仮想通貨とポイントサービスの違いをまとめたサイトはいくつもあるが、いずれも腑に落ちない。まず、どのサイトにも書かれているのは以下だ。
◾️ポイントサービス
・ポイント発行元のサービスでしか使えない
・他の人に譲渡できない
・換金できない
◾️仮想通貨
・どこでも使える
・他の人に譲渡できる
・換金できる
仮想通貨についてはそのとおりだが、ポイントサービスの方はそういうサービス設計にしているだけだ。そもそもアマゾンポイントがあれば生活に必要なものはほとんど手に入るから、他で買い物できないことは大した問題ではない。それどころか、仮想通貨を利用できるシーンは現状かなり限られており、むしろ不便だ。
そこで今回は、既存のポイントサービスが仮想通貨に変わることで、どんなメリットがあるのかをもう少し本質的な視点で考えてみた。
利用者側から見ると、仮想通貨もポイントも大して変わらない
利用者目線では、両者の違いはほとんどないのではないかと思う。例えば会社から「これから給料はすべてポイントで振り込みます。アマゾン、楽天、マイル、Tポイントのどれに何%か決めてください」と言われたとして、そんなに困るだろうか?これは極端な話だが、それぞれのポイントの使い道は日に日に広がっており、日常生活を送る上ではポイントだけで十分だ。
仮想通貨は価値が増えるから投資になる、等の違いはあるものの、世の中全員が投資したいわけではなく、仮想通貨の方が優れている理由にはならない。それどころか、「ポイントで割り引きます」という店もあることを考えると、その店で買い物をする人にしてみればむしろポイントの方が嬉しいとも言える。
抜け落ちている発行者側の視点
仮想通貨とポイントの違いを説明したサイトは、いずれも発行者側の視点がない。しかし、利用者目線で違いがないとすれば、発行者のメリットを考える必要があろう。
まずは、ポイントサービスとは何か?という定義に立ち戻りたい。多くは自社サービスを継続的に利用してもらうことを目的として、現金の割引の代わりにポイントを付与する、というケースだ。すなわち、割引した分=ポイントを付与した分だけ発行者の利益は減り、これは一時的に(ポイントが利用されるまで)負債として計上する必要がある。
ポイントを現金や他のポイントに変換できない理由はここにあり、発行者は負債をただの損失として終わらせたくないから、自社サービスでしかポイントを利用できないようにしている。
では、これが仮想通貨になるとどうなるか。ポイントの代わりに仮想通貨を付与したとすると、これはもはや現金の割引と変わらず、その時点で発行者のコストとして計上される。仮想通貨を付与された人が、その仮想通貨を自社サービスのために利用してくれる保証は全くない。
と、いうことはまさか、発行者にとっては仮想通貨よりも現状のポイントサービスをそのまま維持する方がメリットが大きいということになる・・・?
仮想通貨とポイントは並列で考えるべきではない
仮想通貨とポイントを並列で考えると、利用者にとっては大した違いがなく、発行者にとってはポイントを仮想通貨に切り替えることのデメリットがあり、むしろポイントの方が優位、ということになる。
一方で、仮想通貨には投資的な要素や、これまでと違う様々なデータに価値を持たせられるという特徴もあり、その適用用途の幅広さはポイントの比ではない。
結局ここでわかることは、仮想通貨とポイントにはそれぞれ別の発行目的、利用目的があり、どちらが優れている、という議論はナンセンスということだ。