比べて数字が思わしくない場合、「やり直し」は可能です。私はこれを復活の呪文『ザオラル』と呼んでいます。

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例えば、上表のようにサムネイルのクリック率を舞台別に集計して、平均よりも悪いサムネイルや動画タイトルやタグの修正を行うことで、適切な視聴者のセグメントにターゲットし直せます。こうした修正は、1本の動画を仕上げる労力に比べれば簡単なので、動画のポテンシャルが発揮できていない時は、『ザオラル』を唱えるのです。

ちなみに、サムネイルを修正・改善するときに念頭に入れておきたいことがあります。

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実は、上記のように舞台毎にサムネイルの表示サイズに特徴が違うのです。シェアが大きい「スマホ/パソコン」「ブラウジング機能/関連動画」のそれぞれで、どんなサイズでサムネイルが表示されているかを見て取れます。特に、パソコンではサムネイル画像はかなり小さく表示されてしまう点は要注意です。


過去動画を復活『ザオラル』の実践例
YouTubeで動画を投稿したあとは、その動画が持っているポテンシャル通りに再生回数が伸びていくことができれば理想です。しかしながら、実際には期待したほど再生回数が伸びないことがほとんどです。

YouTubeでは動画を投稿すると、「動画の中身」はあとから編集カット以外の変更はできません。ただし、投稿した「動画の外見」については編集が行えます。この機能を活用することで、過去に投稿した動画でも本来のポテンシャルを取り戻す可能性があります。具体的には「サムネイル」「タイトル」「タグ」を編集するのです。

そんなことが本当にできるのか、実際のデータが取れたので共有します。

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こちらのグラフは、「YouTube Studio」で複数の動画をグループ化して、サムネイルやタイトルやタグを編集した前後の数値を取ったものです。投稿日からはすでに1ヶ月以上経過して動画になり、『ザオラル』前の1ヶ月は毎日横ばいからやや微減という複数の動画が、『ザオラル』直後、クリック率は2.1%から6.7%と大幅に改善したのです。同様に平均再生率も37.4%から48.1%に向上するという効果が見られました。

動画のテーマにもよるとは思いますが、編集すべきポイントは、「キャッチコピーの改善」「写真の撮り直し」「(テーマが広がりすぎている動画の)ターゲットの絞り込み」などです。編集のビフォアアフターはこちらです。

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「YouTubeはサムネイルやタイトルがすべて」という説もよく聞くのですが、上記の結果から、たしかにサムネイルやタイトル次第で、『ジュース理論』でもっとも大事な「平均再生率」まで改善されてしまうとしたら、「動画の中身」にあわせて「動画の外見」を磨くことも有効な一手なのかもしれません。


5. 曜日によって再生数は変化するか

ほんの少しでも、「平均再生率」を上げたいと考えた時に、動画を投稿するタイミングは気になるところです。YouTube Studioに表示されているこちらのアナウンスをご覧ください。

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公式的に「公開する時刻が動画の長期的なパフォーマンスに直接影響するかどうかはわかっていません」という文言がサラッと書かれています。私も、肌感では、長期的に動画が伸びていく時に、どの曜日のどの時間帯に投稿したかは、最終的にはあまり関係がない気もします。ただ、”短期的なパフォーマンス”には影響があるとも言え、それが長期的なパフォーマンスにも影響を及ぼす可能性はありえます。例えば、投稿する曜日によって「平均再生率」が変わるとしたら、気合をいれた動画ほど有利な曜日に投稿したくなります。そこで、曜日別に分析してみました。このデータはあくまで参考程度ですが、『パジちゃんねる』の40〜60代の行動が浮き彫りになっています。

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「再生時間」とエンゲージをあらわす「高評価率」を抜き出してグラフにするとこんな感じです。

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週のはじめの月曜日・火曜日はおそらく仕事中心に活動をしていることもあり、YouTubeへのエンゲージは週別に見たときには高くありません。一方で木曜日・金曜日でいうと、金曜日よりも木曜日のほうがYouTubeへのエンゲージが高く、これは、金曜日は次の日が休みということもあり、(コロナ禍という特殊な状況でもありますが)おでかけ・飲み会・外食など、自宅での時間が逆に減っていることを示しています。そして、金曜日夜よりも土曜日夜がもっともYouTubeへのエンゲージが高く、日曜日は休日にも関わらず「再生時間」が他の曜日よりも低く出ていました。これはおそらく翌日・月曜日の平日スタートに備えて睡眠時間やその他準備などで時間を多くは取れていないのでは、と想像します。

もし、動画を投稿した直後の満足度が、最終的な視聴回数まで影響があるとしたら、例えば、ヒットしそうな動画を投稿する場合、視聴者がより長い時間見てくれる土曜日に投稿するなど、工夫ができると思います。

また、曜日によってこれだけ行動が変わってくるのであれば、全国的に「雨の日の夜」や「三連休」は、動画を投稿するタイミングとしては最適、ということも言えるかもしれません。

いずれにしても、その動画のテーマを好む視聴者が、YouTubeにアクセスしている時間に投稿することで、いち早くその動画のポテンシャルを試すことができます。こうしたデータを見つつ、チャンネルを見てくれる視聴者の行動を想像しながらチャンネル運用を行うことで、より視聴者の求めるタイミングをつかめて、結果として「満足度」を高めやすくなります。


6. 収益性を高めるには

みんな気になる、「YouTubeの収益」について分析していきます。ここでは協力してもらっている匿名チャンネルからデータを提供いただき、分析をしてみました。

YouTube広告収益について、前提として覚えておいたほうがいいのは、8分を超える動画の場合、「動画の途中」に広告をはさめるような仕様になっていることです。動画の時間が長いほど、多くの広告を入れられるので、直感的には動画自体の時間や視聴者の再生時間が長いほど、1視聴あたりの収益は高くなる、と考えられます。表にまとめたのがこちらです。「ぶどう」は『ジュース理論』にそろえて独自に作った、「広告収益」を意味するワードです。

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続いて「ぶどう」に影響を与える項目を調べてみました。

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動画のテーマによっても違いがありそうなのであくまで傾向になりますが、

・視聴回数
・総再生時間
・インプレッション数
・高評価数
・動画の長さ
・平均視聴時間(秒)

などの数値が高いと「ぶどう」の収穫量が高まるようです。ただ、ここまでは検証するまでもなく想定内の結果かと思います。

次の表は、1再生あたりで獲得できる「ぶどう」で同じように相関関係を導いたものです。

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こちらは1再生あたりでデータを揃えているので、「ぶどうの実の大きさ(=単価)」への影響を浮き彫りにできます。

結果をシンプルに書くと、「平均視聴時間(秒)」と「動画の長さ」は「ぶどうの実の大きさ(=単価)」に影響を与えることが確認できました。例えば、動画の長さが10分の場合、「平均再生率」が60%あれば、平均で6分の再生時間となります。冒頭(直後0分)と中盤(5分後)に広告が2回挟まることで、1再生あたりの「ふどう」の獲得という意味では、丸々10分動画を見られなくても、広告は2回見られているというカウントになるため、こうした影響を与える可能性があると思われます。

一方で、『ジュース理論』で大事な要素である、「平均再生率」や「(1再生あたり)高評価率」などは「ぶどうの実の大きさ(=単価)」には影響がなさそうでした。この結果に基づくと、再生数を伸ばしたい場合と、収益化を最大化したい場合とで、目指す目標が変わってくる可能性があるということです。


以上、長くなりましたが、YouTuberとして、この1年で行ってきた分析や検証のまとめを書いてみました。なにかの参考になりましたら幸いです。また、私の本業でもあるアニメなどコンテンツ領域でYouTubeチャンネルの開設を検討している方や、すでにチャンネル運営されているクリエイター様や企業様がいらっしゃいましたら、無料で相談に乗りますので、Twitterなどでお気軽にお声がけください

 

7. おまけ:解説系YouTuberのひとりごと

ここからは解説系YouTuberのひとりごとです。

もともと私は、個人開発者としてスタートアップ界隈に足を踏み入れた当初、はじめて作ったWebサービスはYouTubeのマッシュアップでした。当時、日本国内のランキングさえなかったYouTubeの面白い動画を発見できるWebサービスで、月間300万PVほど集まって、色々なメディアでも紹介されました。その時は純粋に、ネット上の暇つぶしとして、動画はやっぱり強いな、くらいの認識で、だんだん盛り上がってくるだろうけど、いまのように『世界中のテレビ局を取りまとめたような存在』になるまでには、もっと時間がかかるのだろうなと思っていました。

2020年になってまさか自分が演者として、YouTubeで情報発信しているとは思いしませんでした。なぜ、私がYouTuberをやろうと思ったのか、つらつらと書いてみたいと思います。


私がYouTuberになった理由
正直に書くと、私は2018年くらいまでは、YouTuberに対しては”色モノ”ととらえていました。VTuberが流行り出し、だんだんとテレビタレントもYouTubeを活用していくんだろうなぁくらいにゆるく考えていたのです。とても近い場所にいたのに、いま考えると何も分かっていなかったのです。

その後、2019年くらいから世間の見方が徐々に変わってきて、2020年のウィズコロナでテレビとYouTubeの立場が変わってきて、これからYouTubeが世界に与える影響をもっと真剣に考えるべきなんだと思いました。テレビと比べても最高の広告場所となっていったからです。今までテレビに流れていたお金が、YouTubeと動画配信者にダイレクトに流れるようになると、明らかに世間からの評判がポジティブに変わってきたのです。

本業のエンタメビジネスにおいても、YouTubeを活用することで作品の生まれ方に変化の兆しがあります。YouTubeで一体いま何が起こっているのか、それは「好き勝手に生きているYouTuber」と、斜めから見ているだけではわからないことがきっとあるはずと、覚悟を決めて身を投じてみました。

シンプルに書けば、YouTubeをはじめたキッカケは、こうした時代の変化にしがみついていくためです。動画で言えば、ステイホームで視聴時間は大幅に伸びている上に、ここに5Gという追い風がこれからやってきます。変化の速度は、毎年のように早まっていて、あっというまに新しいテクノロジーやサービスが塗り替えていきます。そうなると、時代時代に求められるサービスの価値を生み出すスキルも、これまでになくすごい勢いで変化してしまうため、”スキルの陳腐化”がこれまでよりも早まっていると感じます。

仕事も人生もその本質は、「社会のだれかに役立つこと」だと考えます。その役立つためのサービスがテクノロジーによって劇的に変化してしまうため、これまで必要とされていたスキルが陳腐化し、新しいスキルがどんどん求められる時代に変化しています。自動車で移動する時代に、乗馬スキルは運転スキルほどには求められなくなります。

最近だと、どのビジネス領域においても動画が関連してきていて、動画を知らずにビジネスを語るな、となってしまう予感をヒシヒシと感じるのです。動画配信の体験や実績がないと、ネットサービスを作る人なのにプログラミングを知らないのと同じくらいまずいことかもと、危機感を持つようになりました。


YouTuberピラミッドと流行のテーマ
そんな期待が高まり続けるYouTubeにも、実際に演者として参加してみると、少しモヤモヤとする部分が分かってきています。それはYouTubeのアルゴリズムが優れすぎていることで、YouTube内で流行るテーマがトップYouTuberを筆頭に似たようなものばかりになってしまうことと、ネガティブ(含過激)テーマが再生回数が伸びやすい構造になっていることです。

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上図は、YouTubeのコミュニティで生まれるトレンドテーマの仕組みを図解したものです。トップYouTuber中心に「流行のテーマ」が定まると、真に実力のあるトップYouTuberは「ポジティブ」「ネガティブ」の動画のどちらでも再生されるのですが、YouTuberの下位にいくほど、より再生回数が稼げる「ネガティブ動画」の再生が回りやすく、YouTube全体がネガティブな動画が蔓延しやすいのです。

また、YouTubeの視聴者はスマホ視聴によって「個人のテレビ」となったため、より「ドロドロ」したものを追い求める傾向があります。コロナ禍や不景気もあり、テレビのワイドショーと同じように世相を反映して、視聴者は本能的に「ネガティブ」を欲しているのかもしれません。

これらの課題を解決するには、演者としてはスキルを磨き、ファンをしっかりつけることです。また、景気が明るくなり、コロナ禍が収束し、世界が明るさをとりもどしたりすることでも、変化が出てくるのではと思います。


今後YouTubeはどうなるのか
社会が発達してきて、以前よりも人々は余暇に充てられる時間が増えています。特に人々に楽しみ(愉しみ)を提供するエンターテインメントは、人々の可処分時間の多くを占めるようになりました。その代表であったテレビ・コンテンツは、ネット化によって、YouTubeやNetflixなどのコンテンツプラットフォームに可処分時間を奪われてきていて、よりセグメント化されパーソナライズされた、その個人に対して深くエンゲージされるコンテンツへ簡単にアクセスできるようになりました。

リビングでチャンネルの奪い合いをするまでもなく、コンテンツのほうから人々のほうへすり寄ってくれるような感覚です。

そういった人々に楽しみを与える可処分時間で考えると、ゲーム、漫画、友だちや恋人とのお喋りやデート、映画、遊園地、旅行、カラオケ、サウナ・温泉、ゴルフ、フットサルなど、リアルでフィジカルなものも、コンテンツメーカーからは競合であり、人々が使うあらゆる時間の中で、コンテンツ同士の競争が行われています。さらには、SNSから生まれる近しい人の近況やつぶやき、素人面白動画など、プロフェッショナル的な面白さではなくても、声を出して笑える、楽しめる、というコンテンツが無限に増え続けているのが現代なのかなと思います。

YouTuberのチャンネルで、大人が観ててもまったく面白さが分からないけど、なぜか子供はゲラゲラ笑っている、という家庭はけっこう多いと思います。この現象は、YouTuberと視聴者との”心の距離が近い”ことに起因していると考えられます。お笑いを例に考えると、学校の友だちとの会話で爆笑する時、それはプロの芸人よりも芸が凄いから笑うのではなく、その友だちの人となりや文脈を深く理解しているから、芸としてたいして面白くなくても、心理的ハードルが低く、心から共感して笑えるのです。

YouTuberは画面越しではあるものの、手に届かない芸能人ではなく、もはや毎日登校(投稿)して出会う友だちのように心の距離が近いのです。芸としての完成度はそこまで高くなくても、笑いや喜怒哀楽やコンテンツの満足度という意味では、総合的に勝ってしまうということが起こっているのではないかと思います。コンテンツの満足度を「面積」で考えると、芸の深さではかなわなくても、心の距離感をかけ合わせると勝ってしまう感じです。

いままでは、特別な才能と容姿を持った「国民的◯◯」といった一部の芸能人とテレビだけだったところから、毎日投稿・編集の努力次第では個人にも開放されたというのが、いまのYouTubeを活用したコンテンツ発信なのでは、と思うのです。特権だった情報発信力が、”民主化された”イメージでしょうか。

そうした”あらゆるコンテンツ”を横に並べたときに、『時間』だけは等しく平等で、同じ1分でもどれだけ「楽しめたか」の濃さは、リッチコンテンツになればなるほど情報量を詰め込みやすく有利になります。私の持論で、「コンテンツの満足度」とは喜怒哀楽のギャップによって生まれると考えていますが、このギャップは文字から画像、画像から動画と、表現がリッチになるほど情報量が増えていき、喜怒哀楽のギャップ=「コンテンツの満足度」がより高まります。

この先の未来も、5Gが来て、VR/ARのような仮想現実やホログラムのテクノロジーが到来しても、それはすべて「動画」の延長線上の表現であることを考えると、その基礎を作っているYouTubeの未来が楽しみでなりません。

最後まで読んでいただきありがとうございます。バイバイバーイのバイ!

 

 

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シリコンバレーで起業、日本が誇るオタク文化を世界に発信するTokyo Otaku Mode共同創業者。Facebookで海外2,000万人メディア、自社一気通貫で越境ECなどの事業創造を行なっています

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