会議の無駄は生産性を阻害する大きな要因です。会議に時間を費やせば、その分、価値を生み出す時間が減ります。組織のスピードが落ち、官僚化していきます。これはアメリカでも問題意識を持たれています。スティーヴン・G・ロゲルバーグ著、桜田直美訳『SUPER MTG スーパー・ミーティング THE SURPRISING SCIENCE OF MEETINGS』(サンマーク出版、2020年)は会議を研究した書籍です。効果的な会議の手法を紹介します。
無駄な会議の典型は長時間のダラダラ会議です。この問題を克服する会議形式にハドルミーティングがあります。ハドルミーティングは10分から15分の短時間に集中する会議です。可能ならば立って実施します。これは効果的な会議のイメージに入ります。
ブレインライティングになると会議のイメージから離れます。これは特定の議題について、意見やアイデアを黙々と書いていきます。会話の会議と異なり、発話のブロッキングが起こらないというメリットがあります。書いたものが残ることもメリットです。私の経験では会議で良いアイデアを出したが、それで満足としてしまい、アウトプットが残らない無駄な会議があります(林田力「無駄な会議」ALIS 2020年3月5日)。それを避けられます。
Amazonでは「資料の黙読」の時間を取るようにしています。ミーティングでは黙読用の資料を用意し、開始時の10分から30分は黙読時間とします。プレゼンでは見た目や話の上手さ、資料の完成度が評価に影響しがちです。黙読ならば中身だけを評価できます。
本書は一体感の醸成やメンバー間の創発的な効果、モチベーションの向上など言い古されてきた会議の効用も指摘します。しかし、効果的な会議を突き詰めると、資料を黙って読み、意見やアイデアを黙って書くことになります。最早会議と言えない形に行きつくことは面白いです。
本書のタイトルSUPER MTGは素晴らしい会議の意味でしょうが、日本語に置き換えると超会議となり、会議を超えたものになります。伝統的な会議の形式から離れることは新型コロナウイルス対策でSocial Distanceがキーワードになっている現状にマッチしています。コロナウイルス収束後も人々の生活の変化は残るでしょう。