今年3作品目は、自動描画作品を作ってみました。感想などいただけると励みになります。
「Dear Mr. Walter」
「Dear Mr. Walter」は鑑賞者の鼓動に合わせて姿形を変えるインタラクティブなメディア芸術作品です。
鑑賞者の鼓動をリアルタイムで読み取り、それによって画面上に描画される円の大きさや形、方向が変化していきます。ですので、常にこの世に一つしか存在しない絵が生成されます。
ドイツの思想家であるヴァルター・ベンヤミン(Walter Benjamin)は『複製術時代の芸術作品』の中で、写真や映画などの複製技術が、伝統的な芸術作品から「アウラ」(「いま」「ここで」しか存在しえない一回性)を剥ぎ取っていく過程を考察し、芸術と人間の関係がどのように変化したのかを論じました。
ベンヤミンは礼拝の対象として権威の象徴であった芸術作品が、コピー技術によって一般市民にも需要可能になることを評価しました。
一方で、ベンヤミンの思いとは裏腹にコピー可能な芸術としての映画や音声作品はファシズム国家に利用され、ファシスト映画のような形で全体主義という偽りのアウラをまとわされ人々の洗脳に使われました。
そして、ベンヤミンはナチスのファシズムによって亡くなることになります。
「Dear Mr. Walter」は本来はコピー可能で一回生を喪失しているはずの「プログラムされたデジタル作品」が、「いま」「ここ」の一回きりの命を持った鑑賞者の鼓動を媒介とすることで一回性を獲得する作品です。
ベンヤミンが評価したコピー可能な芸術作品に、ファシズムによってではなく、一市民の一つの命によって一回性が与えられるのです。
今回の作品は大まかに下記の流れで動いています。
1. 鼓動をパルスセンサーで読み取ってArduirnoに送ります
2. Arduirnoでパルスセンサーの値をProcessingに連携します
3. Arduirnoから連携された鼓動の値に一定の操作を加えて、円の半径、移動方向、色彩の値に変換し描画します
こちらの記事はnoteにも併載しています。