ブロックチェーンの技術・サービス開発をめぐる競争は、世界中で激しく展開されていますね。
開発競争が激しくなっていくなかで、特許を取る動きもあちこちで活発になってきています。
特許取得は自らの権利保護という目的が第一だと思いますが、そうした技術を活用していくためのステップという感じもしています。
今回は、ブロックチェーンに関する特許を台湾で取得した銀行が、新たなサービス提供を進めているということで、少し書き留めておきたいと思います。
・第一銀行がブロックチェーンプラットフォームを構築?
・銀行サービスに関するAPI公開⁉︎
・ブロックチェーンが銀行サービスを変える?
台湾の大手紙「自由時報」のニュースサイトに2019年3月19日に掲載された記事によると、台湾の大手銀行である「第一銀行」が2019年の第二四半期に「外貨現金コンソーシアムチェーンプラットフォーム(外幣現鈔聯盟鏈平台)」をリリースすることを公表したということです。
具体的には、第一銀行とその他の銀行間の外貨取引と、セキュリティ会社による現金輸送の情報を共有し、コンソーシアムチェーン参加者に正確で安全な一次情報を提供することを実現するそうです。
以下の記事に書き留めましたが、第一銀行は2019年1月にブロックチェーンのトランザクションスピードを向上させる技術に関する特許を申請しています。
特許取得はすでに済んだようで、自由時報の記事にも特許取得に続く新たなステップとして、今回のプラットフォーム構築が位置づけられています。
また、こうしたブロックチェーンに関する取り組みは、より広く「Open Banking」に向けた動きとして捉えられているようですよ。
「自由時報」の記事では、第一銀行による今回の動きは、以下のような一連の取り組みの延長線上に位置づくものだと説明されています。
第一銀行は2017年からブロックチェーン技術の開発を進め、「サプライチェーン融資ブロックチェーンプラットフォーム」のPOC実験を完成させ、2018年には「外国人労働者送金ブロックチェーンプラットフォーム」を立ち上げ、金融情報、クレジットカード、口座に関するAPIを開放し、サードパーティの接続に供する「OPEN APIプラットフォーム」を構築した
(一銀自2017年起即投入區塊鏈技術研發,完成「供應鏈融資區塊鏈平台」POC實驗,並於2018年推出「外勞匯款區塊鏈平台」之落地應用,也建妥「OPEN API平台」,開放金融資訊、信用卡、帳戶類API供第三方業者串接)
実際に、第一銀行は以下のように、開発者向けの「OPEN API平台」のサイトを公開しています。
銀行によるAPI開放の動きは特に珍しいものではなく、台湾でサービス展開している銀行でも、凱基銀行が「KGI inside」といったサービスを2017年から始めていますし、DBS星展銀行やシティバンクも早くから提供を始めています。
こうした動きがあるなかで第一銀行の取り組みが新しいのは、ブロックチェーンを活用したプラットフォームを着々と開発してきた実績のうえに、「Open Banking」の実現を目指そうとしているところだと言えます。
「自由時報」の記事の最後には、第一銀行が「顧客により簡単で、スピーディで、安心できる金融サービス体験を!(為客戶帶來更為簡單、快速和可靠的金融服務體驗!)」というゴールを目指していると書かれています。
ブロックチェーンを活用するのは、より良いユーザーエクスペリエンスの実現のためだという明確なビジョンがうかがい知れますね。
台湾のテック系ニュースサイト「iThome」の記事にもありますが、台湾の金融サービスを管轄する行政機関の金融監督管理委員会(金管會)は、各銀行が進めるOpen Bankingの方向性を尊重する姿勢を示しているようです。
僕のこれまでの記事にも書いてきましたが、台湾の行政機関はブロックチェーンも含めたフィンテックの導入に、総じて前向きな姿勢を見せています。
たとえば、以下のような記事など…
こうした環境のもと、積極的なフィンテックの開発・導入に多くの銀行が参加していて、ブロックチェーンの活用も進んでいるように見えます。
あとは実験段階から実際のサービス展開へとどのように進んでいくことができるか…という段階だと思いますが、そのなかで第一銀行の取り組みは、すでに具体的なプラットフォームを構築しているということで、一歩進んでいるように感じます。
第一銀行のような先進的な企業が引っ張っていく形で、金融サービスの変革が具体的に進んでいくかもしれません。
こうした動きをこれからも、コツコツと追いかけていきたいと思います!