

個人向け国債を今購入することは「堅実な資産運用」として注目を集めていますが、一方で「絶対に買ってはいけない」とする専門家の意見や、その理由も根強く語られています。以下では、最新の専門家の見解や利回りの動向、そして「やめとけ」と言われる背景や国債選びのポイントについて解説します。
2025年現在、日銀の金融政策転換や市場金利上昇の影響で個人向け国債の金利は17年ぶりの高水準となり、変動10年型・固定5年型がいずれも年1%近くまで上昇しています。このため「過去の低金利時代に比べれば、比較的魅力的な水準」と評価する専門家が多いのも事実です。国債は満期まで保有すれば元本保証があり、信頼度の高い日本政府が発行するという大きな安心感があります。
たとえば定期預金よりも金利が高く、万が一の金融機関破綻時に預金保険の上限を越える資産の受け皿にもなり得る点で、「安全性重視の資産置き場」として選ぶ個人も増えています。また1万円からと少額購入が可能であり、資産運用の“入口”商品としても推奨されています。
一見堅実に見える個人向け国債ですが、専門家の間では「買うべきでない」と指摘される理由も少なくありません。その論拠は主に以下に集約されます。
個人向け国債は元本保証が特徴ですが、その分利回りは極めて低く、株式やリスク資産と比べてリターンは年1%前後にとどまります。2025年時点で金利1%前後とはいえ、少し前まで0.05%と“ほとんどゼロ”と言ってよい水準が続いていました。
また変動金利型(10年満期)は半年ごとに見直されますが、市場金利が速く動いた場合でも反映にタイムラグができ「すぐに上昇分が反映されない」リスクも指摘されています。
とくに懸念されるのが「インフレリスク」です。もし今後の物価上昇(インフレ)が進み、たとえば2%のインフレ率が続いた場合、1%台の金利では実質的に「資産の目減り」に直結します。“お金の価値”が下がる中では事実上マイナス運用になるのです。この点は一部の専門家が「絶対に買ってはいけない」とまで強く否定する大きな論点だと言えるでしょう。
固定金利型の国債は特にインフレ局面で脆弱となるため、「長期的なインフレヘッジには不向き」とされています。
国債は原則1年間は中途換金ができず、1年以上経過しても途中解約時のペナルティ(利子分の一部返還)が発生します。そのため急な出費や予定変更が生じた時、すぐに現金化することが難しい。生命保険の解約返戻金と同様「柔軟な運用には向かない」との声が根強いのはこのためです。
国債は一度購入してしまうと「途中で大きな資産増を期待できない」「より高利回りな商品が現れても鞍替えしにくい」という機会損失リスクも挙げられます。また投資を楽しみたい人には「退屈な資産運用」と感じやすく、資産を“寝かせておく”だけという見方も否めません。
日本の長期債務残高が世界最大級である点から「遠い将来のデフォルトリスク」や“国そのものの信用リスク”を指摘する専門家もごく一部に存在します。しかし満期まで保有した場合、現状では元本割れや突然の紙くず化リスクは極限まで低いと考えられています。
これらの特徴から、個人向け国債が「今買っても大丈夫な人」と「絶対にやめておくべき人」には明確な違いが出ます。
資産全体の一部を「安全に預けておく」場所としたい場合
必要資金まで時間的余裕があり、1年以上引き出し予定がない余剰資金を使う場合
株式や投資信託などリスクが取れない/リスクを避けて運用したい場合
預金保険のカバーを超える資産の安全置き場を求めている場合
つまり、「リスク回避・守りの資産運用」を重視する方には今でも一定の選択肢となります。
短期間で現金化する可能性があり資金の流動性を重視したい場合
高リターン資産(株式・不動産等)への投資を通して資産増加を目指したい場合
今後のインフレ加速を強く懸念している場合
途中で金利が大幅上昇した時の機会損失(取り逃し)を避けたい場合
つまり、積極的な資産形成や短期的な運用ニーズを持つ場合は「絶対に国債を主軸にすべきではない」と警鐘を鳴らす専門家が多いのです。
2025年になり、個人向け国債の金利は17年ぶりの“高水準”で推移しています。例えば変動10年の年1.0%、固定5年で同じく1.0%前後と、過去の超低金利期と比べれば大きく上昇しています。ある専門家は「今後の更なる金利上昇局面を期待する場合は様子見も一手だが、低リスク中核資産として安定を求めるなら今の金利水準は買い時」と評価しています。
一方で、将来的な政策修正や更なる金利上昇が起これば、いま固定金利型を買うことで「その後より有利な国債が登場した際に機会損失になる」と警告する声もあります。
専門家は共通して、「国債は他のリスク商品と組み合わせて“分散投資”の一翼を担わせるのが賢明」と助言しています。
インフレ時代には全資産を国債に集中させない
必ず「余裕資金」で購入し、急な資金ニーズには預金や流動性資産で対応
固定と変動、満期年限の違いもしっかり比較し、最終的な目的に適った型を選択
国債は安全性・元本保証が最大の持ち味ですが、全資産を国債に振ることはインフレ局面や金利急騰時に大きな損失(機会損失)に繋がるためバランス感覚が重要です。”絶対に買ってはいけない”と主張される方は、そうした資産形成の中長期的な効率や柔軟性に厳しく目を光らせているのです。
個人向け国債は元本保証・少額・高流動性といった「安全投資」の典型ですが、金利上昇時代になってもインフレリスクや流動性制約、機会損失といったハードルは依然残っています。短期間で現金化の必要がある人や、強い資産形成への意欲がある方には推奨されません。一方、余裕資金で危険なく着実に守りの運用をしたい場合は、一部に組み込むのは“今”でも合理的な戦略だと言えるでしょう。
国債をめぐる「絶対に買ってはいけない」という声の現実的な背景は、利回りの低さと流動性の弱点、そしてインフレ局面での実質目減りリスクなど――保有する資産の目的と割合を冷静に見極め、目的に応じた投資判断を下す必要があるのです。











