ブロックチェーンの技術やサービスの開発には、多くのスタートアップが参入していますね。
同時に、すでに世界的なICT企業もブロックチェーンの開発に積極的な姿勢を見せています。
中国ではアリババや京東など、大手イーコマース企業がすでに開発を進めていますね。
こうした動きとは少し違う角度で、中国イーコマース産業の「かつての雄」を創業した人物がブロックチェーンに参入するというニュースを目にしましたので、少し書き留めておきたいと思います。
・李国慶さんが当当を離れてブロックチェーン業界へ?
・そもそも、CRYSTOって?
・リベンジの舞台としてのブロックチェーン?
台湾の大手紙「聯合報」のニュースサイトに2019年2月20日に掲載された記事によると、書籍販売を中心としたイーコマースサイト「当当网」を創業した李国慶(李国庆)さんが、当当を離れてブロックチェーン業界に参入することを公表したということです。
(記事の写真、李国慶さんです)
李国慶さんが公開したという文章は、中国の「腾讯新闻」に掲載されています。
文章では、まず、「1999年11月に私と俞渝が中関村で創業した時、私たちは当当网が将来、中国の文化産業を変え、すべての人々の読書を変化させる会社になることを夢見ていた(1999 年11月我和俞渝在中关村创业的时候,我们梦想当当网在未来会成为一家改变中国文化产业,改变全民阅读的公司)」というフレーズから、当当网への思いと苦難、社会の変化などが語られています。
この短い一文からは、アリババや京東などに先行する「中国スタートアップの先駆け」として、アマゾンと同様に書籍のネット販売から始まった当当网の位置づけをシンプルに感じることができますね。
そのうえで、今回、自らが創業した当当网を離れることで、新たに以下の2つのことを始めたいと語られています。
ひとつは、「わたしは読書サークルを作りたい(我将创办书友会)」と述べ、文化産業の新たな形を生み出していこうと考えているようです。
もうひとつが、「ブロックチェーンの経済システムは企業に核兵器を与え、新たなインセンティブとエンパワーメントを創り出す(而区块链的经济制度给企业赋予核武器,创造出全新的激励和赋权)」という形で、ブロックチェーンの世界に参入していくとしています。
そして、この両者を結びつけることで、以下のような形を目指していくと述べられています。
コンテンツが生み出され、共有され、ユーザーとともに働き、ともに生み出し、シェアできる、知識の創作者、紹介者、消費者が一体となった知識協力グループを作り出したい。それは必ずしも大資本や創業者に依らないものである。
(让内容创建、分享和使用者共商、共建、共享,打造知识生产者、筛选者和消费者一体的知识合作社。而不必依赖大资本和创始人。)
そのうえで、このような目的を実現していくための具体的な動きとして、昨年来、李国慶さんが投資してきたブロックチェーンスタートアップである「CRYSTO」でのDApps開発に関わっていくということです。
こうした一連の流れを見ると、周到に「次の動き」が準備されていたことがうかがえますね。
今回の動きについて報じた台湾の経済紙「工商時報」の記事では、李国慶さんが以前、中国のメディアに対して以下のように語っていたことが書かれています。
グローバルな無形資産に垂直統合的パブリックチェーンを提供する企業であるCRYSTOでは「コンテンツ産業+ブロックチェーン」のプロジェクトを模索している。
(正在為全球無形資產提供垂直公鏈的企業CRYSTO中探索「內容產業+區塊鏈」項目。)
ここで採り上げられているCRYSTOについては情報が少ないのですが、公式ウェブサイトのトップページには「無形資産が価値を持ってグローバルに自由に流通することを実現する(让无形资产实现有价值的全球自由流通)」というフレーズが掲げられています。
この部分、英語版のページでは「To build a crypto global open market for all intangible assets」となっています。
具体的な事業としては、「著作権保護、コンテンツ配信、収益のフラグメントトランザクション、収益の証券化(版权确权、内容分发、权益碎片化交易、权益证券化)」を実現していくとしています。
いわば、デジタルコンテンツを合理的かつ安全・確実に収益化し、運用できるようにするプラットフォームの構築を目指しているようです。
実際に公式サイトを見ていると、書籍を中心とし、トークンを介したコンテンツプラットフォームをDAppsとしてリリースするいったようなイメージグラフィックが掲載されています。
内容だけをみると、ALISや、僕がちょこちょこ記事にしているPrimasのようなプラットフォームの構築を目指しているように見えます。
テストネットの公開は2019年第三四半期を予定しているということですから、これからどんなものが出てくるのかが楽しみです。
以下の「Forbes JAPAN」の記事にも触れられているように、当当网はアリババや京東などとは異なり、「波にうまく乗れなかった企業」として挙げられるような苦境に陥っているようです。
そうしたなかで、自ら創業した企業に見切りをつけるように当当网を飛び出すことになった李国慶さんは、次の「リベンジの舞台」としてブロックチェーンの世界に照準を合わせたように見えます。
その舞台となるCRYSTOは、まだ創業されたばかりのブロックチェーンスタートアップですが、手がけている事業はコンテンツプラットフォームという先行例のあるフィールドで、競争を経たこれからの発展が期待される分野だろうと思います。
また、そうした事業が李国慶さんの実現したいビジョンと合致したことで、両者の協働によるブースト機能が期待できるかもしれません。
中国スタートアップの先駆けとして、変化の激しい中国市場を駆け抜けてきた李国慶さんと、まだ生まれたばかりのCRYSTOがどのような製品を生み出すか…
これからの実際の動きをコツコツと追いかけていきたいと思います!