台湾・台北で2018年7月2日から3日まで、「2018 Asia Blockchain Summit(亞洲區塊鏈高峰會)」が開催されています。
30以上の国々から、100人を超える登壇者を招待し、1000人以上の来場を見込んで開催されているこのサミットは、ブロックチェーン・仮想通貨にかかわるキーパーソンが続々と登壇していて、熱い議論が交わされているようです。
(ちなみに、台湾のビジネスニュースサイト「數位時代」の記事によれば、1日目の来場者数は主催者発表で2,500人超だったようです)
現場からのレポート…というわけにはいきませんが、台湾からの情報を中心に、サミットでのスピーチや議論の様子をいくつかピックアップして、書き留めておきたいと思います。
(本当は1日目と2日目の2記事に書き分けようと思っていたのですが、いざ書き始めるといろんな人からいろんな論点が提示されていて、なかなか短文ではまとまらない…
なので、3・4回にわけてピックアップしていこうかなと思っていますが、途中で力尽きるかもしれません…
なお、文中の日本語訳はざっくりとした粗訳です。参考までにとどめてご覧ください(^^;)
・本題に入る前に…
・許毓仁さんは台湾の「Blockchain island」構想を提案!?
・SROが果たすべき役割についても…
・ブロックチェーンを通じて台湾からアジアへ、世界へ…
サミットの公式ウェブサイトはこちらです(英語)。
サミットについては、呼びかけ人である立法委員の許毓仁さんを中心におこなわれた記者会見を基に、以下の記事にまとめています。
現地の雰囲気については、サミットの登壇者のひとりである「日本ブロックチェーン協会」事務局長の樋田桂一さんのTwitterに、会場の写真がアップされています。
また、サミットのメディアパートナーである「動區BlockTempo」や「區塊客blockcast.it」の公式facebookページにも、写真付きで会場の様子がタイムリーに伝えられています。
特に、「動區BlockTempo」のページには、独自取材の様子もアップされているので注目です!
1日目のオープニングは「政府論壇(Government Summit)」の一番手ということで、サミットの呼びかけ人でもある立法委員の許毓仁さんによる、“The State of Taiwan-Overview of the progress of all things Blockchain”と題されたスピーチから始まりました。
なお、このスピーチについては許毓仁さんがMediumでスピーチ原稿を公開されています。
このスピーチ原稿と照らし合わせながら、台湾メディアが報じている内容を基にまとめてみたいと思います。
サミットのメディアパートナーでもある「Knowing新聞」が報じた記事では、許毓仁さんが以下のようなメッセージからスピーチを展開していったことが注目されています。
區塊鏈的技術之所以比比特幣來的更重要,是因為它除了能使用在金融業以外,也可以用在其他領域。(ブロックチェーンの技術がもたらすものはビットコイン(がもたらすもの)より重要である。それは、金融業に利用することができるということ以外に、その他の領域にも用いることができるからだ)
Mediumに公開されているスピーチ原稿を見ると、政治家としてのあいさつの後に、ビットコインをはじめとする仮想通貨の話題からスピーチを始めていることがわかります。
そのあとに、上のような内容につながっていくわけですが、このあたりは許毓仁さんが事前の記者会見で「仮想通貨とブロックチェーンは分けて考えるべきだ」と述べていたこととつながってきます。
(この発言については、「本題に入る前に」に挙げた記者会見の記事をご覧ください)
そのうえで、許毓仁さんは、台湾には技術開発に関して優秀な人材がそろっていることや、ハード・ソフト両面での環境整備を進めていくだけの実力があるということを理由に、台湾は「Blockchain Island」になりうると信じていると語ったそうです。
おそらくこの話題になっていたときに、許毓仁さんのスピーチのバックスクリーンには、以下のフレーズが台北の街並みとともに映し出されていたようです。
Make Taiwan a Blockchain Island and Crypto Nation./As Blockchain blooms, small countries have become thriving hubs for the crypto industry.
(「區塊客」の公式Facebookページのこちらの写真)
また、上に挙げた記事によれば、この「Blockchain Island」というビジョンは、単純に台湾には技術的なポテンシャルがあるというだけにとどまるものではないようで、「在外交政策上,區塊鏈也是很好的工具(外交政策上、ブロックチェーンは良いツールにもなる)」という、台湾の国際関係上の位置に関する思惑も絡んでいるようです。
このあたりは、「Knowing新聞」の記事では言及されていますが、許毓仁さんのMediumの原稿には明示的には書かれていませんから、それほどはっきりと言及されたわけではないかもしれません。
ただ、以前の記事にも書きましたが、許毓仁さん自身、ブロックチェーンの国家的な導入が台湾の「外交的困難」を克服する手段となりうることを公言しています。
今回のスピーチのなかに、こうした思いが滲んでいたとしても不思議ではありませんね。
そのほか、許毓仁さん自身も台湾の組織立ち上げを主導し、今回のサミットのテーマのひとつでもあるブロックチェーン業界のSROについて、以下の3つの役割を提示していたことが印象的です。
(中国語は「Knowing新聞」の記事に、英語は許毓仁さんのMediumのスピーチ原稿に拠っています)
1.作為行業和監管機構之間可信賴的溝通平臺(serve as a trustable communication platform between industry and regulators)
2.提供行為準則確保行業匯聚一堂,自我規範並告知消費者所涉及的投資風險(offer code of conduct for we must make sure industries come together to self-regulate and inform the consumers of investment risks involved)
3.學習和研究法規和立法(study and research regulation and legislation)
このあたりは、許毓仁さんがかかわった台湾のブロックチェーン・仮想通貨業界のSROである「産業自律組織(Taiwan Crypto Blockchain Self-Regulatory Organization Founding Reception、TCBSRO)」がまとめた「SRO自律宣言(SRO’s declaration of self-regulation)」とのつながりを感じます。
(「SRO自律宣言」については、こちらに記事としてまとめています)
政治家として、理念と現実の両方に軸足を置きながら、台湾におけるブロックチェーンの未来を語っているように感じました。
許毓仁さんのスピーチは、ざっと見た限りでは台湾に軸足を置いてアジアへ、世界へと目を向けていくような広がりをもったものであるように感じました。
台湾のブロックチェーン・仮想通貨に対する現状を踏まえつつ、世界的に台湾がどのような役割を果たしうるのか…今回のサミットに底流するビジョンがそれとなく示されていたような気がします。
実際に、公式ウェブサイトに掲載されているプログラムを見てみても、台湾の現状については、許毓仁さんのスピーチ後、「Lightbulb Capital」の創業者によるスピーチが続いた後に、“The Role of Governance in Asia”というタイトルでパネルディスカッションがおこなわれたようです。
また、台湾が果たすべき世界的な役割については、Binanceの創業者・CEOの趙長鵬さん(Changpeng Zhao、CZ)による“Exchange and Eco-System”と題されたスピーチにヒントがありそうです。
台湾がブロックチェーンをどのように活用していけば「Blockchain Island」として、世界に名を知らしめることができるのか…
許毓仁さんのスピーチに続く、多様な登壇者による議論や提案について、引き続き見ていきたいと思います!
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