※著者は同性婚容認派です。本記事は、「同性婚を認めるべきではない」という趣旨では有りません。
同性カップルが集団で国に対して訴訟を提起しました。同性婚であるという理由で国が婚姻届を受理しないのは憲法違反だ、という理由です。
同性婚はヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニアのほとんどの国で認められています。最近は台湾が法案を可決しました。西側諸国と価値観を共有する日本も、同性婚を近いうちに認めることになるでしょう。既に日本でも、僅差ではありますが同性婚容認派が多数派です。
さてそれでは今回の訴訟では、違憲判決が出るのでしょうか。おそらく出ると私は思っているのですが、ストレートに違憲判決を出すと、国としては非常に困ります。事務コストが増えるからではありません。同性愛者から大量の国家賠償訴訟が起こる可能性があるからです。
同性婚を認めないのは違憲だった。結婚制度を使えないことにより、社会生活上の不利益を被った。つまり国の行為が原因で損害が生じたのだから、国に賠償を求める、こういう請求が次々に出てもおかしくはないのです。
仮に、同性愛者が全人口の10%の1000万人いて、彼らのうち10%訴訟を起こしたと仮定しても、100万人が被害を訴える訴訟となります。敗訴すれば莫大な費用を払わなければなりません。一人あたり10万円の損害賠償としても、100万x 10万円 = 1000億円です。人数や請求額が上がればさらに賠償額は跳ね上がります。国としては絶対に阻止したい。これが、国が筋が悪い同性婚を認めない主張をしている理由の一つではないかと思います。
これに対しては、たとえば「国が同性婚制度を認めた後は、訴えの利益はない」という判断などが考えられますが、たとえば同性婚制度設立前にパートナーが死亡してしまい相続に支障が出た場合などに問題が出ます。
事情判決という手もあるでしょう。「国の同性婚の不許可は取り消さないが、違憲ではある」との判決をすることで、国に同性婚制度の設立に関して猶予を与えるのです。実際問題、すぐに法律を作るのは難しいので、認めるにしてもどういう形で法律を改正するのか議論する時間が必要です。
いずれの場合でも、国に莫大な額の賠償が生じないように、裁判所も配慮した判決を出すのではないかと予測されます。