この記事のなかで、「諸外国のプラスチック製品に対する規制が強まっている」ということに言及されていましたが、台湾でもこうした問題に対する意識が高まっています。
というのも、現代の生活のなかではどの地域でもそうなのですが、台湾社会も日々の生活のなかでたくさんのプラスチック製品を消費してきました。
たとえば、以下の記事で触れましたドリンクスタンドは台湾の人々の生活のなかにすっかり溶け込んでいます。
ほぼ南国の台湾で暑い夏を乗り切っていくために、ドリンクスタンドは欠かすことのできないビジネスのひとつなのですが、スタンドのドリンク(特にコールドドリンク)は今のところ、全面的にプラスチック製品を使用して提供されています。
たとえば、こんな感じ…
カップ、カップの蓋、ストロー、ストローの袋、そしてビニール袋。
あらためて見ると、プラスチック製品がフル活用されていることに気づきます。
このドリンクスタンドのドリンクのように、台湾の生活に欠かすことのできないものにプラスチック製品が多く使われている事例はたくさんあるのですが、「生活に必要だから仕方ない」では済まない状況になってきているのは台湾も同様です。
そこで、台湾の環境行政を管轄する行政院環境保護署(環保署)は、2030年までに使い捨てプラスチック製品を全廃することを目指して、段階的に対策を行っていくとアナウンスしています。
2018年2月に台湾の報道機関である「中央通訊社」の日本語ニュースサイト「フォーカス台湾」に掲載された記事には、2018年から2030年までの段階的な取り組みの詳細が報じられています。
この記事には、上に挙げたドリンクスタンドのドリンク提供に使われているプラスチック製品全廃への段階的な対応が、以下のようにまとめられています。
ストロー:2019年から店内飲食時のストロー提供禁止
カップ:2020年に容器持参者への特典強化、2025年に全面的な提供制限・有料提供
ビニール袋:2002年からスーパーなどで有料化、2018年にはドリンクスタンドも有料化の対象に、2020年には有料範囲拡大、2025年に配布制限・袋代の値上げも予定
このうち、ドリンクスタンドでのビニール袋の有料化はすでに実施されていて、上に挙げた50嵐では、写真の袋を1元で購入することになっています。
2025年に大きな動きを予定しているということで、それまでに様々な対策を考えていくという姿勢がうかがえますね。
ただ、こうした動きに台湾のドリンクをめぐる台湾特有の問題が議論になりました。
それは、日本でも徐々に認知度が上がってきた、「台湾名物タピオカドリンク(珍珠奶茶)はどうするのか?」問題です。
上の「フォーカス台湾」の記事で触れられていた2019年からの店内飲食時のストロー提供禁止ですが、以下の記事によると環保署は2019年7月からの実施を考えているようです。
タピオカミルクティーは太めのストローでタピオカを吸い込むのが特徴なのですが、ストローが使用禁止となると、どうやってタピオカを飲む(食べる)のかということがちょっとした議論になったようです。
この点については、とりあえず今回の取り組みが「店内飲食時に限る」ということで議論は収まりを見せたようですが、いずれテイクアウトにも拡大されるだろうということが予想されるので、その時にはまた議論再燃となるかもしれません。
こうした議論のなかで、個人的に興味深いなと感じたことが2点あります。
ひとつは、タピオカミルクティーをめぐる議論を報じた記事のなかで、当局の担当者が、「プラスチックに代わる素材やストローの必要性などについて業界や消費者と共に議論を深めていければ」と語ったと報じられていることです。
環境行政の担当部曲が、2030年までという長いスパンでこれからの方向性を提示したのは、目標達成に向けた取り組みを業界や消費者と連携して、社会全体で展開していくためだということが、ここからうかがえます。
実際に、台湾ではたくさん栽培されているサトウキビを使ったストローの大量生産が軌道に乗りつつあるようです。
以下の記事でも少し触れましたが、台湾の実店舗でも紙製のストローを使用しているお店が増えてきているようです。
目標を決めて社会全体で取り組むべき課題としていくというのは、今回のALISTOREの企画の趣旨とも重なる姿勢なのではないかなと思います。
また、このことと関係して、もうひとつ台湾での議論を通じて感じたのは、生活習慣と環境問題をどのように結びつけて考えるのかということです。
環境問題を考える時にはつい「100か0か」の議論になってしまいがちですが、すでに多くの人々の生活のなかに定着したものをなるべく変えずに、環境に優しいスタイルへと転換していくかということが大切なのだなと再認識しました。
それには思いのほか長い時間が必要になるわけですが、それでもそれを無駄に先延ばしせず、ある区切りを以て、少しでも良いと思える方向に対策を展開していくことが必要なのだなと感じます。
こうしたバランスのなかで葛藤を常に抱えながら、少しずつ対策を進めていくことが求められているんだろうなと思いますし、その葛藤をその社会に住む人々が、日々の生活の中で共有しながら、逃げずに、ゆっくりと考えて、動いていくことが求められているのだと思います。
自分の生活のなかでできることは小さなことかもしれませんが、社会全体で課題が共有されていれば、その小さな動きが社会全体の変化につながっていくのかなと思います。
ALISでこうした記事を書くというのも、本当に小さな小さな動きですが、ALISから始まる動きが社会全体の動きにほんの少しでもつながっていけば嬉しいですね。