オーガニック化粧品の市場を見ていたら、勢いの良い企業が目にとまった。『ACRO(アクロ』という化粧品メーカーだ。『THREE(スリー)』のブランドを手がける会社と言えば、あるいはピンと来る人もいるだろうか。オーガニック化粧品の市場自体が2ケタ成長しているが、なかでもACROの出荷金額は前年比で8割増と抜きん出て高い伸びを見せている。2009年に創業したこの新興企業は、国内で3,600社以上あると言われる化粧品メーカーの中でもひときわ光彩を放つ存在だ。
なぜ好調なのか。一言で表せば、ブランディングが上手なのだろう。おしゃれ感度の高い人たちに好まれるTHREEが、実はポーラ・オルビスのグループである事実を知る人はほとんどいないはずだ。親会社のボリュームゾーン的なイメージから見事に自由であり、洗練された品格を備えるブランドに昇華されている。業種は異なるが、『LEXUS(レクサス)』がプレミアムブランドを志向しているにも関わらず、なんとなくトヨタのブランドイメージを引きずっているように見えるケースとは一線を画す。
なぜTHREEにそれが可能なのか。おそらく経営者のセンスが良いのだろう。ブランドの育成を主導したACROの石橋寧(いしばし やすし)会長は、SUQQUやRMKを成長させた経歴の持ち主で、ポーラ・オルビスの社長に新しいブランドの立ち上げを請われたブランドプロデューサーである。「都会的で洗練されたスタイリッシュさが失われないよう、内容物だけでなく、外箱や容器などの細部にも強いこだわりを持ってブランディングしてきた」。石橋会長の言葉通り、もちろん品質も良いのだが、外観のセンスがとにかく秀逸である。ホームページのデザインもシンプルでかっこいい。
販売戦略にも特徴がある。化粧品の主要チャネルである百貨店に敢えて頼ることなく、セミセルフ型コスメセレクトショップの『イセタンミラー』や『フルーツギャザリング』などの新しい業態にいち早く販路を求めた。また、表参道の直営店『THREE AOYAMA』では、化粧品だけではなく、カフェやスパも併設し、「心・からだ・肌をホリスティックにサポート」する空間づくりに成功している。
「THREEの成功に学べ」というのは、実際には「言うは易し行うは難し」かもしれない。ただ、ブランドの再構築を課題に掲げる企業にとっては、業種のいかんに関わらず、参考になる要素が含まれているように思う。すなわち、既存ブランドや既存チャネルとの連続性の断絶、経営センスに優れた外部人材の登用などに抽象化できるだろうか。
ところで、THREE以外に私が注目するブランドとして、『Aesop(イソップ)』がある。特にハンドソープは男性にもおすすめだ。「あ、あのスクールウォーズの・・・」などとはくれぐれも言わないように。