小坂泰之『放課後ていぼう日誌』(秋田書店)は、女子高生の釣り漫画です。『月刊ヤングチャンピオン烈』連載作品。海沿いの田舎町にある海野高校の女子高生4人組(鶴木陽渚、 帆高夏海、黒岩悠希、大野真)が部活を通じて釣りの楽しさや海の魅力を満喫します。
主人公の陽渚は生き物が苦手なインドア派です。都会から漁村に引っ越し、堤防を散歩中に悠希と出会います。それをきっかけに謎の「ていぼう部」に入部させられ、釣りを始めることになりました。女子高生達は個性的で、ステレオタイプなスイーツ(笑)ではありません。
2020年4月からTVアニメを放送開始しました。主要キャラの声優は鶴木(高尾奏音)、 帆高(川井田夏海)、黒岩(篠原侑)、大野(明坂聡美)です。ところが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19; coronavirus disease 2019)拡大の影響で第4話以降は放送延期になりました。
部の名称は釣り部ではなく「ていぼう部」です。堤防釣りは釣りの入門です。女子高生の部活動という点でも船釣りではなく、堤防釣りに現実味があります。潮干狩りのように釣り以外の海辺の活動もあります。
主人公が釣りに不向きなインドア派という設定に面白さがあります。スポーツにしても何にしても何かの活動を描く漫画の主人公は大抵初心者から始まります。この点で『放課後ていぼう日誌』もセオリー通りです。
一方で多くの作品は何かに出会った主人公が、それに熱中していく展開になります。これに対して『放課後ていぼう日誌』は『涼宮ハルヒの憂鬱』のSOS団に入れられたキョンのような展開です。ぶっ飛んだ女性キャラに振り回されるのは男性キャラに限られません。
『放課後ていぼう日誌』はタイトルや女子高生達が集まって趣味に取り組む点から、中道裕大『放課後さいころ倶楽部』(小学館)を連想します。『放課後さいころ倶楽部』もアニメ化されました。間違って『放課後ていぼう倶楽部』と言いそうになります。
『放課後さいころ倶楽部』は人付き合いという『新世紀エヴァンゲリオン』など多くのエンタメ作品で取り上げられたテーマに序盤から打ち出しています。これに比べると『放課後ていぼう日誌』は海辺の活動がメインであり、気楽に読めます。