(台湾は統一地方選の真っ只中。ラッピングバスにも候補者の名前と写真が躍ります。写真は一部修正済みです)
仮想通貨を法的にどう位置づけ、どのような法制度を整備していくかということは、世界各地でいろいろと模索が続いていますね。
台湾でも「立法院」を中心に、仮想通貨に関する法整備をめぐる議論が、時間をかけておこなわれています。
そうした動きのなかで、2018年9月に仮想通貨交換業を「マネーロンダリング防止法(洗錢防制法)」の対象として明記する修正法案が提出されていました。
今回、この法案が立法院の審議を通過したというニュースを目にしましたので、続報として書き留めておきたいと思います。
・マネーロンダリング防止法の修正法案が立法院を通過
・APGによる第三者評価を控えてスピード通過⁉︎
・台湾での法整備は着々と進んでいる?
台湾の中央報道機関である「中央通訊社」が2018年11月2日に報じた記事によると、同日、「マネーロンダリング防止法(洗錢防制法)」の修正法案が立法院を通過したということです。
具体的な内容は、以下のように報じられています。
立法院は今日、マネーロンダリング防止法の条文修正案を通過させ、金融機関および指定の非金融事業と人員を追加して、マネーロンダリング防止の内部統制と監査のメカニズムを構築し、金融機関が関連規定に違反すれば、最高で1,000万台湾ドル(約3,700万円)の罰金を科せられる可能性がある
(立法院會今天三讀修正通過洗錢防制法部分條文,增訂金融機構及指定的非金融事業及人員,應建立洗錢防制內部控制與稽核機制,金融機構違反相關規定,最高可處新台幣1000萬罰鍰。)
ここで、「金融機関および指定の非金融事業と人員」に追加されたのが、「仮想通貨取引所および取引業(虛擬通貨平台及交易業務的事業)」ということになります。
具体的には、以下のようなことが仮想通貨取引・交換業者に求められることになるようです。
通貨取引が一定額以上に達した場合、当該機関または事業の責任者、董事(理事)、経理人(マネージャー)および職員を含む内容を、法務部調査局に報告すること。
(達一定金額以上的通貨交易向法務部調查局申報者,擴及包含該機構或事業的負責人、董事、經理人及職員。)
この法律改正によって、仮想通貨取引・交換業が法律上、金融業のひとつとして明確に位置づけられることになったいうことになります。
なお、このニュースについては、台湾の大手紙のひとつである「自由時報」も翌日の紙面で大きく取り上げるとともに、公式サイトでも報じています。
「自由時報」のサイト記事には、今後の見通しとして以下のような点が言及されています。
「マネロン法」修正後は、ファイナンスリース、仮想通貨プラットフォームおよび取引業の業務には、金融機関の規定が一律適用され、仮想通貨取引の不正利用が一掃される
(「洗防法」修正後,辦理融資性租賃、虛擬通貨平台及交易業務的事業,一律適用金融機構規定,可杜絕虛擬通貨的不當使用。)
この点についてはまだ「自由時報」の見通しという範囲を超えていませんが、今回の修正法案通過をきっかけとして、今後の法整備においては、仮想通貨が「金融商品」として位置づけられていく可能性が高まったということだろうと思います。
今回の修正法案は、今年9月に提出されてわずか1か月半の審議を経て、法案通過にまで至りました。
実際に、今回のニュースを報じた台湾の経済紙「經濟日報」の記事のタイトルは、「APGの評価を控え、マネーロンダリング防止法が光速で通過(APG評鑑前夕 洗錢防制法火速三讀)」となっています。
今回の法案スピード通過の要因として挙げられているのが、この記事のタイトルにもなっています「APG」による評価だということです。
APG(Asia/Pacific Group on Money Laundering)については、冒頭に挙げた僕の過去記事に書きましたが、マネーロンダリング防止に関する国際基準に基づいた各加盟メンバーにおける法整備の実施をサポートする国際評価機関です。
台湾は2018年11月5日〜16日の日程で、このAPGによる第三次評価にかかる実地調査を受ける予定になっていたため、今回の法整備が急がれたという事情があるようです。
実際に、今日(11月5日)からAPGの審査官9名が台北を訪れ、実地調査が始まったことが、「中央通訊社」による報道を日本語で報じている「フォーカス台湾」の記事として伝えられています。
この日本語記事によれば、台湾はマネーロンダリング防止への取り組みについての評価格上げを目指しているということですから、今回の仮想通貨取引に関するマネーロンダリング対策も早急に整備する必要があったようですね。
APGによる最終報告が出されるのは2019年7月ということですので、今回の調査も含めて、今後、台湾の仮想通貨取引をめぐってどのような指摘が出てくるのかを注目しておく必要があるかなと思います。
今回、立法院を通過したマネーロンダリング防止法の修正法案は、仮想通貨に関わる法律のひとつとして、関連法制の整備の第一歩だと思います。
上に挙げた「自由時報」の記事で指摘されていたように、これから仮想通貨が金融に関する法令のもとに位置づけられていくようになっていくのかもしれません。
つまり、これまで台湾では、仮想通貨は「商品」という扱いで取引が行われていましたが、そうした位置づけが変わっていくかもしれないということですね。
以下の記事に書きましたが、今回の法案通過によって、これまで台湾の行政機関のあいだで議論になっていた「仮想通貨の管理・監督をどの行政機関が担うのか?」という課題についても、金融行政を管轄する「金融監督管理委員會(金管會)」が担う方向で今後は動いていくと考えられます。
また、この金管會のトップである主任委員の顧立雄さんは、ICOの法制化についても発言していますので、今回の動きを機にさまざまなことが前に進んでいく可能性もあります。
もちろん、こうした動きがいつ、どのような形で方向転換するかはわかりません。
今月予定されている統一地方選挙の結果なども含め、政治的・経済的な要因とかかわってどのような動きが生まれてくのか…
こうした多様な動きも含めて、法整備に関するこれからの動向をコツコツと追いかけていきたいと思います!