『UUUM』は最も注目すべき企業のひとつだろう。個人がメディア化する時代のど真ん中を疾走中だ。アミューズやエイベックスを時価総額で大きく引き離していることにメディア業界のパラダイムシフトを体感する。
堀江貴文、中田敦彦、西野亮廣、池田勇人、田端信太郎、箕輪厚介。YouTubeやTwitter、noteを通じて、個人で稼ぐ時代の到来を声高に叫び行動を駆り立てる。初期投資がゼロで発信できるSNSは、資金的な障害を軽々と取り除き、知識と勇気さえあれば誰もがメディアとなりうる機会を個人に与えてくれる。
2013年のHikakinとの出会いに商機を感じた時点で、UUUMの鎌田和樹社長の成功はすでに決まっていたように思う。YouTubeの登録者数総合ランキングのトップ10は、Hikakin、はじめしゃちょー、Fischer’s、東海オンエアなど、UUUMがマネジメントする『クリエイター』によって過半が占められる。いずれも、子どもたちが寝食を忘れるコンテンツの作り手ばかりだ。UUUMに所属するクリエーターの数は300人を超えるという。
UUUMの売上高の約6割がYouTubeからの広告収入だ。『アドセンス』と呼ばれる広告収入は、動画再生回数や登録者数などをベースにYouTubeが決めるらしい。UUUMは広告収入の2割をマネジメントフィーとして受け取る。クリエーターへの分配率が8割というのはそれなりに良心的と思うがどうだろう。
2020年5月期の業績見通しは売上高260億円(前期比+32%)、営業利益14億円(同+12%、営業利益率5.4%)。規模の拡大に伴って、人件費を中心とする販管費が先行する状況が続く。上期の決算は会社想定から大きく乖離していないと見て良さそうだ。
YouTubeへの依存度の高さをリスクと考える人もいるだろう。新規参入で競争が激化しているのは間違いない。ただ、UUUMの先行者メリットは簡単に揺らがないように感じる。YouTubeで培ったマネジメント業務のノウハウをベースに、InstagramやTikTok、Lineやnoteなど、他のプラットフォームとの提携を相次いで決めるあたりのスピード感は半端なく早い。決算説明会の時間も30分。投資家・アナリストの相手をするより、事業のことを考えたいというのが鎌田社長の本音だろう。
さて、個の力が発揮しやすい時代。みなさんはどう動きますか。