日ごろジュエリーとは縁遠い男性でも、4℃の名前に見覚え聞き覚えはあるのではないか。それくらいブランド認知度は高い。
2019年2月期の業績は売上高471億円、営業利益50億円と営業利益率は10%を超える。ジュエリーの専業かと思いきや、実はアパレルも手がけている。売上高の内訳はジュエリー事業が293億円、アパレル事業が178億円、およそ6対4の割合だ。ただし、営業利益に関してはジュエリー事業が大半を稼ぎ出している。
同業他社で上場している企業と言えばTASAKIだろう。同社の売上高は220億円なので、ジュエリー事業だけで比較しても4℃のほうが規模は大きい。ちなみに、海外企業はどうかと言えば、米ティファニーの日本の売上高は650億円、仏カルティエはなんと1,400億円。さすがに格が違う。
4℃のブランドイメージはどのようなものか。主な購買層は10代から20代、価格帯は数万円から10万円程度だろう。4℃のジュエリーを学生時代にプレゼントした男性、あるいはプレゼントされた女性も少なくないのではないか。洋服で言えばオンワードの組曲、バッグで言えばサマンサタバサにイメージが近いように思う。
国内のジュエリー市場は9,500億円前後で落ち着いている。成熟した市場で4℃が描く成長戦略のひとつが『自家需要』の取り込みだ。いわゆる『自分へのご褒美』として自分用に購入する女性客を増やしたいとしている。実際、ファッションジュエリーの売上のうち、ギフト用途が8割を占めるという。残り2割の自家需要の拡大に向けて、4℃のリブランディングや商品ラインアップの拡充、SNSの積極活用によるブランドイメージの向上などに会社側では力を入れている。昨年3月に就任した瀧口社長(53歳)は弁舌さわやかな好男子で、自助努力による収益力の強化を精力的に推進している印象だ。
会社側の打ち手はどれも王道と考えられるが、もう少し思い切った策を講じてもよいのではないかと個人的には感じる。年末商戦向けに4℃が制作したCMは全体的にきれいな仕上がりもどこか物足りない。無名の外国人モデルではなく、4℃を象徴するアイコンに広告宣伝費を投じてもいいだろう。例えば、10代から20代の女性に訴求するなら、さしあたって乃木坂46の白石麻衣がふさわしいかもしれない。あるいは、彼女が結婚する時に4℃の指輪を着けてもらうのもいい。安室奈美恵にSAMが送った『カルティエのラブリング』が当時、爆発的にヒットしたことを覚えている人もいるだろう。
4℃の社長になり代わっていろんな想像を巡らすのは実に面白い。