(台湾・台北のCDショップ「小白兎唱片」。台湾のインディーズバンドの作品を多く扱っていますよ)
ブロックチェーンの活用事例のひとつとして、著作権保護にブロックチェーンを活用したサービス構築が進められていますね。
たとえば日本でもサービス展開している、台湾で人気の音楽ストリーミングサービスの「KKBOX」は、ブロックチェーンを活用した楽曲提供プラットフォームの「Soundscape在田」をローンチしています。
こうしたプラットフォームが整備されるのは好ましい動きですが、これを活用した作品がどれほど公表されていくかということもまた、大事なポイントになりますね。
今回は、ブロックチェーンを活用したプラットフォーム限定で新作を発表したアーティストの動きが目に留まりましたので、少し書き留めておきたいと思います。
・吳柏蒼さんがBitmarkのプラットフォームで新作を発表
・吳柏蒼さんは業界のフロントランナー?
・ブロックチェーンでしかできないことを⁉︎
台湾のテック系ニュースサイト「TechNews科技新報」が2019年2月23日に掲載した記事によると、台湾のバンド「Echo」のメインボーカルである吳柏蒼さんが、デジタルアセットの権利保護をブロックチェーン上で実現する技術を開発している「Bitmark」のシステム上で、新作の「知的所有Omniscient」を発表したそうです。
吳柏蒼さんの公式Facebookページでも、2019年2月19日付で公表されています。
記事によれば、今回の新作は200セット限定で専用ウェブサイトを通じて販売され、「Bitmarkのパブリックアセットブロックチェーン(Bitmark的公有資產區塊鏈)」にデジタルアセットとして登録されているということです。
公開された専用サイトを見てみると、2019年2月24日現在ですでに「NO MORE EDITIONS AVAILABLE.」となっています。
加えて、専用サイトを見ると「SECURED BY BITMARK.」として、「ASSET ID」が表示されていて、Bitmarkによる資産保護がなされていることが示されています。
Bitmarkについては以下の記事に書き留めましたが、ブロックチェーン技術を活用し、デジタルアセットやデジタルデータの所有権を中央集権的な形ではなく個人が管理できるようにすることを目指した技術開発をおこなっています。
ブロックチェーンを活用した技術開発を進めるスタートアップとして、上述した音楽ストリーミングサービスの「KKFARM」や、糖尿病患者のヘルスデータをブロックチェーン上に記録するプラットフォームを開発している「Health2Sync(智抗糖)」、さらには、ブロックチェーンスマホを開発・販売している「HTC」と技術提携を進めています。
Bitmarkは、ブロックチェーンを活用したサービス開発を進める台湾の著名な企業を技術的に支えるスタートアップだということがわかりますね。
今回、Bitmarkのブロックチェーンプラットフォームで新作を発表した吳柏蒼さんは、ボーカリストでありながら、冒頭に挙げた記事にも触れていますが、KKFARMの共同経営者でもあります。
こうした立場から、吳柏蒼さんは音楽作品のデジタル配信に積極的であることがうかがえますが、吳柏蒼さん自身、台湾の音楽配信を担う存在であり続けてきたようです。
たとえば、台湾のデジタル系ニュースサイトの「數位時代」は、今から7年以上前の2011年10月5日に、「吳柏蒼ー台湾で初めて、インディーズバンドオンライン販売プラットフォームを構築(吳柏蒼─打造台灣第一個獨立樂團線上販售平台)」という記事を掲載しています。
ここで紹介されているオンラインプラットフォームというのが、現在ではインディーズバンドの作品発表と、ライブチケット販売のプラットフォームとなっている「INDIEVOX」です。
INDIEVOXの公式サイトによれば、このサービスは吳柏蒼さんが2008年3月に創設したプラットフォームで、「台湾で初めてのDRM Free MP3オンラインミュージックストア(台灣第一個DRM Free MP3線上音樂商店)」と説明されています。
この新たなサービスの創設について、吳柏蒼さん自身は「數位時代」の記事で、「自分を売り込み、作品を売ることができる(可以行銷自己、又可以販售作品)」ようなプラットフォームの実現を考えていたと語ったそうです。
アーティストが自らの存在と作品を自分でコントロールできるようなプラットフォームの実現という発想は、今回のBitmarkでの作品発表にもつながる考え方だと感じます。
今回の動きは、10年以上前にオンラインミュージックストアによって実現された吳柏蒼さんの思索が、ブロックチェーンの登場によってよりアップデートされた形で実現されたと言えそうですね。
台湾では「ブロックチェーン元年(區塊鏈元年)」を迎えた2018年に、ブロックチェーンの技術やサービスの開発がいろんなところで進んできました。
そうした時期を経て、これからは開発された技術やサービスがどのような形で活用され、ユーザーが増えていくかということを試す段階に入ってきているように感じます。
今回の吳柏蒼さんの新作発表は、こうしたブロックチェーンの活用拡大をめぐる動きのひとつとして捉えることができるように思います。
また、吳柏蒼さんがこれまでに、台湾の音楽配信サービス・オンラインプラットフォームの最先端を切り開いてきたことを思えば、今回の取り組みの象徴的な意味がより強く感じられるのではないかなと感じました。
実際に、新作発表からすぐに限定数を売り切ったことからも、今回の取り組みが一定の関心を集めていることがうかがえます。
この取り組みがきっかけとなって、ブロックチェーンを活用したプラットフォームの活用が進んでいくかどうか…
これからの動きをコツコツと追いかけていきたいと思います!