私は父方の祖父が好きだ。
彼は、私がうまれる前に亡くなったから会ったことはない。
だけど好きだ。
祖父は戦争で中国に行った。何度も自分の手柄を祖母や私の両親に話していたそうだ。
けれどどうしても話したがらないこともあった。大方の予想はつくような気がする。だからそれが悲しい。
本当は、なかったのかもしれない。話したくないことは何も。だけど、何かあったのではないかと、私は何度も勘ぐってしまう。
祖父は亡くなる前、とても軽くなっていた。背丈は低かったが、35kgくらいだったらしい。
病気になる前から食べることに興味がなかった。
痩せてはいたけど腕や脚はがっしりとしていた。
ハンスベルメールの人形の写真に、俯瞰から撮った作品がある。
それを見る度に、祖父のこと思い出すと母は言っていた。
その写真に映っている人形は少女だけども、痩せてぎすぎすした印象を受ける。
亡くなる前の祖父にとても似ていると、母は言う。
私は、そうなのか、としか思えなくて他の感情や感覚がほとんど浮かばない。