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結局、ブロックチェーンは何が凄いのか?

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  • 外資系主夫
  • 2018/04/17 03:47
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ブロックチェーンに関する記事をよく目にするようになった。
仮想通貨以外にも様々なサービスへの応用が紹介され、"インターネットが登場した時と同じ"ような盛り上がりを見せていることからも、ブロックチェーンというテクノロジーに多大なる可能性が秘められているのは間違いなさそうだ。
その一方で、私の周りには「結局、ブロックチェーンは何が凄いのか?」という疑問を持つエンジニア、ITコンサルタントがかなりの数いるのである。

そこで今回は、なぜブロックチェーンはこれほど注目されながらイマイチ腑に落ちないのか、という問いから出発して、ブロックチェーン本来の価値とは何かを再考してみたい。


なぜブロックチェーンは腑に落ちないのか?


私自身もブロックチェーンを紹介する記事・書籍をいくつか読んでいるが、その多くには2つの難しさがある。これが「なんとなく腑に落ちない」大きな原因になっているのではないかと思う。

■"Fintech"という大きな文脈の中で語られることが多く、ブロックチェーン単体の価値が見えない
例えば、海外送金が格安になるという有名なブロックチェーンのユースケースにおいて、為替リスクの回避がメリットとして挙げられることがある。しかしこれはマッチングのアイデアの話であり、ブロックチェーン化することの直接的な効果ではない。このケースにおけるブロックチェーンの価値は、仲介手数料を取られないという点である。

■ブロックチェーンを絶対評価しており、既存テクノロジーとの相対的な価値が分からない
例えば、ブロックチェーンにおいて"改ざん不可"、"高信頼性"、という特徴は非常に重要だが、既存のシステムの信頼性が低いかと言えば、そんなはずはない。銀行のシステムは何十年も前から高い信頼性を提供しているし(たまに停止するが)、ブロックチェーンでもバグにより停止するリスクは変わらない。

これらの難しさを排除するため、ここからはブロックチェーン単体としてのテクノロジーに注目し、既存テクノロジーと比べて何が新しいのか?を整理していきたい。


ブロックチェーンは何を可能にしたのか?


一般的に、ブロックチェーンの特徴としてよく挙げられるのは以下の3点である。
‐管理者がいない(P2P)
‐止まらない(分散型)
‐高信頼性(改ざん不可)

これらはいずれも事実だし、重要な特徴でもあるが、"既存テクノロジーとの比較"という観点では少し説明が足りないと思う。なぜなら、P2Pも分散型システムもブロックチェーンとは関係なく存在しているし、ブロックチェーンが無いからと言って世の中のシステムが毎日改ざんされているわけではない。

では、既存のテクノロジーでは実現できず、ブロックチェーンが可能にしたこととは何だろうか?それを理解するために、1つの仮定を考えてみた。

もし、銀行が存在しなかったらどうなるか?
仮に銀行が存在しないと仮定した場合、何が起こるだろうか?これは考えるまでもなく、通貨の運用に関して様々な問題が発生するだろう。
‐貨幣は誰が発行するのか?
‐手元の貨幣が本物かどうかは誰が証明できるのか?
‐遠くにいる人にお金を送りたいが、誰に頼めば信頼できるのか?

当たり前のことを言うようだが、銀行という管理者がいないと通貨の仕組みは維持できない。いや、銀行が無いのであれば、民間のコミュニティが立ち上がって正式な貨幣のルールを設定し、責任をもってその発行と運用を行うはずだ、と思うかもしれない。残念ながら、そのコミュニティとはまさしく銀行のことだ。
つまり、既存の考え方の範疇で通貨を運用しようと考えた場合、貨幣が本物であることを証明したり、取引の正当性を保証するための管理者(=銀行)を決めるほか無いのである。

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通貨の仕組みは、銀行という管理者がいるからこそ成立する


しかし周知のとおり、ブロックチェーンは"全員で監視する"という方法によって、銀行に相当する管理者不在の中でも仮想通貨という仕組みを維持することに成功したのである。ここにブロックチェーンの新しさがある。
その仕組みについては今回の目的ではないので割愛するが、つまりブロックチェーンの魅力は"管理者不在のオープンな場"において発揮されるのであり、既存の仕組みの延長線上で価値を考察しても本質を理解できないのは当然である。

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ブロックチェーンは、管理者不在の中でも通貨の信頼性を担保


この視点に基づくと、ブロックチェーン本来の価値は以下の2つだと言えるのではないか。
▪️信頼性を担保するための管理者が不要になる
これまで、情報が本物かどうかを確かめるためには、それを証明してくれる管理者が必要であった。ブロックチェーンはこの前提を破壊し、管理者不在の中でも情報の信頼性、取引の正当性を担保することに成功した。上記は通貨の例だったが、この破壊は(アイデア次第で)中央集権的な管理者が存在するものすべてに適用できる。

■誰でも新しい金融市場をつくることができる
金融市場の運用には莫大な管理コストが必要であり、その参入障壁は非常に高かった。そのため、多くの企業は自身の経済圏を構築するために、新しい通貨ではなくポイントサービスを導入している。しかし、ブロックチェーンによってこの管理コストは大きく低減され、誰でも新しい金融市場の創造が可能となる。

これらは明らかに既存のテクノロジーでは実現できなかったことであり、ブロックチェーン本来の価値だと言えるのではないか。


ブロックチェーンによって何が変わるのか?


前述の特徴を踏まえると、ブロックチェーンによって世の中はどう変わるだろうか?
よく語られる仮説の中から特に私が興味を持っている3つを紹介し、その可能性を検証したい。

■仲介ビジネスは消滅する?

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ブロックチェーンにより、すべての取引はP2Pに

通貨、証券、保険…、中央集権的に価値が管理されているものは、すべてブロックチェーンによって管理者が不要になる。その結果、全ての取引はP2Pに行われるようになるという仮説だ。

この仮説を考える上で重要なことは、あくまでブロックチェーンが破壊するのは"信頼性"の価値だけ、という事実である。すなわち、”送金”のように、単純に信頼性だけが価値のビジネスは衰退するものの、それ以外の仲介ビジネスは”信頼性”以外の付加価値を追求し、形を変えながら存続すると考えられる。

※同様に、"従業員を管理する"役割としての企業が不要になる、という話もある。しかし、企業は売上をただピンハネして従業員に給与を払っているわけではなく、企業の看板自体にも価値がある(一般的に、"フリーランスのAさん"より"○○株式会社のAさん"の方が価値が高い)ことを考えると、企業の存在価値は破壊されず、この世界観も実現しないと思う。


■全ての物・情報が投資の対象になる?

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ブロックチェーンは、新しい金融市場の登場を加速させる

通貨に相当する新しい価値を生み出す障壁が低くなるため、新たな金融市場が次々と登場し、投資の対象が多様化する。事実、現時点でもVALU、タイムバンクといった新しい価値が登場し、ALISもいずれその一つになっていくのだろう。
最終的に、世の中の全ての物・情報の価値は数値化され、投資対象となる可能性がある。

これは、可能性という点では実現性の高い仮説だと思う。投資対象となる前に「そもそもこれに投資したいか?」という大前提があるため、全てが、ということにはならないが、新しい投資対象が次々登場することは間違いないだろう。


■通貨は消滅し、物々交換の時代が来る?

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取引に貨幣を利用する必然性は無くなる

上記の仮説が実現した先には何が起こるだろうか?取引コストが大きい既存の通貨を利用する人はいなくなり、すべての取引は仮想通貨に移行するだろう。しかし、すべての物・情報の価値が数値化されるのであれば、通貨という媒体を仲介することすら無駄に思われる。
そもそも通貨を利用する理由は、客観的に価値が定義されているからであり、ブロックチェーンによりすべての物の価値が明確になっている状態では、通貨の存在意義が失われてしまう。その結果として、通貨消滅の先にあるのは物々交換の世界である、という考え方だ。

しかし、通貨の存在意義は価値の客観性だけではない。仮に物々交換の世の中が実現したとしても、「等価なものを持っていない」等の理由から、便利な通貨を利用し続けることになるだろう。しかし、既存の通貨を利用する必然性が薄れることは事実であり、近いうちにこのような"物々交換コミュニティ"が登場したり、新しい価値を持つ通貨が登場する可能性は非常に高いと考えられる。



まとめ


「ブロックチェーンが世界を変える」という熱狂的な標語が世の中にあふれている。
以前、「パソコンが普及したら紙はいらなくなる」という噂があったが、今は以前にも増して紙だらけである。最近では、「AIが仕事を奪う」という議論が活発だが、実際に仕事を奪われた人はどのくらいいるだろうか。しかし、パソコンもAIも世の中を変えた(これから変える)テクノロジーであることは疑う余地がない。

新しいテクノロジーにはこうした過激な迷信がつきものだが、実際には建設的な形で世の中に浸透していくのである。ブロックチェーンに関する議論も、実際には誰もがHAPPYになる形で落ち着くはずだ。

その”建設的な浸透”を推進するために必要なのは、ブロックチェーンの価値を正しく理解することだ。正直なところ、私自身もこのテクノロジーをすべて理解できているかと問われればあまり自信はないが、まずは客観的な考察を提供することが将来のブロックチェーン発展につながっていくと信じ、本記事を執筆した。

テクノロジーに興味を持つ者として、これからこのテクノロジーがどんな新しい価値を生み出すのかは非常に楽しみであるし、自分自身がその推進に少しでも貢献できるよう、これからも様々な情報発信を続けていきたい。

公開日:2018/04/17
獲得ALIS:23.25
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  • @kokonoka305
主夫、はじめました。趣味は料理、ピアノ、テクノロジー。思いついたアイデアのつぶやき: https://twitter.com/shufu_gaishi

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