ブロックチェーンの開発を活発に進めるスタートアップが世界中に生まれていて、新たな技術やサービスが生み出されていますね。
台湾でもさまざまなスタートアップが、多彩な技術やサービスの開発を進めています。
最近、記事に書き留めたBiiLabsもそうしたスタートアップのひとつで、さまざまな企業と提携して、台湾のブロックチェーン発展の一端を担っているといえます。
今回は、このBiiLabsの取り組みに関する新たな動きが公表されたというニュースを目にしましたので、少し書き留めておきたいと思います。
・BiiLabsがTangleIDをオープンソース化
・EUのGDPRに準拠⁉︎
・台北市のIOTA導入が進んでいく⁉︎
・官民共同による健全な市場構築を目指して…
台湾のネットニュースサイト「ETtoday新聞雲」が2018年10月15日に報じた記事によると、台湾のスタートアップである「BiiLabs」が「TangleID」の「開放原始碼實作系統(オープンソースソリューションシステム)」の開始を公表したそうです。
このシステムを企業が活用することによって、IOTA上にデジタルIDとその認証システムを容易に構築することができるということです。
このシステムを活用することで得られる企業のメリットについて、BiiLabsの共同創業者でCEOの朱宜振さんは、以下の2点を挙げて説明しています。
只要透過BiiLabs團隊提供的API與網路服務,依循數位身份規範,即可打造GDPR合規的全新資訊服務。
(BiiLabsグループが提供するAPIとネットサービスを通じて、デジタルIDのルールに則って、GDPRによる新たな情報サービスを構築することができる)
企業可專注於如何導入與整合區塊鏈技術,不需要特別追蹤在底層的實作機制,也由於整個軟體堆疊是開放原始碼,運作透明化,假設日後需要抽離某些軟體元件,就變得可行,讓企業系統的可延展性更高。
(企業はブロックチェーン技術をいかに導入し、統合するかということに注力することができ、基盤となるソリューションメカニズムを特に追いかける必要がない。また、すべてのソフトウェアスタックをオープンソースとすることで、管理を透明化し、後からいくつかのソフトウェアコンポーネントを削除したい場合には変更可能であり、企業システムのスケーラビリティをより高める)
今回のオープンソース化に合わせて、BiiLabsはGithub上にTangleIDのページを公開しています。
これまで、他のスタートアップとの提携を通じて断片的に開発の進捗状況が報じられてきましたが、ここに至って着々と開発を進めてきたBiiLabsの成果がまとめて公表された感じですね。
また、上に挙げた朱宜振さんの説明でも言及されていますが、ブロックチェーンの普及のうえで議論となっているEUのGDPR(General Data Protection Regulation)に準拠していることが大きな特徴のひとつとなっているようです。
上に挙げた「ETtoday新聞雲」の記事によれば、GDPRへの準拠と台湾の個人情報保護法の遵守のために、BiiLabsは世界的な会計事務所である「勤業眾信(Deloitte)」のリスクマネジメント部門と提携し、「隱私保護設計(Privacy By Design)」を採用することで、アプリの安全性とプライバシー保護を確保・実現するということです。
ブロックチェーンとGDPRとの関係については、ALISでもだいちゃんさんが以下の記事で書かれていますが、ヨーロッパのブロックチェーン企業はもとより、世界中の開発企業が対応策を模索しています。
また、以下の記事で少し触れましたが、台湾の経済行政に関わっている「國家發展委員會(國發會)」もGDPRとブロックチェーンとの関係性に注目していて、専門委員会を設置して問題点の整理を進めているようです。
台湾の行政機関も含め、世界中で対応策が模索されているこの課題に対して、具体的でシンプルな解決方法が提示されたということであれば、企業への導入もスムーズに進んでいきそうですね。
BiiLabsによる今回の取り組みはそれ自体にニュースバリューがあると同時に、もうひとつ、別の文脈で注目されています。
それは、台北市がIOTAの技術を導入することによって「スマートシティ」の実現を目指すという取り組みに、このBiiLabsが大きく関わっているということです。
台湾のネットニュースサイト「INSIDE」には、2018年1月に台北市とIOTAとの締結について、「在DLT新創公司BiiLabs的協助下,要讓台北市透過分散式帳本技術以及在物聯網領域的應用,朝向智慧城市邁進(DLTのスタートアップBiiLabsの協力のもと、台北市は分散型台帳技術とIoT分野の応用を通じて、スマートシティへと邁進していく)」と書かれています。
そうした背景のもと、今回のオープンソースの取り組みは直近の目標として、台北市におけるデジタルID・市民カードの「虛擬化(バーチャル化)」が想定されているようです。
同時に、民間サービスへの事業展開も考えているとのことで、官民双方へのサービス提供によって、「走向由產業、政府共同發展數位服務的良善環境(官民共同で、デジタルサービスの良好な環境を発展させていく)」ことを目指しているとのことです。
台北市とIOTAとの提携については、提携が発表された直後は日本語でも多くの情報が発信されましたが、その後の動向についてはなかなか報じられていませんでした。
今回の取り組みを見ると、着々と技術開発が進んでいたことがわかると同時に、実現に向けた動きがこれから展開していくことが期待されますね!
BiiLabsによる今回の取り組みは、ここに書き留めただけでも多様なセクションや方向性に関わる可能性を持つもので、いろいろなレイヤーで大きな影響を与えていきそうだなと感じました。
台湾の内部に限っても、官民の多様なセクションがこの取り組みを活用していくような見通しが示されていますし、台湾の外部に向かっても、GDPRへの準拠をうたっていることによって、一定のインパクトを持っているように思います。
BiiLabsという企業名は「Blockchain Industry and Innovation Laboratories」の略称だということです。
この企業名のとおり、さまざまな分野をブロックチェーンを通じて結びつけながらイノベーションを起こしていく…という動きを、確実な技術開発を基に展開している様子がうかがえますね。
台北市のスマートシティへの動きも含めて、これからもコツコツと動きを追いかけていきたいと思います!