旅館の料理が食べきれないほど出て、廃棄前提なのかとのツイートがバズりました。食べきれないほどの料理が出るということは、自分が食べない料理まで値段に含まれることになります。それは堅実な消費者感覚からは無駄な支出になります。飽食を贅沢とする感覚は不健全です。
問題のツイートは2020年8月10日の以下内容です。「Go Toでちょっと高い旅館に泊まったら、大失敗。出てきた夕食がこれ。さらに天麩羅とごはん、お吸い物。多すぎて到底食べきれない。シニア層がメインターゲットのはずなので、つまり廃棄前提(としか思えないし、実際にかなりの廃棄が出ているはず)。不味くはないけど、体験価値としては……」
このツイートはフードロス削減という社会課題にも合致します。SDGs; Sustainable Development Goalsのターゲット12.3は「By 2030, halve per capita global food waste at the retail and consumer levels and reduce food losses along production and supply chains, including post-harvest losses.」(2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる)と定めます。
ところが、Twitterの反応はツイート主を批判する見解が目立ちました。ツイート主を「廃棄前提おじさん」と揶揄するツイートもあります。ツイート主に対抗して「#旅館の料理」のハッシュタグで食べきれないほどの旅館の料理の写真を投稿して贅沢さをアピールする動きもありました。サステナブルな価値観が当たり前になったと感じている向きには意外でした。
私の世界はサステナブルな価値観にどっぷりと浸かっています。しかし、日本社会を総体で見ると、21世紀的なサステナブルな価値観と、20世紀的な飽食の時代を是とする価値観が二極分化しているのでしょう。二極分化しているにもかかわらず、批判が目立つ理由として、ツイート主のGo To Travelキャンペーン利用があります。
Go To Travelは新型コロナウイルス感染症(COVID-19; coronavirus disease 2019)拡大の第2波が来ている時期の実施が批判されました。状況の変化を考慮せず、自分達が立てた計画に固執し、目の前の仕事を片付けることしか考えない日本の公務員の悪癖です。サステナブルな消費者としてはGo To Travel利用者を特に擁護したいとはならないでしょう。これが批判ばかりが目立つ理由です。
Go To Travelは時期の問題や中抜き利権の批判があり、評判は悪いです。これらの点は大きな問題です。一方でGo To Travelの仕組み自体は消費者感覚から支持できる点があります。事業者に給付せず、消費者の消費に対して税金を出す点です。事業者は消費者に選ばれなければ収入になりません。消費者志向のサービスが求められます。
持続化給付金で事業者がバブリーに振る舞うことは納税者として不愉快です(林田力「不動産業界のコロナ倒産が始まるか」ALIS 2020年7月30日)。
杉並区は補正予算で河北総合病院、荻窪病院、佼成病院、東京衛生アドベンチスト病院に補助金を出しましたが、減収分を補助する仕組みのために経営のモラルハザードを引き起こす危険があります(林田力「杉並区が新型コロナウイルス対策で補正予算案」ALIS 2020年4月19日)。
これらと比べるとサステナブルな消費者はGo To Travelを毛嫌いするものではなくなります。
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