“なんか考え出そうとしてるわね!”
引用元:不思議の国のアリス
多くの素晴らしいアイデアと同じように、ビットコインはどこからともなくやって来たわけではない。ビットコインは、数学、物理学、コンピュータ・サイエンス、その他の分野における多くのイノベーションと発見を利用し、組み合わせることによって可能となった。サトシが天才であることに疑いはないが、彼がその肩に立った巨人たちの存在なしに、ビットコインを発明することはできなかったであろう。
“ただ願望と希望を抱いているだけの人間は、物事の成り行きや自分の運命の形成に積極的に干渉することをしない。”
ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス
こうした巨人の一人に、サイファーパンク運動の創設者の一人であり、サイファーパンク宣言の著者でもあるエリック・ヒューズがいる。サトシがこの宣言に影響を受けていなかったとは考えにくい。この宣言では、ビットコインが可能にし利用する多くのもの、例えば直接的で私的な取引や、電子マネーと現金、匿名システム、それから暗号とデジタル署名によるプライバシーの保護について語られている。
“プライバシーはデジタル時代のオープンな社会に不可欠なものだ。 […] 我々はプライバシーを望んでいるので、取引の各当事者がその取引のために直接的に必要なことのみを知っているようにしなければならない。
[…]それゆえ、オープンな社会でのプライバシーは匿名の取引システムを必要とする。今までは、現金がそういったものの主要なシステムであった。匿名取引システムとは、秘密の取引システムではない。 […]
我々サイファーパンクは、匿名システムの構築に尽力する。我々は暗号と、匿名メール転送システム、デジタル署名、そして電子マネーを利用して個人のプライバシーを守る。
サイファーパンクはコードを書く。”
エリック・ヒューズ
サイファーパンクは希望や願望に安らぎを見出さない。彼らは積極的に物事の進行に干渉し、自身の運命を形作る。サイファーパンクはコードを書く。
こうして、真のサイファーパンクの流儀により、サトシは座ってコードを書き始めた。抽象的なアイデアを取り入れ、それが実際に動くことを世界に証明したコード。新しい経済的リアリティの種を植え付けたコード。このコードのおかげで、誰もがこの新しいシステムが実際に動いていることを確認でき、およそ10分毎にビットコインが世界に対して、まだ生きていることを証明している。
彼のイノベーションが空想を超えて現実のものとなるように、サトシはホワイトペーパーを書く前に、自身のアイデアを実装するためのコードを書いた。彼はまたリリースを永久に遅らせないようにした。結局の所、“やるべきことは常にもう一つある”のだから。(※翻訳者注1)
“私はすべての問題を解決できると確信する前に、すべてのコードを書かなくてはならなかった。そしてその後に、論文を執筆したのだ。”
サトシ・ナカモト
終わらない約束と実行が疑わしき今日のこの世界では、専用の建物での演習が切実に必要となった。慎重に考え、実際に問題解決できると確信し、そして解決策を実行せよ。我々は皆もう少しだけサイファーパンクを目指すべきだ。
ビットコインは私に、サイファー・パンクはコードを書くと教えてくれた。
(C)Gigi "21 Lessons" クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際)に基づき翻訳
翻訳者注1:“やるべきことは常にもう一つある”
翻訳者追記:サイファーパンク・マニフェストの全文訳はこちらのサイトで読めます。
いよいよ、次が最後のレッスンとなりました。